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虚ろな忌み子の殺人衝動  作者: 猟犬
第1章 偽りの勇者
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8.衝動の自覚

 野外訓練日前日の夜。


 俺は与えられた自室で明日の予定をまとめていた。

 明日は勇者達4人でパーティを組み、夜営をしながら一定のLvまで上げるとの事だ。

 クラスメイトの人数は28人なので7つのパーティが出来る。

 パーティはダルバと信二が見た中で、仲の良い人達を集めたものだ。信二はその人望と性格からダルバに勇者のリーダーとして動くように言われている。

 俺のパーティは俺の他に、信二、楓、菊の4人だ。

 俺は知らなかったが、どうやら楓と菊は幼馴染で仲が良いらしい。


 〈で、明日は何をするのだ?〉


 最近プルトリファ様は暇なのかやたらと話を振って来る。それでも自分の思考をまとめるためにも話す。


 〈明日はまず人の多いところでは検証出来なかった『反魂の狂乱』を試す。〉



 ・『反魂の狂乱』

  自身の負の感情を元に偽りの体を構築する。

 元に戻る際には偽りの体を分解し、変化する前の状態の体に戻る。



 スキルの説明を見るとこのように書かれている。

 自分の姿が変わる以上、人のいる場所では試せなかったが、人の少なくなる野外訓練でやっと使う事が出来る。

 しかし、その他にもう1つやりたい事がある。


 〈ほう?他にもあるのか〉

 〈ああ、そろそろ1人ぐらい殺りたい。既に対象も決めている〉

 〈…大きく出たな〉


 勿論だ。俺は未だに記憶も1つも思い出してない。

 人を殺したいほど恨んでいるんだ。実際殺したら何か思い出すかもしれない。試す価値はある。

 プルトリファ様からの声も聞こえなくなり、会話は終わる。明日も早いのでもう寝ることにする。







 翌朝

 俺たちは装備をつけ、客寄せパンダのように街中を練り歩く。

 様々な声援が聞こえる中、他の者達はその声に応える。俺はその騒々しさから声を出すことに憂鬱になり、街の人々の声を無視する。


「玲君は今日も随分と落ち着いてるねー」


 菊が話しかけて来る。


「今日の事が楽しみ過ぎて昨日眠れなかったんだよ」


 ああ、本当にな……


 まさか殺す予定の人物から声をかけられるとは思わなかったが、上手く受け答え出来たはずだ。


「たしかに今日は楽しそうだねー。いつもより頬が上がっているよ」




























 そう言われて頭が真っ白になる。


 俺は笑っているのか?


 人を殺す予定を立てて






 自分の頬を右手で触る。

 口は大きく弧を描き、俺は猟奇的な笑みを浮かべていることがわかる。

 無理矢理抑えようにもその笑みは溢れ続ける。

 確信した。俺は人を殺したくてたまらない。


 殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。


 そう思うことで、俺はこの世界に来てから始めて心の底から笑っている。

 異常な事は分かっている。それでも


 楽しくて…


 楽しくて…


 楽しくて!


 楽しくて!!


 仕方がない!!!!


 しかし、この笑みを見られる訳にはいかない。


「まあ、精一杯楽しむことにするよ」


 俺はそう言い、笑みを抑えるため憂鬱だった声援に応え始めた。





 □





 城下町を出て、街道を道なりに半日進み、東にそれる。そこをさらに4時間進んだところにある森林が今回の目的地だ。

 俺たちはダルバと6人の騎士たちと共に歩く。

 その間にそれぞれのパーティに着く引率の騎士がダルバにより紹介されていく。しかし、俺たちのパーティは呼ばれない。

 疑問に思っていると


「あと信二のいる第1パーティは俺が引率だ!」


 ダルバが堂々と宣言した。







 計画が一気に破綻した。






 頭の中に響くプルトリファ様の爆笑を無視して、考える。

 ダルバは人族の最強クラスの人物だ。腕も立てば殺気にも敏感だろう。これでは菊を殺す事が出来ない。しかもスキルの検証も出来るか怪しい。


 スキルの検証は意地でもやるにしても、菊の殺害は流石に出来ない。

 俺は唯一楽しいと思えた衝動をお預けにされ、気を落として野外訓練に参加するのだった。

はい。本日2話目です。猟犬です。

普通に書き上げれたので投稿することにしました。長くすると言った気がするが、長く書けた気がしない……。

明日も引き続き投稿するのでよろしくお願いします。

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