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【徳永の場合】
ボクはただ座っていた。
「 ガシーン!
ゲッターロボだ!」
ゲーム機の音が鳴り響く。
一風変わったようだが、ここは病院だ。
ボクの通う精神病院だ。
ボクは、ゲーム機の音を聞きながら、その隣で地べたにあぐらをかいている。
ゲーム機をやれば、お菓子が取れるかもしれないけど、ボクはそんなの今は欲しくなかった。
ただ、鏡に映るボクを眺めて、お医者さんから呼ばれるのを待っている。
鏡に映ったボクの姿が見える。
おじさんと呼ばれた事はないけれど、おじさんとよばれてもおかしくない見た目だ。
ボウズ頭に角ばった顔。
少しだけだけどシワもある。
35にもなればそうなるのかな。
腹はぽっこりと出ているし、全体的に太ってもいる。
そんなボクを、ボクはただ見つめていた。
ずっと。
ずっと。