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 第五話 女神の娘

 その昔天上に幼い女神アテイナ様がおられました。

 女神には精霊と妖精が仕えておりました。

 ふと女神が地上を見下ろすと何やら黒い点の様な物が蠢いております。


『あれは……何?』


 女神は訝しげに側仕えの精霊に黒い点を指して尋ねると。


『あれは【はぐれ者】でございます』


『【はぐれ者】?』


『【はぐれ者】【なりそこない】【堕天し者】などと呼ばれておりますが要するに精霊になれなかった妖精です』


『精霊になれなかった?』


『長い時を過ごした妖精は精霊になる為人に憑りつき人を幸せへと導くのです。人が幸せになった時その感謝の念を受け精霊に進化する事が出来るのです。ですが……中には失敗する者もございます。失敗した妖精は醜い欲望に捉えられ醜い姿となり堕天いたします。それがあの黒い点なのです』


『なんと……あのように多くの妖精が堕天したのか!!』


 黒い点は地上にあふれ、今にもその星を飲み込むばかりでございました。


『幾百幾千ある星の一つでございます。一つが滅びたとしてもどうと言う訳ではございません』


『たった一つの星でも捨て置くことはなりません』


 女神アテイナは受肉し人間の娘に姿を変えるとその地に舞い降りました。

 女神の姿だと神力が強すぎて星がはじけ飛んでしまうから、星を壊さぬように人間の姿に受肉する必要があったのです。

 堕天した妖精は人間たちに【魔族】或いは【魔物】と呼ばれておりました。

 女神アテイナは【外れ者】を狩りました。

 そして地下空洞に封印したのです。

 女神アテイナは生き残った人々の中から一人の王子を選び結婚して女の子を産みました。

 その娘が17歳になった時精霊契約を教え天上に帰ってゆきました。

 あまり女神が地上にいることは星に歪みが生じるため許されない事なのです。

 女神は泣く泣く夫と娘に別れを告げたのです。

【外れ者】が封印された地下の上に城が造られ、都となりました。

 女神アテイナが産んだ娘は【女神の娘】あるいは【精霊姫】と呼ばれるようになり。

【女神の娘】がいるだけで封印は続くのです。

 そして女神の血を引く娘はずっとこの地の封印を守って来ました。

 ところが100年ほど前の事でございます。

 大地震が起きて地下の封印に亀裂が入り力の弱い【外れ者】が逃げ出したのです。

 10匹の【外れ者】は密かに人を喰らい知恵と力を付け王都に忍び込み。

 徐々に城に勢力を伸ばしていたのです。

 人の振りをして盗賊や貴族達の欲望を利用して、メイドや騎士になりすまし、女王に近づき反乱と見せかけ女王を殺そうとしました。

 女王を守ろうとして彼女の夫も殺されました。

 出産で力が弱った所を狙われては女王はひとたまりもありません。

 女王は辛うじて産まれた娘を妖精に預けます。

 妖精は生まれたばかりの姫を辺境の神殿の前に運びました。

 代々の【精霊姫】の力は弱り続けています。

 精霊処か妖精ともまともに契約出来ない程に弱体化していました。

 どんどん人間の血が濃くなる内に女神の力が弱まったのです。

 己が命と引き換えに辛うじて一つだけ妖精がお願いを聞いてくれました。


『この子を助けて!!』


 自分の命より、夫の命より娘の命を優先しました。

 国を憂う女王の立場よりも、愛する夫を守る妻の立場よりも我が子の命を優先したのです。

 血が絶えた時、封印は解かれるのだから。

 それは……世界の滅ぶ時。

【女神の娘】の血が絶えぬ限りこの世界は滅びません。

 女王は娘を妖精に預けると静かに微笑み息絶えました。

 女王の夫を殺しドアをたたき壊して反乱を煽動した【はぐれ者】が部屋になだれ込みました。

 ベッドの上で女王は息絶えておりましたが、赤子がおりません。


『ちっ逃したか』


 騎士を食い殺して彼に化けた【はぐれ者】は忌々し気にベッドを蹴りました。


『どうする?』


 メイドに化けた【はぐれ者】は騎士に尋ねます。


『【女神の娘】を逃したことがばれたら叱られるよ』


『忌々しい女王おんなめ!! 血が絶えぬ限り封印は解けぬ。地下に封印されたあのお方を解放することが出来ぬ』


『あのお方にお叱りを受ける。あたいは嫌だよ!! お仕置きは嫌だよ!!』


 メイドはガタガタ震え出した。

 小物の【はぐれ者】が逃げ出すときあのお方に【奴隷紋】を刻まれたのだ。

 その為彼らはあのお方に逆らえず命令通り動いてきた。


『お前たち【女神の娘】に逃げられたのね!!』


 ばん!! 

 とドアを開けて一人の少女が入ってきた。

 10歳ぐらいの美しい少女だが。

 その顔は鬼のように恐ろしかった。


『ヒイラ様お許しください』


『ごめんで済めば衛兵は要らないのよ!!』


 少女は三匹の【はぐれ者】を殴り飛ばした。

 三匹は壁まで飛ばされ首があらぬ方向に折れた。


『酷いですヒイラ様!! 首が折れました』


 メイドはブツブツ言いながら折れた首を治した。

 ざあぁぁぁ~

【はぐれ者】が殺した死体が部屋の前に20体ほど転がっていた。

 辺りは血の海だ。

 その血がまるで生き物のように動き大きな姿見となりある人物を映し出した。




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 2019/2/25 『小説家になろう』 どんC

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