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みんなで私の背中を推して  作者: 多手ててと
後編:大学生編
196/285

196.ヘッドライナー(4)

4月5月と、静香の調子は上々だった。


この時期女流戦は2つのタイトル戦と女流の順位戦がある。女王戦は大沼先生が、女流王偉戦は向田白銀が挑戦者だ。どちらも3連勝で防衛を決めることができた。そして女流順位戦では、静香はまだC級なので、こちらは余裕で全勝中。おそらく来年のB級あたりから、隙があれば噛みつかれてしまう。余裕はなくなるだろう。


棋士の方は、名人戦が行われているので順位戦はまだ始まっていない。今年はいよいよ静香もB2に上がったのでここからの昇級は厳しくなるはずだ。それ以外の棋戦としてはまず何と言っても、将棋界2大タイトルの1つ竜帝戦の5組で優勝できたのが大きい。


これで6月以降の本戦に出ることができる。まずは6組優勝者と当たる予定。相手は武田四段。まだプロになる前にアマ竜帝のタイトルを獲り、アマチュア枠から勝ち上がったことになる。編入試験で既にプロになっているとは言え、アマチュア枠から6組を勝ち上がったのは当然初めての快挙だ。


これまでは5組へ昇級者もいなかったはず。だから決して弱敵ではない。そして1回戦に勝てば次は格上の4組の優勝者とあたるし、それにもし勝てれば1組に所属する先生方と対戦するわけで、相手が加速度的に強くなるトーナメントだ。そして頂点に君臨するタイトルホルダーは櫛木竜帝。


よくこの過酷なトーナメントを6組の底から駆け上がり、タイトルホルダーという頂点まで走り抜けた。それをまだ初挑戦の中学生で成し遂げたのだからただものではない。いや知ってたつもりだけど、それ以上にちょっと彼はおかしいと思う。


プロ1年目などは、若手棋戦やそれこそ竜帝戦6組で対局したけれど、最近タイトル戦の予選で対局したのは鋭王戦ぐらいか。タイトルホルダーはいくつかの棋戦でシードされるから、静香が勝ち上がらないと対局できない。静香が得意な持ち時間が短い棋戦ならば当たるし、今の所勝てるのだけど、このペースで強くなると短い棋戦でも危うい。


鋭王戦のトーナメントは3時間とタイトル戦の予選としては比較的短いし、櫛木さんは竜帝になってから時々調子が不安定になっていたから何とも言えない。静香が持ち時間の長い棋戦で強い人に勝てるようになるより、櫛木さんが短い棋戦で静香に勝てるようになるか。後者の方が早いだろうな、という気がする。


好調なのは芸能も同じ……と言いたいが今の時点ではわからない。静香は民放のドラマで主演をもらっているが放送は7月開始。いくら撮影が快調でも視聴率というのは放映してみないとわからない。


視聴者がリアタイできる時間に合わせてあるので、民放のドラマはだいたい平日の20時台、21時台、22時台が多い。静香が起用される番組は月曜21時台で、この放送局では看板ドラマの時間帯。かつては平均視聴率はもちろん2桁で、最高視聴率は30%を超えるドラマもあったという。テレビが娯楽の王様だった時代だ。


今はドラマでもオンラインでオリジナルの作品や海外の作品が見れる。昔の、一時代を築いたドラマだって見れる。映画、スポーツ、ライブなどなどの映像コンテンツ、それにゲームなども含めたエンターテイメントの世界で、視聴者の貴重な時間を貰えるのかどうか、昔よりもとてもハードルが上がっている。


「それでも社会現象を巻き起こすことができる媒体は未だ限られていると思います。テレビドラマにはそのチャンスが残されている、私はそう考えています」


今年はこのテレビ局の開局何十周年にあたるとかで、プロデューサーにも多くの予算が渡されているらしい。そしてその予算の中に千夜への、より正確には鎌プロへの報酬が支払われていることを千夜は知っている。だからその報酬に見合う分の働きはしなければならない。最もテレビ局は営利企業なので、千夜を主演に置いたことを各企業に伝えてスポンサーからお金を引っ張って来るし、それを千夜も挨拶周りなどで手伝う。


原作なしのオリジナルの脚本を、千夜も名前を良く聞く台本作家さんが書き上げてくれた。千夜が演じるのはバスツアーのコンダクターで、そのツアーの中でトラブルや、あるいは心温まるエピソードが盛り込まれる、という1話完結型の形式だ。この5月の時点でもう半分以上収録が終わっているし、千夜が担当する、オープニングとエンディングの録音も終わっている。


音楽で言うと、アルバムがドラマの放送と同時にリリースされる。当然ドラマで使われる曲以外も含まれていて、歌詞は英語と日本語が半々ぐらい。こちらの制作も既に千夜の手を離れている。


残念ながら千夜が作詞作曲した曲はこのアルバムに入らなかったが、既にその次のアルバムの企画が進んでいて、そちらは全曲千夜の作詞作曲になる予定。千夜が満足できる曲があと数曲必要なので、千夜は仕事や授業の合間にそれらの制作を行っている。


しかしそれで終わりではない。今収録中のドラマが9月に終わった後は、別の局で10月から3月と2クール使ったドラマの収録も始まる予定だ。だがもし7月からのドラマが大コケしたら多分12月で打ち切られてしまうだろう。本当に芸能界は世知辛い。

すいません。元々6組を勝ち上がったのは櫛木さんの兄弟子の田丸さんだったのですが、それを忘れ225話で武田四段との初対局をプロットより前倒しにしてしまいました。


どちらを修正すべきか? 元のプロットに戻すのがあるべき姿だと思いますが、アマチュア枠から勝ち上がったという設定も美味しいな、と思ったので6組優勝は武田四段になりました。


田丸五段、申し訳ない。


ご指摘頂いた狢三兄弟様、ありがとうございました。

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