第61話 バールセルト
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兄貴に案内された場所、そこは王子である俺たちの部屋さえ比にならない大きさの部屋だった。
部屋の持ち主の権力の高さを物語るように、部屋の中には素人目でも高いとわかる、絵画や家具が並べられている。
その男は、その部屋の中座っていた。
さまざまな品物が並べられた部屋に負けぬ程の存在感を放つその男が、ただ者ではないことは一目で分かるだろう。
いや、それどころかその男の存在感のせいで、部屋にある絵画の存在感が薄くなっているようにさえ感じる。
その見るからに異常とわかるその人間こそが、俺たちの父であり、他国では覇王と揶揄される現国王バールセルトだった。
「っ!」
父の姿を目にした兄の目に、僅かな緊張が走る。
が、それさえまるで気に留めず、バールセルトは俺の方へと目をやった。
その瞬間、俺は知らず知らずのうちに手を強く握りしめていた。
目の前の男に対する警戒だけではなく、今までの怒りや憎しみが頭の中蘇る。
だがそれを胸のうちに押し込む。
次の瞬間、俺はその場に跪いた。
「ライルハート!?」
突然の俺の行動に、兄貴が声をあげるのが聞こえる。
今まで、バールセルトを目の敵にしていた俺が、こんな態度を取るのが信じられないのだろう。
その兄貴と対照的に、バールセルトは俺の意図を的確に理解していた。
「臣下の礼、か。もう自分は公爵家の人間だと、そう言いたいわけか」
「言いたいもなにも、それが事実でしょう」
「ハッ。あれだけ反抗していたお前が素直に頭を下げるのも、中々いい光景だな」
そう言って笑うバールセルトに、俺は怒りを覚える。
出来れば、今すぐ立ち上がってバールセルトを殴り倒したいと思うほどに。
とはいえ、この俺の態度を見て満足して引き下がってくれるなら、望んでもいない状況だ。
そう考え、必死に唇を噛み締めて怒りを抑える。
しかし、そう上手く話が進むわけがなかった。
「だが、その程度で俺がお前を許すと思ったか?」
バールセルトの雰囲気が変わった。
まさに覇王と呼ぶべき威圧感が、バールセルトの身体から溢れ出す。
「人の計画を潰しておいて、なんのお咎めなしで済むと本気で思っていたのか?」
「ち、父上……」
「黙れ。お前は口を出すな」
「っ!」
援護をしてくれようとした兄貴を、目もやらずに黙らせ、バールセルトは俺をさらに強く睨む。
どうやら、今回に関してはバールセルトもお怒りらしい。
とはいえ、それは予想できたことだった。
何せ、俺はバールセルトが長期に渡って企んで来たことを、全て台無しにしたのだから。
無能であったアレスルージュが、今まで公爵家当主の座にあったのは何故か。
何故、王家に対する敬意が薄いアレスルージュを、バールセルトが放置していたか。
それは全て、バールセルトの計画のための布石だった。
そのために、俺は今までアレスルージュに手を出せなかった。
裏から手を回してはいたが、アレスルージュを引きずり落とすにはあと数年がいるはずだった。
けれども今回、俺は強引にアレスルージュを破滅させた。
その結果、俺へバールセルトの計画を潰すことになった。
──そう、敢えて公爵家に反乱を起こさせるという、計画を。




