第48話 狙い
「ら、ライルハート様?」
そんな、あのライルハート様がこんな簡単に倒されるわけがない。
そう思いながらも私は声を上げるが……その声にライルハート様が反応することはなかった。
今までの戦いぶりが嘘のように、ライルハート様は固まってしまう。
その姿を目にし、魔法を放った男は笑う。
「は、はは!油断しているからだよ、餓鬼が!」
ライルハート様の活躍によって、既に動けるものはほとんどいない。
だが、そんなことまるで気にせず、男はライルハートの方へと歩いていく。
その姿が何より、男の魔法に対する自信を物語っていた。
「たしかに才能に溢れたばけもんみてぇなガキだったが、経験不足が仇となったな。知っておけ、これが戦場での戦い方だよ。まぁ、もう意識なんてないだろうがな」
男はそう笑いながら、ライルハート様へと近づいていく。
そして、無遠慮にその肩に手を置こうとして。
「そうか、勉強になったよ」
「……え?」
──ライルハート様が口を開いたのは、その時だった。
何が起こったか信じられない、そう言いたげに男は硬直する。
その男へと躊躇なく、ライルハート様は拳を叩きつけた。
「がっ……!」
次の瞬間、ライルハート様に殴られた男は、くぐもった悲鳴をあげながら地面を転がることになった。
よほど強く殴られたのか、壁に当たって転がるのが止まっても、男が立ち上がることはない。
そんな男へと、ライルハート様は淡々と告げる。
「悪いがこれでも暗殺には、いや、暗殺をしかけられるのには慣れているんだ」
その言葉に呆然と頭を上げた男の顔には、隠しきれない恐怖が浮かんでいた。
「な、なんで、俺の魔法を食らったはずなのに……!」
「残念だが、この程度の精神魔法では俺を傀儡になどできないぞ」
怯える男にライルハート様はそう不敵に笑う。
「アリミナの魔法でさえ効かない俺が、お前程度の精神魔法に屈するわけがないだろうが」
「そんな……っ」
その言葉を最後に、がっくりと男は首を地面に下ろし、動かなくなる。
それを確認してから、ゆっくりとライルハート様は告げる。
「といっても、この精神魔法を使う予定だったのは俺ではなく、アイリスだったみたいだがな」
一瞬、私はその言葉が自分にかけられたものかと思う。
だが、すぐに気づく。
ライルハート様の目は私ではなく、階段の方を見据えていることを。
……しばらくして、そこに姿を現したのはお父様の姿だった。
次回から、ライルハート視点になります!




