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虚ろな忌み子の殺人衝動  作者: 猟犬
第1章 偽りの勇者
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6.憶測の傷

 信二に案内された部屋は食堂のようで、集まるために借りたそうだ。

 食堂には既にクラスの大半が集まっており、皆は席に着いているが、楓と加藤は前に出ているため恐らく同じように信二に誘われたのだろう。残りの人が集まるまで4人で説明の進行を話し合う。

 程なくして全員が集まり、俺たちは説明する。

 この世界での一般常識から始まり、女神について、冒険者の話、各国の関係性、そして禁術の危険性。

 中でも冒険者の話で出てきた魔物の存在については、予想していた反応とは大分違った。

 魔物がいると聞いて不安がる者ももいたが、魔物の存在に興奮する人の方が圧倒的に多かった。

 初日に国王から聞いた話で、


 魔王を倒す=元の世界に帰る


 という単純な式が出来上がった事もあり、まるでゲームのようだとお祭り騒ぎだ。

 信二がパンパンと2回手を叩き、場を沈める。


「先程も説明した通り、魔族は人族よりも圧倒的に強い。その上、邪神プルトリファの加護も受けていて、この国の人々では勝てない!だから俺はこの国を救う為に戦おうと思う。みんなにも力を貸して欲しいけれど、戦いは危険だ。怪我だってするし、もしかしたら死んでしまうかもしれない…

 それでも俺に力を貸し、共に戦ってくれる奴は手を挙げてくれ!」


 初日の国王の話により、魔王を倒して遺跡を調べない限り、帰ることは出来ないので、基本的にここで手を挙げない選択肢は無いに等しい。

 少数派の魔物の存在に不安のあった者たちも最初は否定的だったが、周りがどんどん手を挙げていくのに感化され、手を挙げる。

 結果、クラスの全員が手を挙げることになり、信二はご満悦だ。


「お、話は終わったか?」


 クラスメイト以外は誰もいなかった食堂にいつのまにか人が居た。

 その人物は前に出てきて話し始める。


「俺の名はダルバ。この国の騎士団長をやっている者だ。国王様からお前たち勇者を鍛えるように言われている。よろしくな!」


 信二と同等レベルの笑顔をし、そう言った。

 顔立ちはそれなりに整っており、体格がしっかりとしている。短髪の髪型とそのラフな格好からとても気さくな雰囲気を醸し出していた。


「あのー、何故ここに?」


 自己紹介を終えたダルバに対し、1人の女子が話しかける。


「いや、本当は昼頃に召集を掛けて、その時に紹介に預かる予定だったんだが、既に全員集まってるし丁度いいや、と思って来た。邪魔したか?」


 ハッハッハッ!!と軽快に笑いながらそう言った彼は次にこんな事を言い出した。


「演説の通り、人族の中で魔族にステータスで拮抗出来るのは俺を含み数名しかいない。その上邪神の加護までありやがる。だから今回の戦いは圧倒的に不利な戦いだったんだ。だから、お前たち勇者が俺たちの国の為に戦ってくれるのは非常に有難い。

 昨日の夜のうちに全員のステータスを聞いたが、どいつもこいつもまだLv1にもかかわらずとんでもないステータスだ。俺は未来の英雄の指導者になれることを誇りに思うぜ」


 大きな声でそう言い放った彼には、まるで憂が無く、とても嬉しそうだった。

 話ぶりから察するに、こいつには魔族の現状などまるで知らないようだ。騎士団長が知らないとなると、他の騎士や兵士たちも知らないだろう。


 思考をまとめていると話が進み、どうやらみんなのやる気がある今のうちに、武器選びから使い方までの訓練を今からやるようだ。

 俺たちの服装は未だ学生服なのでダルバから動きやすい服を受け取り、更衣室にいく。


 しかしそこで騒ぎが起きる。


「玲!なんだそれは!」


 これまでのざわついていた声がその叫びにより鎮火される。なんだなんだとその場にいた全員の視線が名前を叫ばれた俺に集まるが、俺を見るなり空気が変わる。

 俺に何かついてるか?と思い身体を見るが、()()()()()は感じない。

 俺が首を傾げていると、声の主である信二が珍しく苛立ちながら言う。


「その傷だよ!どうしたんだ!」


 言われてみて初めて気付く。確かに俺の身体には様々な傷が付いていた。目立たないように腹部と背中に集中してつけられていた傷だか、その中でも点のような火傷跡と殴打で出来たであろうあざが多くを占めていた。

 周りが答えを求めるなか、俺の思考は別の所にあった。


 あまりにも自分の体に馴染んでいたから気がつかなかったが、確かにおかしい。

 自分の傷を確認し、点のような火傷跡がタバコによるものだと判断する。つまり俺は虐待にあっていた訳だ。

 これが俺が人を憎む理由かと目星をつけるものの、記憶の戻る感覚が無い。

 それはこの虐待が俺の人を憎む理由では無い事の証明か、もしくは…


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()


 の2つに分かれる。前者ならば辻褄は合う。後者だとしても多少無理があるが辻褄は合う。

 俺が日常的に虐待を受け、その生活しか知らないのならば、虐待は俺にとっての当たり前の行為だ。それならば虐待を疑問に思わずに、受け入れることだろう。人を憎む理由にはなり得ない。


「おい!聞こえてるか!」


 そろそろ信二が煩くなって来たので無難に答える。


「ああ、この傷は子供の頃につけられてな。今はもうなんとも無いよ」


 いつものように笑顔を作って答える。


「本当か?相談には乗るぞ?」


 少し震えたその声を適当に受け流し、着替える。


「本当に大丈夫だ。けれどもこの事についてはあまり触れないでくれ。」


 記憶が無い中、憶測だけで言うのは危ない。

 この傷は俺のトラウマだと主張し、会話自体が上がらなくなるようにする。


 先に行くぞ。と言い俺は更衣室を出て行く。

今回はちゃんとこたつからの投稿です。猟犬です。

今回もこのような駄作に付き合ってもらいありがとうございます。

前日のカラオケのせいで声が出なかったため、引きこもってこたつを背負い、トイレに行く時以外は出ないので深刻なカタツムリ化に悩まされています。

明日も投稿する予定なので引き続き見てもらえると幸いです。

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