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みんなで私の背中を推して  作者: 多手ててと
前編:高校生編
31/284

31.女の武器

本日で連載開始1か月を迎えました。皆さまありがとうございます。

御礼というほどのものではありませんが、本日は連載中の作品の一斉更新を行います。


……本作は毎日連載だから通常運転ですね。

100手を超えたこのあたりから、徐々に静香の優勢が明らかになり、相手の考慮時間が伸びた。130手を超えたところで、必至になったので、相手はひたすら王手をかけて来る。この100手からここ30手程の間、静香の時間がほぼ減っていないのに対し、田部三段は持ち時間を使い果たし秒読みに入っている。10手近く王手を捌いた後、相手は投了した。


よし、序盤は相手の奇襲に多少戸惑ったが、なんとかペースは最初から最後までこちらが掴んでいたと言ってもいいだろう。この初戦の勝利は大きい。相手は前期で勝ち越し残留を決めている田部三段。この勝利は、私は三段リーグでもやっていける、という自信を静香に与えた。


だが同時に三段リーグの人は何をやってくるかわからない、という恐れも同時に感じた。静香の持ち時間が1時間以上余ったので、午後の対局まではまだ時間がある。三段リーグで上位に入るためにはやむを得ない。静香は今まで嫌っていた女の武器を使うことにした。


静香たちの高速対局は後片付けまで終わったが、他はまだ対局が続いているので、千夜は田部三段に近づいて囁いた。


「田部さん、なにか食べながらさっきの感想戦をしませんか? 私、関西将棋会館ここは初めてなので、美味しいお店を教えてください」


三段リーグの初戦に勝って、中位に食い込める可能性はある、という感触を掴んだ。ここはこれからのことも考えて聞ける情報は全部聞いておきたい。


田部三段も静香と舞鶴千夜の関係については知っているだろう。黒っぽく野暮な服、パンツではなくてダサいズボン。黒縁眼鏡、ぼさぼさ髪の無理やり三つ編み。この野暮な見た目は天道静香そのものだが、その囁き声は舞鶴千夜のものだった。相手がうなずくのを見て、ちょっと待っていてください、と奨励会幹事の先生に結果報告をした後、静香は田部三段と大阪の将棋会館を出て、(大阪市)福島の街に出た。大阪駅の隣の駅だというのに随分雑多な街だとの印象を受ける。


そして田部三段に案内してもらった定食屋でお昼ご飯をゆっくり食べながら、三段リーグについていろいろと教わった。


「そう、関西将棋会館は引っ越しが決まっているんですよね。高槻でしたっけ?」


最初は無難な話題。


「田部さんは今期だれが勝ち抜けると思いますか?」


それから突っ込んだ話題。


櫛木くしきさん、池添いけぞえさん、赤川あかがわさん、なるほど、やっぱり上位陣は居飛車党の方が多いのですね?」


この3人が今期順位の1位、2位、4位だから2位の池添三段とは静香は当たらない。1位の櫛木三段はまだ中学1年生なのに前期14勝4敗でトップタイの成績だ。しかし他のふたりに頭ハネされて次点を取っている。前期にもし昇段していた場合、現在の最強棋士、御厨みくりや名人・竜帝の最年少四段昇段記録を1年近く塗り替えることになっていた。当然今期で昇段しても最年少記録になる。静香とは違ってまともな意味で、今最も注目されている三段だ。


順位4位の赤川さんとはその櫛木三段と午前に対局した後にあたる、その7局、8局が静香にとって正念場となる。


遠山とおやまさんは中飛車や四間飛車。振り飛車でも立派な成績を残されていますね」


遠山三段は前期5位。彼とも静香は当たらない。


「へー。榎本えのもとさんはほとんど居飛車穴熊しか指さないスペシャリスト。ワンパターンなのに高い勝率を残されてますよね」


榎本三段は前期3位、13局目で静香と当たる。居飛車穴熊はつい最近『プレーン女子オープン』で指したけど、完成度は榎本三段の方が確実に上だろう。研究しておかないと一方的に潰される。


「オールラウンダーの方もいらっしゃるんですか。私もそれを目指しているんですけど、なかなかうまくいかなくて」


だいたい上位陣の棋風などは聞けた。まあ必要ないかもしれないけど、今後のことを考えると知っておいた方がいいに決まっている。


「なるほど、いろんな方がいらっしゃるんですね。とてもためになりました。ありがとうございます」


静香は長い昼休みで十分な情報を仕入れることができた。田部三段の話題にもちゃんと付き合って場を盛り上げることができたので、田部さんも午前の負けを忘れて、いい気分で午後の対局に望めるに違いない。もちろん静香も良い気分で午後の対局に臨んだ。


そして午後の対局の相手は午前の対局でも負けている。前期で降段点が付いているので、今期5勝できないと二段に落ちる。お昼の田部さん情報には無かった人だが、この人に負けるとせっかくの初勝利が無駄になる。


さて、初戦で掴んだと思えた感触が本物かどうか。この午後の対局で試してみよう。幸いここは先手。静香は初手5六歩。中飛車でその感覚を確かめてみることにした。


中飛車に驚いたのか、ノータイムにペースを乱されたのか、相手は77手で投了した。中飛車は女子オープンでも指しているのに、特に対策はしていなかった様子だった。多分静香など眼中になかったのだろう。


この人とは別に話す必要はないかな。静香はそう考えて挨拶だけした後、幹事の先生に勝利報告と、早退の許可をもらって早退し、梅田へと向かった。土曜の今夜と明日の昼間、千夜はちょっとしたライブを開催することになっている。そういう事情もあり早く対局が終わって良かったと思った。まだ時間は十分にある。本来なら三段でも18時の終会までいなければいけないのだが、静香は予め連盟の会長を通じて幹事の先生方には話をしてもらっているので、これまでもよく早退している。そうして先にライブ会場へと向かった。


まだ時間があるので、静香は一駅歩いてレモンホールに向かうことにした。

今日は連載1か月記念です。皆さまありがとうございます。

ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、4月から2作を同時連載しています。今日は一ヶ月記念なので双方を更新しようと思います。数字は昨晩私が確認した時点でのポイントです。


毎日投稿:

みんなで私の背中を推して       274pt

https://ncode.syosetu.com/n7493hm/

100話目途でしたが、70話ぐらいになるかも。


土曜日投稿:

リージア顛末記             40pt

https://ncode.syosetu.com/n9782hn/

15話目途

こちらは今月中には計画どおり終了する予定です


あとこれは申し訳ないのですが、7月はいろんな予定が重なっていて、リアル繁忙期に入ります。申し訳ありませんが、両作とも想定話数と更新ペース的に、連載が続いているかは怪しいですが、もしそれまで続いていた場合、1カ月間連載を停止します。8月になれば再開させて頂きます。悪しからずご了承くださいませ。


これらの作品を読んで頂いた方、ありがとうございます。


また特にブックマークしていただいた方、ポイントを入れて頂いた方、いいねして頂いた方、誤字報告して頂いた方、ご感想を頂いた方、本当にありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。


ー--------------

後、旧作を紹介しておきます。すべて完結済です。


桜の下の彼女   全12話   54pt

https://ncode.syosetu.com/n8398gu/

毎晩、幼馴染の女の子に酷いことをしてしまう夢を見る男の話。


ミスターフルベース 全16話  360pt

https://ncode.syosetu.com/n7878gi/

高校球児が甲子園で起こす奇跡のワンプレーのお話


音楽室と体育館  全169話  304pt

https://ncode.syosetu.com/n7547gz/

バレーボールをこよなく愛する音楽教師の主人公最強もの


宰相の失脚  全17話  108pt

https://ncode.syosetu.com/n9550gj/

ナーロッパの成り上がり系のお話


旧作は以上です。ありがとうございました。重ねてお礼申し上げます。

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