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みんなで私の背中を推して  作者: 多手ててと
後編:大学生編
227/284

227.将棋チャンピオンシップ(10)

竜帝戦の本戦の初戦、終盤戦もいよいよ大詰め。盤面を見る限り静香が負ける可能性は少ないと思うが、当然油断はしない。


85手目から▲3二成銀、△1二玉、▲2三銀、△同玉、▲3三成桂、これで玉が1列に逃げたら駒台にいる金をどこかに打てば静香の玉は詰んでしまう。だが静香は焦らない。武田四段もこの局面に到るどこかまでは自分が勝てると思っていただろう。だが実際にここまで手が進んだ今はもう気が付いているはずだ。


静香は4八のと金に紐を付けていた6六の角を3三に戻して先手の成桂を取る。91手目3五桂の最後の攻撃を3二玉、4三金、2一玉、3二金打。ここでこれまで全く働いていなかった文字通りの居飛車を使って満を持して同飛とする。


これでほぼ勝ちは決まりなのだけど、先手は4四に桂馬を打った。これをそのままにしたら後手玉は詰まされてしまう? だがそんなことを考える必要はない。なぜならこちらから連続王手をかければ13手詰めだから。


そこから3手指したところで、武田四段は観念したのか投了した。静香にとっては竜帝戦の本戦トーナメント初勝利。だが、5組優勝者として6組優勝者に負けるわけにはいかない対局でもあった。次の4組優勝者も静香とはこれまで対局したことの無い棋士が相手だ。


そして相手の武田四段とは今後も対局することになるだろうと思う。特に持ち時間が短い一般棋戦でぶつかる可能性はそれなりに高い。もしかしたら箱石先生並みの強さを持つようになるかもしれない。


対局終了後のインタビューなどが終わり静香は対局室を出た。


昨年櫛木さんが天辺まで勝ち進んだ棋戦、静香はどこまで勝ち進むことができるか。武田四段には申し訳ないが、本日の対局で唯一格下の相手をくだした今、トーナメント表には格上の棋士の方々の名前しか残っていない。静香はそれを思い出しながら、頭を次の仕事へと切り替えた。


まずは完成したニューアルバムのキャンペーンで色々な媒体を巡ることになる。今回のアルバムにも静香が作詞・作曲を務めた曲が含まれている。静香自身も手ごたえを感じているけれど、やはり以前からずっとお世話になっている一流どころのクリエイターが書いた曲と比べると見劣りするのも事実。


この辺りも伸ばさないといけない。


もう一つはプラスドクリップの動画配信サービスの開始一周年キャンペーンが年末から始まるが、これがかなりの大規模になるので早くも準備が始まる。


それから大学だけど、2年の春学期が終わりそろそろ秋学期が始まる。静香はこの夏学期で1~2年で必要な単位は、残りは必修のものだけ取れば問題ない。だがその必修のものに秋学期からは専門課程の講義が含まれる。これまではある意味他の学部生とあまり変わらない講義を受講していたわけだけど、これからは医大生としての講義が始まる。


将棋では次回の対局は順位戦。静香が今参加しているB2リーグには定員がない。C1に落ちるのは降級点を重ねた場合。極端な話、B2は最初から最後まですべての対局を落としても来期もB2に留まることができる。勝ち越しするなどで降級点を消すことができずに、2回目の降級点を取った場合にC1に落ちる。


だがB1からは定員がある。だからB1に上がれるのはわずか3名のみだ。そして下位3位以内に入ったらB2に落ちる。今の所静香は順位戦では負けなしだけど、B2になると苦しい対局が増えた。おそらくB1から上はまったく別の世界になるだろう。


順位戦の次の対局は玉将戦本戦リーグの第1局。定員が7人ということもあって、ある意味順位戦のA級よりも難関とさえ言われるリーグ戦が始まる。棋奥戦の敗者復活戦で敗れた静香にとっては初めてのタイトル挑戦になるかもしれない。


やらなきゃいけないことがいっぱいあるし、やりたいこともいっぱいある。もちろんチャンピオンシップもそのひとつだ。静香は帰りの車の中で大きく伸びをした。


だが9月に入ってから静香の調子は良くなかった。竜帝戦は2回戦は勝ったものの、3回戦で1組4位の国分先生に負け。玉将戦本戦リーグに到っては初戦から連敗しタイトル挑戦はおろかリーグ残留にも黄色信号が点いた。


<対戦成績(7~9月)>


7月上  玉将戦 2次予選 準決勝    〇

7月上  星雲戦 決勝T 2回戦      〇

7月上  白銀戦 C級 第9局       〇(B級昇級)

7月中  順位戦 B2 第2局       〇

7月中  棋奥戦 挑決T 3回戦      〇 海老沢 直樹 鋭王

7月下  棋奥戦 準決勝         ● 櫛木 蒼 竜帝


8月上  将棋チャンピオンシップ 2回戦 〇

8月上  玉将戦 2次予選 決勝     〇

8月上  棋奥戦 敗者復活戦 1回戦   ● 小田桐 勇 八段

8月中  竜帝戦 本戦 1回戦      〇 武田 将運 四段

8月中  聖麗戦 第1局         〇 今泉 七海 女流五段

8月中  順位戦 B2 第3局       〇

8月下  聖麗戦 第2局         〇 今泉 七海 女流五段


9月上  公共放送杯 本戦 2回戦    〇(1回戦はシード)

9月上  玉将戦 本戦L 第1局      ●

9月上  竜帝戦 本戦 2回戦      〇

9月中  聖麗戦 第3局         〇 今泉 七海 女流五段<防衛>

9月中  順位戦 B2第4局        〇

9月下  星雲戦 決勝T 準決勝     〇

9月下  竜帝戦 本戦 3回戦      ● 国分 正道 九段

9月下  玉将戦 本戦L 第2局      ●


<今年度通算成績(4~9月)>

棋戦:23勝5敗   勝率0.82

女流棋戦:12勝無敗  勝率1.00

合計:35勝5敗


タイトル:

  聖麗(2期)

  女流王偉(2期)

  女子オープン女王(3期)

  女流名人

  所沢秋桜

  女流玉将

  女流王者(2期)


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