ゲーム
周りが更に薄暗くなった頃、着いたのは神崎と表札がある家の前だった。
理由は暁春に溜まったプリントを渡すため。
ピンポ~ン
家のチャイムを鳴らすと「はいは~い!」と声が聞こえて、玄関が開いた。出てきたのは暁春のお母さんの朝巳さんだった。
「あ!冬輝くんじゃない!またプリントを届けに来てくれたの??ささ!入って入って!」
そう、ここに来るのは初めてではない、何度かプリントを届けに来ているのである。
「これ、渡しに来ただけなんで…」
と大量のプリントを見せ断ったが、
「いいから!いいから!暁春も友達が来てくれて嬉しいだろうし!」
朝巳さんの圧に負けて促されるまま暁春の部屋の前まで来てしまった、別に友達では無いのに…。
コンコンッ
朝巳さんが扉を優しくたたく。
「暁春~!開けるよ~!冬輝くんがプリント届けに来てくれたよ!」
中から返事はない。
…すると有無を言わさずに朝巳さんは扉を開けて俺を押して中に入れると「ごゆっくり~」と言わんばかりに扉を閉めた。
部屋を見渡す、相変わらず暗い部屋。
女の子の部屋だとは信じ難い程に無機質で、置かれているものもベットと机、その卓上にパソコン、そして本棚、服が入っているであろうタンスのみだった。
「…ねぇ、プリント渡しに来ただけなんでしょ、そこの机の上に置いておいてよ、そして早く出てって。」
ベットの上の人影が喋りだす。
「あぁ。言われなくてもそうする。」
俺はいつもの如く冷たく返事をする。
「やっぱりあんた薄情よね。」
「うるせぇ。」
ベットの上で寝ている彼女が暁春、俺が好意…を寄せている相手でもある。
「そうだ、そこの机の上にあるゲーム機もついでに取ってくれない?」
「俺はパシリじゃねぇぞ…。」
と言いつつプリントと交換で卓上のゲーム機を手に取る。
「それこっちに投げてよ。」
「あぶねぇだろバカ、」
俺は手渡しで暁春に渡す。
「あんたって優しいのか薄情なのかわからないよね。ツンデレってやつ?」
「ちげぇよ、。常識があるだけだ。」
「…。」
「…。」
会話は弾まない。
俺は帰ろうとドアノブに手をかける。
「あの、さ、一緒に…ゲーム…しない…?」
急に言われて俺は訳がわからなかった。いつもはここで普通に帰っていつも通りの生活に戻るはずなのに。
「げ、ゲーム??俺、やったことねぇし…。」
「教えるから…さ。嫌ならいいけど…。」
「…体調は?いいのか?」
「今日は調子がいいから大丈夫なの、いいから早くこっち来て。」
こんなこと初めてだった、いつもぎこちない筈なのに、会話なんてあまり交わさない筈なのに…。
それから俺は促されるまま、一通り教えてもらいながらテレビゲームで遊んだ。
「なんだこれ…難しいな…」
「ヘタクソ~!また私の勝ちだね!」
「俺に向いてねぇだけだ。」
「それを下手っていうんだよ。」
「うるせぇ…」
…。
少しの沈黙の間から暁春が切り出した。
「あの、さ。なんであんたは私に構ってくれるの?」
「…どういうことだよ?」
「私に近づくとあんたもいじめられるんじゃないかって言ってるの。」
「別にどうでもいい。虐められようが虐められなかろうが、。」
「あんた、強いのね」
「俺は強くねぇよ。」
そう、俺は強くない。こいつ…暁春の前でカッコつけてるだけだ。
虐めを止められるほどの度胸もないクソ野郎だ…。
「確かに、ゲームは弱いけどね。」
「ッるっせぇ、絶対勝つ。」
そうしてそのまま数時間ゲームをし続けた。
ゲームの結果は…。
俺の惨敗に終わった。




