表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
みんなで私の背中を推して  作者: 多手ててと
後編:大学生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

295/301

295.始動(5)

千夜がこの業界に足を踏み入れてから6年の歳月が過ぎた。かなり長かった気もするし、あっという間だった気もするけれど、まあまあそれなりに経験を積ませてもらったと思う。


でもプラスドクリップ社で配信されるドラマがどうやってできるのかについてはこれまでよく知らなかった。大まかには下記のステップを踏む。


まず最初に企画をプラスドクリップの責任者に持ち込む。


視聴者のターゲットは誰か? 全体の構成(特に話数)、いつ配信するかなどを決める。同時に作品のプロットと初回の脚本案。ショーランナー、メインキャスト、監督、そしてもちろん予算の見積もりを行う。


この中ではショーランナーという言葉が聞き慣れないかもしれない。日本語にすると現場責任者であり、企画から脚本、編集まで全責任を負う。プロデューサーよりは現場よりの仕事をする。


ここでプラスドクリップからグリーンライトと呼ばれるゴーサインをもらう必要がある。今回の場合、鎌田プロダクションがこの企画段階を担当した。


聞いているだけでとても面倒くさそうだ。


「香織さん? これ全部営業部の方で実施していただいたのですか」


「そうね」


「ありがとうございます」


「いやこれは仕事として、会社の利益のためにやっていることよ?」


「それでもありがとうございます」


共存共栄でもお礼は言った方が良い。


「えーっと。千夜ちゃんは今日本で一番大きな芸能事務所がどこか知ってる? えっと売上高でね」


日本には大小さまざまな芸能事務所がある。アイドルとかお笑いとかスポーツ選手とか、特定のジャンルに強い芸能事務所も多い。鎌プロはわりとまんべんなくどのジャンルのタレントもいる。


「この世界にいながらあまり良く知らないですけど、うち(鎌プロ)でしょうか?」


「千夜ちゃん」は自信なさそうに答える。


「そう、今日本で最も稼いでいるのがウチね。昨年度の決算発表はまだだけど、見込みで1800億円ぐらい。過去最高の売上は確実ね」


日本の最大手企業は年間数十兆円の売上高をあげる。200位ぐらいでも1兆円ぐらいの売上があるけれど製造業、不動産、インフラなどの業界が多い。エンタメ関連で2000億円近い売上高は突出していると言える。


なお日本の国家予算はざっくり百兆円程度。大企業はその半分近いから凄い。


「すごいですね。想像もつかない金額です。」


千夜と出会った当初も今も香織さんは「営業部長」だけど、その肩書の前に今は「常務取締役」という文言が加わっている。それだけにお仕事は大変だと思う。


「数年前なら考えられないような数字よね。でもよく考えて。売上が多くても出費も多いの。一番多いのは業務委託費ね。今の鎌プロは人件費、つまり社員の給与よりも、他社に外注して来てもらっているスタッフの方が多いの。もちろん千夜ちゃんたち所属タレントの報酬も業務委託費に含まれているのよ」


人件費も正社員ではなく契約社員の割合が増えてきているのだと香織さんが続ける。


「その鎌田プロダクションで一番利益をもたらしているタレントが誰か知ってる?」


答えにくい問いだけれど、千夜は答えた。


「……これで違っていたら恥ずかしすぎますけど、私でしょうか?」


「もちろんそうよ」


リアクションが難しいので千夜は無言で香織さんの話を待つ。


「だから、千夜ちゃんにいっぱい稼いでもらうのが、鎌プロの最適解なのよ。稼げるうちに稼いでおきましょう。先がわからない世界だから。ね?」


確かに千夜は来年何をしているのかもわからない。5年生になれば病院実習が始まるので、今以上に時間は厳しくなる。棋戦だって昨年度は調子がよかったけれど、今年度はどうなるかわからない。芸能界なんてもっと水物なのは言うまでもない。


「で、企画の次は今ちょうどやっている準備段階、プレプロダクションとも言うわね。ここはだいたい映画と同じだけれど、違うのはプラスドクリップだとリリースやポストプロダクションから逆算して行うところが違うかしら」


脚本だとプロットから膨らませたログラインを作って、さらにハコ書き(シーンごとの内容のまとめ)、ト書き(動作や情景を書き連ねたもの)、そして脚本、さらに絵コンテへと派生する。


キャスティングだとメインだけではなく、すべての登場人物の配役を決める。照明、衣装、メーキャップなどのスタッフを集める。ロケハンの場所を決め、撮影許可を取ったり、地域住民と調整する。スポンサーや提供企業と話を


香織さんがいう逆算というのは、この段階からローカライズの用意をすること。例えば背景の看板とかあるよね? ああいうのも国ごとに変えてたりするんだって。


「プレプロダクションも順調で、そろそろ本読みも始まるんじゃないかしら?」


順調なのは良いことだけれど、千夜の出番が近いと言う事でもある。


群像劇で千夜は3人いる主役のうちのひとり。ケイトも結局出演することになったけれど千夜との絡みはない。それを聞いてホッとしたけれどそれはそれでいろいろと心配なのは考え過ぎ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ