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みんなで私の背中を推して  作者: 多手ててと
前編:高校生編
75/284

75.独占インタビュー(する側)(2)

---私の場合もいろいろやっていることで、バランスが取れていると思います---


「僕よりもやっていることの幅が広くて深いよね」


--それは考え方次第だと思います。御厨先生もチェスや登山、スキューバダイビングと、インドアもアウトドアも色々されてますよね--


「僕のは趣味、舞鶴さんはプロだからねえ。(苦笑)全然違うと思うよ?」


舞鶴が6三銀成としたため、御厨が飛車を8二に逃げる。


--あっ結局8筋に飛車を持ってきましたね。以前は外出されない日はほぼ研究とおっしゃっている記事を拝見しましたが、今もそうですか?--


「うーん。前より研究する時間は減ったかもしれない。特にパソコンを使った研究は」


--御厨先生と言えばパソコンを本格的に使いこなしていらっしゃるイメージがとても大きいのですが。私自身も奨励会時代に拝見した、御厨先生の(パソコンを使った研究の)動画を参考にさせて頂きましたし--


「もちろんパソコンは毎日のように使ってはいるのだけれど、以前よりは練習で人と多く指すようになった。研究会も始めたし。そうだ舞鶴さんも来ない?」


--とても嬉しいお話ですがこのお仕事が終わってからにしましょう。私は今、ほぼパソコンのみで研究してますが、御厨先生は逆に対人に重心を移されているということですね--


「重心はまだパソコンかな。パソコンの方が効率的だとは今でも思う。ただ、対局はパソコンとやるわけじゃないからね」


--対人対戦経験は十二分にお持ちだと思いますが、パソコンが指す最善手が、人に対しての最善手とは違うという理解でよろしいでしょうか--


「そうそう。だから先ほどの研究会も、できるだけ色んな人と指すようにしている」


--つまり決まったメンバーで集まっているわけではない--


「そう。常連もいるけど、その都度ゲストも呼んでる」


--それは面白そうですね。次回、是非お誘い頂ければありがたいです。御厨先生から見て、研究会の成果のほどはいかがですか?--


「やはりソフトとは別に得るモノがあると感じているよ。とはいえ、さっきも言ったように重心はまだソフトでの研究なので大きなことは言えないけれど」


--なるほど、それでは来年の将棋界の展望をお聞かせいただけますか?--


「やっぱり新四段がどこまで上がって来るかだねえ。特に昨期の天道さん、櫛木君に注目してる」


--ありがとうございます。私も櫛木さんには注目しています。なんといっても、御厨先生の記録を四段昇段時に破っていますからね--


「(御厨は笑って)つい最近天道さんにも記録を破られたんだけど?」


--先ほども申し上げましたけど、相方のは運の要素が大きいです。でも最年少には運の要素は殆どありません。1期目も次点ですしね--


「天道さんは四段になってから櫛木君に4勝無敗、というか女流も含めてもまだ海老沢先生に一度負けただけだよね。一昨日星雲戦の4回戦も勝ったから、最多勝ち上がりはほぼ間違いなしでしょ? そろそろ僕を含めた、A級棋士ともどんどん当たるところまで来ている。その割には自分の評価が低いよね」


--私、じゃない相方はどちらかというと感性で指すタイプなので、一度歯車が狂うと立て直すのに時間がかかります。実際奨励会の時もそうでした。御厨先生はロジカルに指されるのでスランプがないのだと思います。同じことが櫛木さんにも言えると思います--


「僕も結構感性を大事にしているよ。大局観って感性そのものだと思うし。長考に好手なし、という言葉は真実に近いと思う」


--コンピュータといかにうまく付き合うか、というのが現代将棋の最重要テーマだと思うのですが、その中で第一人者の御厨先生が、対人練習を増やし、また感性を重視される、というのはとても面白いですね--


「幸いコンピュータも、まだ『これが必勝法です』、というのを確立していないからね。それがわかったら、また棋士とコンピュータの関係も変わって来ると思うな」


--本日は長い時間、貴重なお時間を頂きありがとうございました--


「いーえ。こちらこそこれからもよろしく」


ふたりの対局は非常にゆっくりとしたペースで行われたため、終局に到らなかった。御厨によると自分が不利。舞鶴も自分が多少有利との形勢判断で終了した。


ふたりは終始和やかな様子でインタビューは行われた。本紙記者が御厨竜帝・名人を取材したのはもう片手では数えきれないが、これまでの中で一番和やかで、踏み込んだ話をお聞きできたのではないかと思う。


なお本誌をお買い上げの方には、御厨竜帝・名人、天道女王の揮毫が並んだ扇子を10名さまにプレゼントします。詳細は巻末を参照のこと。


インタビュイー:御厨陽翔みくりやはると竜帝・名人 27歳 8タイトルのうち6冠持つ棋界の第一人者であり、初の八冠も視野に入っている。


インタビュアー:舞鶴千夜 女優・歌手 17歳 本名の天道静香の名前で小5に奨励会に入会。今年4月に女性初の四段になった。女流棋士としてはプロ入り直後に女王のタイトルを奪取。棋士としても今秋には御厨が持っていたデビュー以来30連勝の記録を更新、32連勝の新記録を樹立した。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 奨励会で転げ落ちた経験が尾を引いてるのかわかりませんが、静香が謙遜しすぎてるのが少し気になりますね。 組み合わせに恵まれたのは確かかもしれませんが16勝で三段リーグ一気抜け、32連勝の…
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