エピローグ 友人
「ねぇ夢子…友達って…なんなんだろうね?」
学校の帰り道、隣を歩く友人が、いきなり、わたしに尋ねてきた。
「え?ぇぇ…な、何なの、急に?」
一見、単純な質問。だが、いざ聞かれると、わたしは言葉に詰まり、戸惑った。
今のお互いの関係を率直に言えば良いのか。それとも、今に至るまでの交流や、これまでの言動について、回想すればいいのか。はたまた、もっと哲学的で、深淵な金言を求められているのか。
一人苦悩するわたしは、難儀な表情で、視線を彷徨わせると、頭の中で無数の言葉を攪拌する。
同性で同級生の友人は、そんなわたしの様子を見て微笑む。
「ふっ、ごめん…なんだか…難しい質問、しちゃった?」
私は、ひ弱な表情で、窮状を訴えた。
「もぅ…なんでいつも、いきなり変なことを聞くの?」
「ぇえ…だって…困ったときの夢子って、面白いんだもん」
眼鏡が良く似合う大人びた顔の友人は、悪戯っぽく笑う。
私は小学生と揶揄される童顔で、一生懸命怒りを表現し、にじり寄る。
友人は、苦笑いを浮かべた。
「何なのその顔?」
「おこってるの!」
「変な顔…」
「なんだとうぉ!」
友人は、楽しそうに駆け出し、後ろに束ねた黒髪を快活に跳ねらせた。
私は、両手を上げ、まてー!と言って追いかける。
少女の明るい笑い声が、夕焼けに染まる住宅街に響く。