231.プラスドムーブ(4)
随分お待たせしました。しばらくログインしていない間に入力画面変わってるし……
いろいろ状況が変わったので全然書き貯めてないですが、見切り発車はいつものことなので。そう、ゴールデンウィークがなんとかしてくれるはず。
奇策はあっさり躱されたけれど、序盤で局面は互角。だがこの対局ではいつもと違うことをしたいと静香は考えた。そこで11手目で9六歩と端歩を突く。一旦御厨先生に主導権を渡す形だから、これで負けたら自局解説するのは辛い。
△7四歩
御厨先生がノータイムで指す。短期戦とは言え、静香が奇策を重ねても御厨先生はいつものように淡々と勝利に向かって指し続ける。勝利を目指すのは静香も同じ。だが、どこか千夜成分ともいうべき、エンターテナーとしての自分がその邪魔をする。だがこのまま自滅することは当然できないので素直に銀を上げる。
▲4八銀
これ以降、先手後手ともに自陣を整えに入ったので、駒がぶつかったのは39手目になってから。
▲4五歩
同歩なら同桂で、有利不利は不明だが殴り合いが始まる。だが御厨先生は堅実に5三銀と銀を下げた。
警戒されている? いやでも普通の棋士でもこれは取らないか。
▲2四歩
静香は4四の歩をとらず、ノータイムで飛車先の2筋でも歩をぶつける。
今の将棋界の第一人者は御厨先生。でも早差しに限れば静香に分がある。何人の人が見てくれるかはわからないけれど、世界中に流される動画だということが、御厨先生にも影響しているのかもしれない。もしそうならば、そういった露出になれた静香がより心情的にはより有利なのかもしれない。
今回はさすがに同歩と取られたので、こちらも4四の歩を取る。すかさず同銀右と取られる。しかもこれで4二にいる御厨先生の角道が開いた。もちろんその角は2四の歩に利いている。角が動けばこちらの飛車で取れてしまうので、すぐに動かすことはないだろうけれど。
▲6八角
ここで7七で引きこもっていた静香の角も、動きやすいように一旦下がる。
△3三銀
堅い。これまでの対局では多少強引な手も指してくる御厨先生が今日はひたすら堅い。自陣が金銀4枚でしっかりガードされている。静香は2九と飛車を下げるのを嫌って、3五歩 と突く。そろそろ見せ場を作らないと将棋を初めて見る海外の方は退屈してしまうかもしれない。
同歩、同角
これで御厨先生の角も出て来るのでは? でも4四歩に打たれて角道を止められてしまう。流石にこのままだと拙いので静香も角を下げた。これでまた御厨先生のターンなのだけどやはり攻めて来ないので、2筋に歩を打ってまた静香から攻める。中盤が長くなりそうだ。
御厨先生はじっと我慢して静香が隙を見せるのを待っているのかもしれないし、攻め時を見計らっているのかもしれない。
57手目、静香はまた2筋に歩を打つ。だが今度は相手陣内。
▲2三歩
同金に対してこちらも2六の歩を飛車で取る。後手は2四歩。多分最善手なんだろうけれどやはり堅い。息苦しい状況が続くけれど、御厨先生も決して楽ではないはず。静香はしつこく7五歩に打って駒をぶつける。ここでやっと御厨先生が攻めて来た。後手8六歩。
これで攻め合いになるかな?
同歩で受けると、後手角に7五の歩を取られる。その角を無視して2五に歩を打つ。8六の歩も角で取られる。8八の自玉のすぐそばに角がいて、その角行の後ろに飛車が控えている。その連携を崩す。8四歩、同飛、7三角成。歩と桂の交換で、かつ相手の飛車の斜めに馬ができた。短期戦だから飛車が逃げてくれるたらいいのだけど……もちろんそんなことはあり得ない。
70手目、9七角成。飛車馬の両方から王手がかけられた形だ。ここは同玉で馬を取るか、逃げるか考えどころだけど静香はノータイムで逃げる。詰み筋はまだ見えないけれど、8九に竜がいる限り、こちらの玉が9筋に閉じ込められてしまう。
7七玉、8六馬、8八玉
ここで初めて御厨先生の手が止まる。今日の傾向だと後手は飛車を落とすと思うのだけど、攻めて来るのかもしれない。
「50秒……55秒」
その読み上げと同時に、8七に歩を打ちこまれた。もちろん7九に逃げたところで、後手が8一に飛車を落とした。静香が何度も歩攻めをしたので、御厨先生の駒台には歩が溢れているので、ここに1枚残しておいた方がよいと考えたのだろう。
でもここで静香に手番が回って来た。後手の駒台とは違って先手の駒台には桂馬が一枚あるだけだ。だが早速それを使うことにする。