第64話 覇王への宣言
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俺が啖呵を切った瞬間、バールセルトの顔が驚愕に歪んだ。
その表情は、バールセルトにとって俺の言葉が予想外であったことを、雄弁に物語っている。
だが、気にせず俺は続ける。
「あんたが俺と戦おうとするなら、俺はアイリスと一緒に尻尾を巻いて逃げさせてもらうよ」
「逃げ切れると思っているのか?」
「いや、あんたならどこにいても見つけるだろうよ」
バールセルトの持つ諜報機関は、ネルバにさえ劣らない超優秀なものだ。
決して逃げ切れはしないだろう。
けれど、逃げ隠れするだけのつもりなんて、俺には存在しない。
「だから見つける前までに、この国を潰してやるよ」
バールセルトを真正面から見返し、俺は笑う。
「経済的にでもいい、他国の王族に取り入って連合でも築かせてもいい。どんな手段であれ、俺ならこの国程度潰せる」
それは紛れもない事実だった。
確かに、バールセルトは天才だ。
この小国の王でありながら、大国と渡り合う姿はまさに覇王と呼ぶに相応しい。
けれど、いくら覇王と呼ばれるバールセルトでも、この小国ではやれることが限られているのだ。
かつてバールセルトは、隣国の王都を簡単に陥落させた。
にも関わらず、その隣国を支配できていない理由。
それはこの国に、隣国を支配できるだけの財源も、人材もいなかったからだ。
そんな国を潰す程度、俺には無理ではない。
そう例え、バールセルトがその国を守ろうとしたとしても、問題なく。
この国は、バールセルトという天才の力を発揮するには、あまりにも小さすぎるのだ。
「宣言してやる。お前と潰し合いになるだったら、俺は絶対にお前と真正面から戦わねぇよ!」
それを理解しているバールセルトは、憎々しげに俺を睨んでいた。
その殺気の前では、歴戦の戦士でさえ泡を吹いて倒れるだろう。
「……クソ餓鬼が」
だが、その口から出てきた声には覇王らしくない苦々しさが込められていた。
そのバールセルトの反応に、俺はわざとらしく驚いたふりをしてみせる。
「おや?覇王様の覇気が見えなくなっているぞ」
俺の言葉にバールセルトの顔がさらに歪む。
それに俺は久方ぶりに愉快な気分を覚える。
バールセルトの唯一の弱点があるとすれば、それはこの国だ。
この国のためにバールセルトは手段を選ばないが、逆に言えばこの国を大切にしすぎていると言える。
故に、最早バールセルトに俺と殺しあうという選択肢は無くなっていた。
バールセルトに残された選択肢は一つ。
俺の要求を全て聞き、貸し一つという名目で、俺を解放すること。
せめてもの反抗とでも言いたげに、バールセルトを忌々しげに睨みながら口を開いた。
「……女のために世界をかき回すか。まさしく屑王子だな、ライルハート」
それは、バールセルトからすれば俺に対する嫌味だったのだろう。
しかし、俺はその言葉を受けて笑った。
「それは俺にとって、最大の賛辞だよ」
たしかに俺は、こんな能力や知識を身につけているのがおかしような、ちっぽけな人間なのだろう。
でも、そんな自分の最大の選択がアイリスを選んだことだとしているから、俺は恥じない。
自分の力をどこに使うのか、もう俺は決めているのだから。
「だから、一つだけ頭に入れておけ」
それを教えるため、俺はバールセルトへと向かって、言葉を告げる。
「──アイリスに手を出そうとすれば、俺は手段を選ばない」
その言葉を後にし、俺は振り返ってその場を後にする。
もう、この場でいうことはないとそう判断して。
「……覚えておく」
バールセルトの声を最後に、俺は返答することなくその部屋を後にした。
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タイトル下記です。
「不当な婚約破棄を誰も許しませんでした〜可愛げのない私が溺愛に気づくまで〜」
※タイトル変更するかもです。




