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 第三話 父親と祖母

 扉が開き。

 わたしは執事長に促され中に入りました。

 ファミリールームの割にはどことなく寒い感じがします。

 壁紙が青いバラの模様のせいでしぃうか?

 家具も上等で。

 椅子に男の人が座っています。群青の上着には袖の所に青系統の刺繡が施されて上等な服だと分かります。

 恐らくカムオス父様の年収より高いんだろうなとぼんやり思いました。

 普通の子供なら大きな屋敷、豪華な家具、大勢の使用人、可愛いドレス全てにおいて圧倒されていたでしょう。でもわたしは普通の子供ではない。

 長椅子には年老いた女の人が座っています。

 男の人は黒髪にアイスブルーの瞳。

 冷たい色だなと思いました。

 厳しい顔をしています。まるで氷の彫像のようです。

 女の人は、男と似た顔で親子だと分かります。女の人もアイスブルーの瞳ですがやや色が濃く。

 男の人より温かみがあり。

 髪は黒と白髪が半分半分でしょうか。

 手の込んだレースのドレスを着ている。

 この二人はわたしの実の父と祖母ですね。

 おや? お爺様がいないようですね。

 領地にいるのでしょうか?

 彼等はお爺様が死んだとは言っていなかったのですが。

 わたしは2人によく似ています。

 血縁関係なのだから当然と言えば当然ですが。

 でも……

 瞳の色は違います。

 瞳はお母様と同じ色。カムオス父様がいつも綺麗だと褒めてくれる。

 宝石のペリドットと同じ色。


「この子がアレクサンドラか?」


 男が口を開いた。

 低い声。気のせいかしら?

 少し震えているような?

 自分によく似た事が信じられないのでしょう。

 カムオス父様が父親だと今まで信じていたようです。


「まあまあ……こちらに来て顔を見せておくれ」


 祖母は涙ぐみながら手招きをします。

 わたしは動きません。

 祖母の顔に困惑が浮かびます。

 祖母は執事長を見て後ろに控えれいるセテイを見た。


「どういうことなの?」


 その瞳は異端尋問官のように厳しく二人を見た。

 流石は長年侯爵家を仕切ってきた人だ。

 迫力が違う。

 セテイは泣き出しそうだ。震えながら答える。


「わ……わたしはアレクサンドラ様に本当のお父様はサミエル・レーベ侯爵様だとお伝えしたのですが。どうにも受け入れてもらえなくって。ずっと口を聞いてはくださらないのです」


「どうした。口が聞けないのか?」


 男の眉にしわがより、尋問するように尋ねる。

 わたしはスカートをつまみカーテシーをとる。


「カムオス・パルトの第一子アレクサと申します。レーベ侯爵様にはご機嫌麗しゅう。以後お見知り置きください」


 わたしのお父さんはカムオス父さんだけだよ。お前じゃねえ!!

 と挨拶をくれてやった。


「可哀想に……何にも知らないのね」


 老婦人は涙を零しながらわたしを抱きしめる。


「可哀想? 可哀想なのは物置で死んだアリステアお母様の事でしょうか?」


 老婦人の肩がびくりと震える。

 わたしは祖母の手からするりと逃げると男の前に立つ。

 ハンサムな男だ。母はこの男が好きだった。

 わたしに言わせれば顔だけの男だが。


「そもそも貴方はアリステアお母様に『その腹の子は私の子ではない!!』とおっしゃった。何故今更わたしを探したのですか? 」


 男が驚いた顔をする。

 何故それを知っているのか!!

 カムオスから聞いたのか?

 いや。奴はあの時、魔物討伐の遠征に行っていた。

 誰がこの子に教えたのか?


 わたしは男を見る。

 彼の思考は手に取るように分かる。

 あいつらにとってさぞや操りやすい男だったろう。

 祖母は驚いて息子を見ている。

 知らなかったようだ。

 最もこの人も母の事をあまり好いてはいなかった。


「言い方を変えましょうか。わたしが貴方の子供ではないと貴方に言ったのは誰ですか? そして探すつもりもなかったのにわたしを探すように言ったのは誰ですか? 母を殺したのはそいつらです」


「殺された? アリステアが……まさか……そんな馬鹿な……お前はカムオスの子だと彼女は言った」


「カムオスが本当のお父さんだったらどんなに良かったか。浮気相手の子供を孕んだと信じた使用人は母を物置に閉じ込めました」


「まさか……」


「おや?知らなかったんですね。最も貴方は彼女の所に入りびたりで館に帰って来なかったですからね。帰ってきても母とは会うことなく直ぐに出て行きましたね。わたしは母の側からあまり離れていることができなかったけど。彼等があの女と貴方を監視していたから報告は受けています」


 軽蔑の眼差しを男に向ける。


「母が物置に押し込められ流産する薬を食事の中に盛られて……彼等はお母様に尋ねました。『自分の命を取るか。子供の命を取るか』彼らにアリステアお母様は頼みました『わたしの命と引き換えにこの子を助けて』と……そしてアリステアお母様は亡くなられました。物置で誰にも看取られることなく。わたしを産んで。出血死だったそうです。わたしはへその緒を付けたままで痩せこけた赤ん坊で。彼等がカムオス父様に知らせてくれました。カムオス父様は館に忍び込みわたしとアリステアお母様の亡骸をここから連れ出してくれました」


「う……噓だ!! アリステアは浮気をしていてお前はカムオスの子供で!! ここで毒を盛られて殺されていただと!!」


「母が盛られた薬は二度と子供が産めなく毒草。赤い花でスズランに似ている【死人花】でした」


「【死人花】!! 有り得ない!! それは魔界でしか咲かない花よ!!」


 お婆様は絶叫します。

 そう【死人花】は魔界でしか咲かない。

 それを手に入れることが出来るのは魔族だけだ。


「どういうことだ!! ゲイツ!! お前はカムオスとアリステアは駆け落ちしたとわたしに言ったではないか!! 【死人花】だと何処からそんなものを!!」


 俯いていた執事長の肩が小刻みに揺れる。


「ゲイツ?」


 ゲイツの口から笑い声が漏れる。


「これは失礼。サミエル様。ここまで間抜けだとは思いませんでしたよ」





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  2018/11/29 『小説家になろう』 どんC

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