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みんなで私の背中を推して  作者: 多手ててと
後編:大学生編
117/285

117.部活とサークルと研究会(1)

勝ち進めば必ず強い人と当たる。それは将棋に限らないと思う。


でも将棋のタイトルマッチは、五番か七番勝負が多い。棋戦でいうと七番勝負は、竜帝、名人、王偉、玉将の4つで、なおかつこれらはいずれも2日制。現在の実力では静香はとてもタイトルには絡めないけれど、もし2日制の番勝負に出ることができたとしたら、そのうちの半分ぐらいは寝てしまうことになるのではないだろうか。残りの鋭王、王者、棋奥、棋神は五番勝負でいずれも1日制だ。わかりやすいと言えばわかりやすいのかな。


なおこの年度末時点で8大タイトルうち5つを御厨先生が持っている。御厨先生が持っていないのは、静香の連勝を止めた海老沢先生が早蕨先生から奪った鋭王。国分先生からタイトルを奪った小田桐王者。国分先生とも小田桐王者とも静香はまだ対局したことがない。そして御厨先生のタイトルをひとつ減らしたのが、棋奥の月影先生だ。月影先生は六段でタイトルを取った。静香と同じ六段でだ。


それまでの実績が静香と違うから段位だけでは何とも言えないけれど、御厨先生と対戦することでその同世代の月影先生も実力を発揮し始めたということだ。相変わらず御厨先生1強とは言え、長らくタイトルを保持されていた早蕨先生や、国分先生に変わって、御厨先生以外の若手や中堅が実力を発揮し始めたと総括できるだろう。


あの領域に静香が絡んで行けるようになるまで何年かかるだろうか? 1年半のリミットを超えたら休会することも考えなければならない。一方、女流では静香は既にタイトルホルダーだ。女流順位戦を毎年一段ずつ昇る必要がある白銀戦はしばらく無理だけど、他のタイトルには是非絡んでいきたい。


具体的にいうと、女流のタイトルでは七番勝負は白銀戦だけ。聖麗、女子オープン、女流王者、女流名人、女流王偉が五番勝負で、女流玉将、所沢秋桜ところざわあきざくらの2タイトルは三番勝負だ。そして8タイトルすべてが1日制だ。


これら8タイトルのうち、4タイトルを今泉先生が持っている。今泉先生は所沢秋桜コスモスを大沼先生に奪われたけど、聖麗と女流名人を獲ったので、タイトル数は増やしている。今泉先生から所沢秋桜を奪った大沼先生は、女流玉将も岸先生から奪ったので2冠。代わりにそれまで持っていた、女流王者を女王を持つ静香に奪われた。8タイトルのうち今泉先生が元々持っていた2タイトル以外の6タイトルの持ち主が移動したということになるので、かなり激動の年だったということになる。


つまりは女流三強の一角であった向田先生の座に静香が取って変わったということになる。白銀戦は現時点で今年度唯一予定されている棋戦が残っている。とは言え、D級だからさすがに、次の対局も、4月になってからの残りの対局も取りこぼすことはないと思う。相手も研究してくるだろうから、ちょっと慢心しているとは思うけど、それでも……負けることは無いと思う。


話を元に戻そう。これらのタイトル戦のうちいくつかは時期が並行して行われる。極端な例だけど、大沼先生は今年度、静香から女流王者を守ろうとしながら、同時期にあった、女流玉将と所沢秋桜を奪い取った。


あそこまで極端ではないが、静香は今年似たような状態になっている。つまり女子オープン女王の座を今泉先生から守るのと同時に、女流王偉を今泉先生から奪おうとしなければならない。これが同時に起こる。つまり最低6回、最長10回同じ相手と3ヶ月にわたって対局を繰り返すことになる。その場合、間に大沼先生が持ってるタイトルの棋戦でもあたるかもしれない。


そう考えると御厨先生は大変だろうな、と静香は思う。そう言えば夕陽杯の感想戦もまだできずじまいだ。4月の半ばにある将棋大賞の時に会うはずだから、少しでも話せればいいな、と静香は思った。


ましてや研究会を御厨先生とやるのはスケジュール的にとっても難しい。静香も御厨先生もとっても忙しいからだ。そして既存の先生が開催されている研究会に参加するのもなかなか難しい。だって日中は講義があるからね。冬学期や来年の負担を考えると、週に17コマぐらいの授業をとらないといけない。静香の都合に合わせて研究会の時間を変えてください、なんて到底言えない。


ちなみに1コマは105分もある! 2時間近いけど集中持つのかな? 将棋で考えればなんとか持つような気もするが、講義の休み時間は10分。2限と3限の間の昼休みですら50分しかない。そして1限の開始が午前8時半なら、6限の終りは午後8時半。まあ1限はともかく6限の講義なんてほとんど無いし、静香も受けないけれど。


これでまだ2年の冬学期以降よりは楽なの? 本当に?


一部は静香の責任でもある。本当は各学期で取れる単位数が決まっている。入試において静香は英語で好成績だったのでTLPトライリンガル・プログラムへの参加資格をもらった。いろいろよこしまな考えもあったのでそれに参加することにしたので、必修の単位が増えた。同時に各学期で取れる単位制限もTLP参加者であれば、よっぽどの無茶をしない限りない。本末転倒かもしれない。


そして邪な考えは言い過ぎか。TLPは文理も関係ないので、他のクラスの知り合いが作れるというのが大きなメリットだ。クラスは類(静香は理科三類)と選択した第二外国語(静香は中国語)で決まる。だから別のクラスの友だちがいれば、今後静香が新しい病院を作ろうと思った際に、絶対その人脈が活きると思っている。

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