表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
みんなで私の背中を推して  作者: 多手ててと
前編:高校生編
100/284

100.瞬息(5)

146手目、流石の御厨先生も攻め手が無くなったので2四歩として守りを固め、桂が跳ねても王が死なないようにする。このままだと静香のストロングポイントである2六にいる竜が逆に危険になるので、これまで地味だった左辺でちょっと動いてみる。


7六に歩を打ってまず7五角を追い払う。角が一歩下がっただけなので、8筋の歩も上げてさらに下げさせる。そして空いた5三に角を打ち込む。このまま飛車角交換してもいいが御厨先生はどうするかな? いつ2五の桂をどちらに放り込んでくるだろう。だが秒読みの末に打たれたのは4三歩。先にこちらの角の利きを奪いに来た。


これで御厨先生の駒台には歩が一枚だけ。なら静香は相手の桂の利きを奪う。153手目に2九桂打ちで相手の桂がどちらに跳んでもこちらの桂で対処できるようにした。静香の駒台も虎の子の金が2枚だけ。つまり駒が盤上また集まり始めて来た。


5五歩で歩を補充されてしまったし、銀が上がるルートも作られた。こちらの要の竜が危ないが、それよりもまずは王が優先。5八金打で守りを固める。静香の駒台も金が一枚だけになった。


だがここまでくると明らかに静香が有利だ。ただ盤上には駒がいっぱいあるが、こちらから動く術はあまりない。静香は4七に桂を跳ねて、竜が詰まないようにし、また王手をいつでもかけれるようにする。


それを嫌ったか御厨先生は王を下げた。まあ御厨先生自身の駒が4列で蓋をしているので、下げた方が安全なことは間違いない。王手にはならなくなったが、それでも3五桂と跳ねて攻撃の起点を作る。


それに対しては3三歩打で隙間を埋められるが、こちらも4四歩打と圧力を加える。これで駒台は静香が金1枚、御厨先生は歩1枚。


早速同歩で取られる。ここで同角成にするのではなく、1筋の歩を突く。これで取られたら1筋、端から攻めることができるが、御厨先生は164手目に3五銀と桂馬を取って来た。ノータイムで同竜。御厨先生はここでもギリギリまで指さない。そして166手目、5七角成と角を切って来た。


静香の残り時間は3分。ここでそのすべてを使い切る。攻める? 多分無理だから守りを考える。同銀、同銀、同金が本戦。それを解消した後か途中に挟むかはわからないが1七桂成、同桂もある。それは確実。


問題はその後。1六桂打ちなら一八玉で大丈夫。相手に金があれば即詰みだけど無いからね。逆に言うと金を渡すまでにこの状況をなんとかしないといけない。その後も3九銀打なら1九銀打で大丈夫。1六桂打ではなくて5一飛でも6二角成で優勢を保ったまま戦える。


30秒


その後は3四銀打なら2六竜、2五桂打、4六桂打で大丈夫。3四香打なら2四竜、2三銀打、2六竜で大丈夫。


40秒


それ以外にも見落としはない、空いた3九に銀を打たれても、こちらも1九に銀を打てば大丈夫。


50秒


よし。静香も秒読みに入ったがぎりぎりまで考える。そしてこのまま勝ち切る。双方守りは分厚いけれど、時間がかかっても今日は絶対に勝つ。


1、2、3、4、5、6


静香は167手目に同銀と指す。御厨先生は同銀か1七桂成の二択のはずだし、それももう決めているはずだ。だがぎりぎりまで考えて来る。静香もその後を考える。


168手目同銀。


だが静香は考えない。もうレールは敷かれているのだから考えるのは御厨先生の考える時間を増やすだけにしかならない。ノータイムで同金。


これで御厨先生は1七桂成の一択。一応1一玉で守りを固めるというのもあるが、それは4二銀から攻めて行けるのでむしろありがたい。


50秒、1、2、3、4、5、6、7、8


予想通り1七桂成。静香はノータイムで同桂。


50秒、1、2、3、4、5、6、7


172手目1六桂打、静香はノータイムで1八玉。当然だけど金を渡していないからね。


御厨先生が秒読みをギリギリまで使うのは余裕がないからだ。静香には余裕があるから即指す。ここからは普通に対応すればどんな棋士でも勝てるはずだ。


3九銀打、1九銀打。ここまではだいたい読み通り。


この後も決まっている。1一玉なら2九金打で守り固めるその後は、2八銀成、同銀、同桂成、同金、1六桂打、2九金、2八香打、1九金、2九銀打、同銀、同香成、同金、2八銀打、同金、同桂成、同玉で一旦終わり。


同銀のところで同桂成だった場合もほぼ同じ。3四香打だった場合は、2四竜、2三歩打が入る。どのパターンでも途中でまだ解消されていない5一飛、6二角成が入るかもしれない。


で、正解は本線の1一玉でした。予定通りだから2九金打ノータイムで返す。ルーチンのように残り数秒まで御厨先生は考える。静香も考え続ける。だがここで静香の予想は外れた。2八桂成。そっちが先? 香を打たれることが無くなっただけだから。こんなものは微修正だ。静香はノータイムで同銀、同銀成、ここで同金にすれば元考えていたルートになるけど、これなら同玉で十分。


静香の勝利が近づいてきている。だが御厨先生から感じる圧力が凄い。普通に指すことが難しいのも事実だ。静香はもう盤面と駒台しか見ないことに決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 祝100話目です。 [一言] 盛り上がって良い感じです。 名人に勝てるか、はたまた負けてしまうのか。 続きを期待しながら待ちたいと思います。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ