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みんなで私の背中を推して  作者: 多手ててと
後編:大学生編
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276.木枯らし(8)

日本でもアメリカでも映画の封切りはほぼ金曜日。そしてその週末の3日間の初動興行収入を見れば、その映画の上映期間、最終的な興行成績までがおよそわかるのだという。


具体的に言えば、邦画でも洋画でも初動収入が1%増えれば、最終的な収入もほぼ1%増える。この相関関係は非常に強いのだとか。


実際全米の映画館は初動興行成績を見て、上映期間をだいたい決める。それが次週の成績で、あまり落ちなければ長く、観客数が落ちれば短く修正される。


もちろん例外はある。低予算の単館上映作品が全米に広がった。そんな痛快な話もあるけれどやはりそれが話題になる程度には珍しいことだ。


恐ろしい世界だ。幸いなことに初動興行収入はほぼ見込み通りだった。主演女優の視点から見るとこんな高い目標を掲げて大丈夫かと思ってけれど、予定をやや上回る観客動員数だったようなので一安心といったところ。


ほら、動画サイトにもいっぱいあるじゃないですか。制作費に比べ興行成績が散々だった映画ランキングみたいなのが。今の所は千夜が出演した作品で、そういった残念な結果になったことはない。だから結構な出演料を頂くことができる。


でもそれを一度踏み外したら配給会社も二の足を踏む。二度踏み外したら舞鶴千夜を主演で使うことについては、いろんなところで議論が必要になってしまう。


大学の期末試験の結果も結果を見るまで怖いけれど、なんというか手ごたえが自分でだいたいわかる。映画の場合、千夜には売れるかどうかはなかなか確信が持てない。


初動が合格点なのであれば、次は次週が気になるところ。意外なことに1割しか落ちなかった。これは望外の結果だ。封切りの週とその次の週は業界的にはおよそ3割落ちるのが普通だという。


まあ熱心なファンの皆様はもちろん、普通の映画好きの人も評論サイトとか事前情報を調べてから見に来る。映画のチケットは普通に買ったら2000円ぐらいするし、時間だって映画館の中だけで100分とか必要。宣伝とかもあるからもっと?


誰だってつまらない映画にわざわざお金と時間と労力をかけて見に来ないよね。


それが封切りの翌週になっても数字があまり落ちなかったというのはかなりのポジティブ要素。SNSでも評判は悪くないって明石さんが言ってたからそういうのが影響しているのかもしれない。最初は見るつもりが無かった人がネットなどの影響を受けて、やっぱり見よう思ってくれたのかもしれないし、一度見た人がもう一度予約してくれたのかもしれない。


こういった上方修正は当初見込み達成よりも嬉しいのは千夜だけじゃないはず。ともかく千夜は一仕事終わった良い気分なので、静香も同じように波に乗りたい。


12月に入って最初の対局は玉将リーグ第7局、つまりリーグ最終局。相手は海老沢先生。ここで勝てれば静香のタイトル挑戦が決まる大事な一局。海老沢先生も勝てば他の対局結果次第でリーグ残留できるので手は抜かないだろう。


振駒の結果静香は後手になった。 戦型は角換わり腰掛銀。静香は10手目に7七角成と角交換を仕掛ける。海老沢先生は最初から先手になった場合の作戦を考えて来たんだろうなあ、持ち時間4時間が嘘みたいにノータイムの応酬が続く。


32手目7三桂で先後同型の角換わり腰掛銀が完成した。ここからどう展開するのだろう?


でも40手目の6三金まではそのまま同型が続き、41手目の4五歩、同歩で同型が崩れた。


47手目に同飛で海老沢先生が3列に飛車を持って来た。ちょっと窮屈そうだけどまだノータイムだからこれで成立するのかもしれない。静香は52手目に2八角と先に角を打って自分のペースに持ち込みたいところ。


海老沢先生はかなり積極的に攻めて来る。71手目から6五銀直 、同銀、3三桂成


ここで同銀とすると6五飛と静香の攻めの要の銀が取られてしまう。そちらの方が安全策だけど、ここは踏み込む。74手目、後手7六銀。ここで海老沢先生の手が止まった。


かなり時間がかかったけどようやく研究範囲から脱したらしい。玉頭の金が成桂で取られるだろうから守りはかなり薄くなるだろうけど、攻め合いで勝ってタイトル挑戦したい。30分程経って75手目3二成桂。同然王手なのでノータイムで同玉の後5五に角を打たれた。攻めにも守りにも利く嫌な場所に打たれたので、早速4四に銀を打って邪魔をしに行く。


角は逃げるだろうから、そこから攻めを繋ぎたいところ。でもやはり静香の思い通りにはならない。7七歩とこちらの攻めの銀を狙われる。形勢は既に有利なはずだけど、想定通りにならないのはやはり気持ち悪い。


静香の玉を守るのは銀、桂、香。かなり薄いけれど攻め駒も揃っている。そのまま攻めて、ちょうど100手目の8九飛成で海老沢先生が頭を下げた。


「負けました」


「ありがとうございました」


これで玉将のタイトルに挑戦できるけど、玉将は持ち時間が8時間の2日制なんだよね。名物の罰ゲーム(?)もあるし大丈夫かな……

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― 新着の感想 ―
ここ数年ずっと大車輪の活躍で、休む隙無しの天童・舞鶴ペア(フュージョン)のために、タイトル戦の3〜2日前とかでいいから湯治観光ロケ回とか挟んであげてほしく思えてきた タイトル戦の旅館って超が付く名旅館…
2025/08/30 16:28 応援してます
この作品で出演依頼が殺到してマネージャーは来年の夏までは出演出来ないと依頼を断るのに頭を痛めるのでしょう。
映画は長時間拘束されるのが難点ですね。 私が最後に映画館で見たのは・・・アニメ「ぼのぼの」です。何十年前だったかなぁ。
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