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みんなで私の背中を推して  作者: 多手ててと
後編:大学生編
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118.部活とサークルと研究会(2)

とは言え、今後静香のレベルアップを考えると、やっぱり研究会についても真面目に考えなければならない。


だから相手はなるだけ暇な……時間がある相手がいい。ネットの高段者と指すのもいいのだけれど、時間が短すぎるし、高段者と言えどもプロに比べるとやっぱりぬるいし、感想戦とか検討ができない。


そう考えると将棋部はひとつの選択肢としてありだ。空き時間とかにぷらっと部室に行けば指してもらえるだろう。東大将棋部は全国でも1,2を争う程の強さで実際に元奨励会の人もいるし、将棋部からプロになった人もいる。そもそも大学将棋自体が、レグスぺのように新たな戦術が産まれる場でもあるので侮れない。


それにTLP同様に邪悪な目的にも役立つはずだ。よし、どれだけ参加できるかはかなり怪しいが将棋部はあり。今度部室の扉を叩いてみよう。


でも……やっぱりプロ同士の研究会の方がやはり魅力的だ。でも既存の研究会はさっきのように時間的に無理。新しい研究会がいい。ツアーとか入ると当然キャンセルになるので、不定期開催がいい。そんな我儘を聞いてくれるプロ棋士がいるのかな……やっぱりいないよね。


でも春休み(?)の前半はツアーに使ったし、既にアルバムのレコーディングもあるし、今後は女流のタイトルマッチ2つが並行して実施される。だけど大学が始まってからよりは今の方が余裕があるはずだ。だから今の内に足搔いてみようと静香は考えた。ちなみに入学式より前に講義が始まる……


でも静香と比較的仲がよくて、お互いにメリットがある棋士って誰かいたっけ? 御厨先生や月影先生は静香を気に入ってくれているみたいだけど、タイトルホルダーだから、静香が貰うだけになってしまう。やっぱり昨年もお世話になった池添九段門下の誰かだろうな。


比較的……あくまで比較的だけど、仲がいいのは同期の櫛木くしき五段か、この前負けた野々原六段かな。櫛木さんとは三段リーグではもちろん、プロの公式戦でも何度か勝っている。野々原さんには一回負けただけ。


やっぱり頼るなら同期で年下で一方的に静香が勝っている櫛木さんより、プロの先輩で年上で負けている野々原さんの方が心情的に声を掛けやすい。静香は先日負けた後、何度かやりとりした野々原さんにメッセージを送った。


ご無沙汰してます。図々しいご相談なのですが、研究会とかできる時間があればいいなあ、と思いまして。


そう送ったところすぐに既読が付き、野々原さんから電話がかかって来た。


「久しぶり。研究会だったら喜んでやるよ~」


なんとも頼もしいお答えだ。


「ありがとうございます。でも私の場合時間がなかなか取れないので、不定期になると思うんですよ」


「そうだろうねえ。僕は進学してないけど、それでも時間があるとは言えないものねえ」


野々原さんは静香より学年は1つ上、プロとしてなら3期先輩になる。高校卒業後は進学せずに棋士に専念している。でも当たり前だけど棋士は棋士だけでいろいろやることがある。


今年度の静香は夏の将棋祭りに一日参加しただけ。でも他の棋士はもっといろいろなイベントや催し事に参加している。もちろん東京や大阪だけでない。各地の将棋道場や大会のゲストになったり、最近ではSNSや動画サイトに将棋やトーク、あるいはゲームなどの動画を投稿している棋士もいる。


普及は大事。本当に普及は大事。


もちろん静香は、下手をすると御厨先生よりも各媒体への露出が多いので、ウザがられないように、将棋指しとしての自分をアピールしている。静香が意図したわけではないが、グラマフ賞受賞後にあったパフォーマンスなんてまさにそうじゃない? チェスだったけど。


あとファンクラブ通信にも将棋の話題を入れ込む。日記だと自然にそれが書けるというのもあった。実際掲示板に、「千夜ちゃんの影響で将棋をはじめました」という70代のお婆さんの書き込みを見た時には、感激して普段事務所に止められている返信をしたこともある。


「うーん。そうすると結構先になっちゃうし、先の予定なんかまだわからないでしょ?」


大きなイベントは、どちらも今泉先生とやる女流王偉と女子オープン女王戦のタイトル戦。それから5月末には南仏でニース国際映画祭があるから、それに合わせて今度は欧州初ライブを行う予定。流石にベルリナーレのあれはライブとは言えないしね。当然対局はその期間を避けてスケジュールしてもらうから渡仏している前後、静香は対局過多になる。


将棋部に入ったとしても、五月祭(学園祭)にはさすがに参加しないと思う。あれは別のキャンパスで行われるし、将棋部が参加するかもわからない。


レコーディングやなんやかんや撮影もあるし、誰かの穴埋めとかで突然イベントが入る場合もある。私本当に卒業できるのかな。


「じゃあまた今度調整しよっか」


「そうですね。いきなり連絡してすいませんでした」


やはりプロ同士の研究会までやるのは無謀だったようだ。


「えっと……ちょっと待っててね………………その、VSでいいなら是非やりたいって奴がいるんだけどどうする?」

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