お片付け
最初に口火を切ったのは暁春だった。
「……そろそろ肌寒くなってきたかも…。」
「だな、俺もそろそろ帰るわ。」
「ありがとう…来てくれて。」
「…おうよ。」
そうして俺はその場を後にした。
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ぴぴぴぴぴ!!
朝を告げる音に叩き起こされる。
「朝…か…。」
俺はあれから変な夢を見た。学校で暁春が教室で泣いている夢。俺は動こうにも体が動かない夢。
暁春が助けを求めているのに何もできない夢。怖かった、苦しかった、すごくなんか…こう…ムカついた…自分のことが。
そうして俺は思い出す、昨日の夕方の帰りに見た暁春の机の上のイタズラ。そして暁春の昨日の言葉…「「また登校することになったの。」」
俺は居ても立っても居られなかった、あいつへの想いは加速し始めていた、もう…無視することは…見てみぬふりをすることが出来なかった。
早朝、誰もいない教室。
昨日の帰りに見た光景と同じ…。
俺は急いで、誰かが…暁春が来る前にすべて片付ける事にした。
花瓶を元にあった教室の端っこに置き、落書きは教室の雑巾や、自分の消しゴムを使って消した。
消すこと以外は何も頭になかった、
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「————終わった…。」
キレイになった机を見てひと仕事終えた気分だった。
ふと時計に目をやる。
「やべ…、。」
人がそろそろ集まってくる時間だ、だが、隠れることを何も考えていなかった、。
ロッカーに隠れる…?裏庭に逃げる…?別校舎へ…??
ひとしきり方法を探った結果、荷物を持ってトイレに駆け込んだ。
廊下から聞こえてくる人の話し声、ぎりぎり間に合ったようだ…。
早起きをしたせいか、安堵からか、トイレの便座に座ったまま寝てしまった…。
——んこーんか——こーん————————
—————チャイムの音で目が覚めた。
「やべ…寝てたか…、。教室に少しでも顔出さなきゃ…。」
俺はテストで良い点取ってる分、授業に一日に一回でも顔を出せば後の事は屋上に行こうがだいたい許されている。この学校の先生が適当な証拠だ。
トイレの鍵を開け、廊下に出る、すると少し遠くに人集りが出来ていた。
「なんかあったのか…?」
少しづつ近づいてみる、近づくに連れてどこで人集りができているのかがハッキリしてくる…そこは…自分の教室の前だった。
ざわざわ、まごまごと人集りが出来ていて何が起こっているのか見ようとしても見えなかった。
近くにいた生徒に問いてみる。
「何があったんだ…?」
「あぁ、なんか、いつもの奴らが「神崎の机の上が誰かに片付けられてる」って言って暴れたんだよ」
いつもの奴らとはこの学校で人を虐めたりすることで有名な奴らのことだ、暁春もそいつにやられている。
「暴れただけならこんなに人だかりは出来ねぇだろ」
あいつらが暴れるのは日常茶飯事、触らぬ神に祟りなし、だ。
「暴れた後だよ、あいつら犯人探し始めやがってよ、そしたら冬輝、お前が犯人だとか言ってたよ」
「俺が?なんで…。」
「お前、あいつらから何だかんだ目付けられてるんだぞ?虐めに加わろうとしないからって」
「なんだよそれ…」
そんなの知らなかった、今まで目を付けられないようにしていたはずなのに。
「んで、その場に居合わせた神崎が自分でやったって自白したんだよ。あとはまぁ、わかるだろ…?ま、俺もあとから聞いたから実際何が起こったか————っておい。」
「暁春が自白した」そう聞いて居ても立っても居られ無かった…身体が勝手に動いていた。人集りの間を縫って、いや、無理矢理にでも押し飛ばして中心を目指した。
見えない先を目指して視界が開けた、そこには——————。
暁春が血溜まりの上で倒れていた。
「————ッおい、———おい!!大丈夫か!?!?」
人の目なんか気にしてられなかった、人が目の前で…好意を寄せている相手が目の前で倒れていたんだ…。
一心不乱に駆け寄って声をかけた。
「おい!!何があった!!おい!!、…おい!!」
……。
「———ふゆ—————き——————、?」
気が付いたみたいだった。
小さな、弱った声で俺の名前を呼ぶと、ヨロヨロと立ち始めた。
「おい、大丈夫か?、手を貸すぞ…?」
俺が肩を貸そうとした…が、暁春は—————。
「やめ…て…ッ!!私…一人で立てる…ッ!」
俺の手を振り払うと暁春はヨロヨロと壁をつたい保健室の方まで去っていく、人集りは蜘蛛の子を散らすように、暁春を避けるように解散していった。
「暁春…。…ックソ、!ックソォ!!!!」
何もできなかった俺は自分に嫌気がさしていた、自分を殴るように地面を殴りつける。
「よぉう!冬輝くん♪いやぁ~見てたよぉ~!酷いねぇ…神崎ってば君の善意を振り払っちゃうなんてぇ。」
「…ッ!!」
飯河 慎之介。こいつが虐めの主犯格、敵にするとこいつが服従させてきた奴ら全員の敵になる。
みんなこいつが怖いんだ…。俺もこいつが…怖い…いや、もしかしたら、周りから白い目で見られるのが、迫害されるのが怖いだけなのかもしれない…。
「多分、あれを片付けたのはお前なんだろう??まぁ、いいさ。勇気のある暁春に免じて許してやる、お前は随分お人好しみたいだなぁ。プリントを渡しに行っているのもお前だってなぁ。
まぁ、それもこれも俺には関係ないけどぉ。あんまりあいつに近付かないほうが身のためだって言っておくよ~。あとそれ、君が片付けておいてねぇ~それで今日のことはチャラにしてあげる♡じゃあね~♪♪」
……。
耳鳴りがする—————。
恐怖で何も言えなかった、何も出来なかった……。暁春をこんなにした張本人なのに…。自分に———嫌気がさす—————。
「おい、聞こえてるか~?おい、お~い?」
耳鳴りが治ると同時に声が聞こえてくる。
「うわ!びっくりした!!」
目の前に居たのは柊朔だった。
「脅かすなよ…。」
「それはこっちの台詞だよ、なんかあったって聞いたから来てみたらお前が血だらけで座り込んでんだもん。話しかけても返事ねぇし。」
「悪かったな、安心しろ、これは俺の血じゃねぇ、とりあえずこれ片付けねぇと。説明はその後だ。」
「とりあえず良く分かんねぇけど手伝うぜ」
「いいよ、俺一人でもできる。」
「何だよ水クセェ、手伝わせろよ、ってか手伝う。」
そう言って黙々と授業の間二人で廊下をキレイに片付けた。




