40.腐った鎧武者
今回は少々短いけど仕方ないよね!ストーリー上必要な話だし、他の話に入れるわけにもいかないからね!
次はそれなりに長めの予定なので許してください。
ここは暗き濁った空間。
様々な人々の憎しみ、悲しみを始めとした負の感情が信仰という形をとって、押し付けられるクソッタレな場所。
そこに慈悲は無く、存在する者も邪神のみ。もしここに迷い込む生物がいれば特定のものを除き、この悪意のみの空間の洗礼を受けた上で、ここの主の刑罰を受けることになるだろう。
そんな空間に客人が1人。
「相変わらず最悪な場所ね。貴方自身も醜くて嫌になっちゃうわ」
客人の名は女神リオル・イクセ。勇者を送り込んだ者だ。
「わざわざ女神様が何の用だ。此処には貴様のお気に召す物は何一つないだろう」
対するは異形の化け物。邪神プルトリファ。
元々勇者になるはずだった飢賀 玲を横から奪い取り、邪神の眷属として送り込んだ存在。
「あら、意外と自己評価が低いのね。私は貴方の存在の消滅には興味があるわよ。姉さんの仇としてね」
「悪いがまだ消える訳にはいかないのでね。いくら興味があっても遠慮してもらおうか」
皮肉の応酬。この2人は出会うたびに常に行われている挨拶のようなものだ。度々出会うこの2人にとっては些細なことで、恨み言を言われようが気に止めるほどのものではない。
「今回の要件は違うわ。寿命が延びて良かったわね。私が言いたいのは貴方の眷属についてよ。よくも私から掠め取ってくれたわね。一体どんな手品を使ったのかしら?」
女神リオルから感じられるのは怒り。
自分の勇者を邪神如きに奪われたプライドの損傷から来るものだ。先程寿命が延びた、と彼女は言ったが返答によってはその寿命は一瞬で尽きることだろう。
「いいのか?私を消せばこの空間が消えるぞ」
これは強制力の無い脅し。
この空間は人々の不満の集まるゴミ捨て場のような場所。そこが消えるとなれば此処にある濁りは女神リオルの空間や下の世界に天災として降り注ぐ。
それは女神リオルもあまり臨むものではない。
「質問に答えなさい。貴方はどうやって私の勇者を奪ったの?そして何を企んでいるの?」
本来ならばどちらも答えたくはない。しかしそれでは女神リオルは引かない。何か少しでも情報を出さなければならない。
「後者は答えてもいいが、悪いが前者には答えられないな」
「…………仕方ない、今はそれで妥協してあげるわ」
女神リオルは大人しく引き下がる。意地でも目的の情報を渡さないその姿勢に呆れたのもあるが、何か良くないものが来る。急がなくては。
そして焦る反対に邪神プルトリファは興奮して、歓喜に震えていた。
この邪神の正体は女神リオルの姉であるファルなのだ。わざわざ正体がバレないように姿を異形に変化させ、口調まで変えた。
ああ、怒った顔も可愛らしかったけど呆れた顔も哀愁があっていいわね。やっぱり私の妹は世界で一番可愛いわ。
「私の目的は────」
プルトリファが質問に答えようとしたその瞬間ソレが現れた。
空間の隙間、鋭角から黒い煙を噴き出しながら全身を黒い甲殻に覆われた人型の魔物。腐鬼だ。
腐鬼は全身から強い腐敗臭を撒き散らしながら一直線にプルトリファに向かい、強烈な横蹴りを放つ。
プルトリファはその一撃を腕で受け止め、後ろに飛ぶことで距離を取る。
「何よあれ!答えなさい!!」
一連の様子を横で見ていた女神リオルは叫ぶしか無かった。本来ならこの場に魔物なんて現れるはずが無いからだ。
「あれは時間と空間を自由に行き来する単一個体の魔物だ。私は腐鬼と呼んでいる」
殺意溢れる乱入者は今にも此処を破壊の限りを尽くすだろう。そうした場合、話を聞くことすら出来ない。
「癪だけど協力してあげるわ。貴方の目的もさっさと聞きたいことだしね」
久々の妹と共・同・作・業!!プルトリファは心の中で叫ぶ。しかし大事な妹に傷付いて欲しい訳ではないので、こいつの脅威をしっかりと伝える。
「前回は追い払うのに丸一日かかった。危険になれば勝手に逃げるだろうから何とかしてそこまで追い詰めるぞ」
「はあ!?丸一日!?……くそ!こいつ本当に魔物なの?」
実際は魔物かそうではないのかは関係ない。こいつは敵で倒さねばならないもの、ただそれだけだ。
女神リオルは光の槍を作り展開する。
邪神プルトリファは更に体を変質させ、鋭い爪を生やす。
今、長い戦いが始まる──




