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虚ろな忌み子の殺人衝動  作者: 猟犬
第4章 タイムレスデザート
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39.ドキ☆はらはらクッキング!〜Gを切り刻んで〜

ポロリは無いです。

期待した人は残念でした。

「玲!あれだ!あの腐食鬼(グール)がいっぱい出てくるやつ!」


 異形の右手に座る形となったシェルが後ろを見て叫ぶ。

 強化された俊敏をフルに活用して走っているはずだが、流石はG。距離は開きつつあるも、難なくついてくる。


「残念ながら禁術は無しだ!代償で足でも吹っ飛べは即ゲームオーバーだからな!」


 存在する禁術自体は、ほとんど使えるまでに至ったが、代償を何処から支払わせるか分からない。頭や足、シェルの乗っている右手が代償に持って行かれればどっちかは死ぬ。

 街道に出ればまだ何とかなる。人通りもあるだろうし、障害物の無くなる直線だ。シェルの魔法で焼き払える。


「シェル!魔法の準備をしておけ!もうすぐで街道に出る!」

「…………魔法が使えない」

「は!?」


 シェルは申し訳なさそうに伝える。


「あのNikujagaを食べてから、とんでもない数の状態異常が付与されて魔法が全く使えない!」

「仮にも魔王だろ!何とかならんのか!」

「仮にも魔王だ、数々の耐性を持ってたさ!それを全て無視したNikujagaがおかしいんだ!お前の故郷はおかしいぞ、あんな物が人気料理なのか!?」


 そんなやり取りをしているうちに街道に出る。

 根本的な解決にはならないが、障害物が無くなったため、速度を上げる。


 そしてそのまま解決策のないまま、周りの空間が割れるように元に戻ってしまう。


「ここからは自分で走れ!幸い距離は稼いだ」

「勿論だ!アイツらに潰されて死ぬのは嫌だ!」



 そして冒頭に戻る



「クソッ!にしても何で状態異常が付与された!」

「私は……んっ、あんな物を料理とは認めんぞ!」

「まるで俺の料理が不味いみたいな言い方は止めろ!気絶する料理よりかはマシだ!」

「それでも不味かった!私の言うことを1つ聞いてもらうぞ、い・い・な!!」


 誠に遺憾だが失敗した自覚はある。俺は問題なく食えたが、上品なシェルの舌には合わなかったのだろう。やっぱり塩が多かったのか、次は気をつけよう。


「仕方がない、それは謹んで受け入れよう。けれどこの状態はどうする!?」


 約束は受け入れるが、この状況を打破しないことには無効だ。

 背後には未だにGが大量に追いかけてきている。全く執念深くて嫌になる。


「見たところアイツらにはリーダーがいる頭を潰せば何とかなるかもしれん!」

「成る程な。それで、どうやってリーダーを潰す!?」

「私が玲をあれに向かってぶん投げる。そしてお前が囮になっている間にいっ……!──私が仕留める。どうだ!?」

「俺が囮になる以外は素晴らしい案だな!Gに潰される時に手を振ってやるよ!」


 しかし他に案が出てこないのも確か。弱体化しているとは言え、Gの1匹シェルならば仕留めるのも余裕だろう。


「…………よし、乗った!武器は何か必要か!?」

「ひゃうっ……正気か!?冗談のつもりだったんだが?」

「十分正気だ!それよりさっきから変な声出して何がしたいんだ!?」


 よく見てみればシェルの目は涙で潤み、その褐色の頬はほんのり紅葉している。さらに妙に内股で、走るのも辛そうだ。


「服が擦れて気になるだけだ!

 急に話が変わるが、Nikujagaの隠し味は卵以外に何を入れた?」

「リンゴに蜂蜜、ビンビンタケだ!」

「な……!んっ、び、ビンビンタケをい、入れたのか!?」


 シェルは余計に頬を染め、驚愕する。


「ああ、商人に勧められてな」

「道理で発情期でもないのに…………」


 何かボソボソと言っているが、声が小さくて良く聞こえない。しかしこの状況を打破する新たな策とは思えないので、無視する。


「それで!やるのかやらないのか!!」

「ああ、やる!ぶん投げる!お前を地の果てまでぶん投げる!!」

「その意気──うおっ!!」


 シェルは既に玲の襟首を掴んでおり、水切りのように地面と平行にぶん投げる。

 そして強烈な回転が加わりながら、まるでボウリングのようにGどもを蹴散らす。

 しかし蹴散らして出来たスペースもすぐに周りのGに飲まれ、玲共々黒の中に消えてゆく。


「さあ、八つ当たりの時間だ!」


 シェルは自分の異空庫から武器を取り出す。

 それは歪なメリケンサック。花弁のように爪が生えており、花の中には深い青の宝石、グリップには2種類の黒と青のレバーがある。


 それを自身の拳に付けたシェルはGの群れに標準を合わせて青のレバーを引く。

 魔法は使えないが、魔力は有り余っている。

 花弁はより開き、内側にある宝石が魔力を使用者から吸い上げる。

 チャージが終わり、宝石からレーザーが放たれた。

 それはGを焼き払い、あたりを死骸で埋め尽くしていく。


 シェルはそのまま死骸の海に突っ込む。

 生き残ったGはフェロモンを発する玲ではなく、仲間を殺したシェルに向かって集まってくる。


 1匹のGが頭から飛びかかった。

 シェルはそれを正面から殴る。


 Gはメリケンサックの爪に切り裂かれながら、頭から潰れていくが、それで終わりではない。

 シェルは黒のレバーを引く。

 その瞬間花弁が高速で閉じ、目の前のGは無残な微塵切りになる。


 背後からもGは向かってくるが、それは回し蹴りで吹き飛ばす。


 その様子はまるで妖艶なカマキリ。

 獲物を見つけその鎌で全てを切り裂く。

 そう彼女は最強生物である魔族の頂点に君臨する魔王。この世界で彼女を超える存在は無い。

 いくら弱体化していようと多少の隙があれば、たかが虫、障害にすらならない。


 程なくして生き残っていま全てのGが切り裂かれ、その命を終える。


「おーおー、見事なお手前で」


 玲がハルバードにもたれながら奥から出てくる。

 パチパチと拍手までして。


「なんだ無事だったのか」

「ああ、投げられた後、そのままGの群れを突き抜けてな。背後からGを始末してた」


 玲はGを文字通り体を使って倒したからか、身体中がGの体液でベトベトだ。


「それにしても腹が減った」

「なあ、知ってるか?Gは海老みたいな味がするって」


 玲は比較的原型を留めているGを持ち上げて言う。


「なんで今それを言った?なあ、なんでだ?」

「冗談だ。それよりも川を見つけた体を洗いに行こう」

「そうだな私も体を洗って着替えたい」


 2人ともGの体液でベタベタだ、不快極まりない。

 シェルも同意したため、とっとと向かおう。





 □





 街道から逸れた森の中、紅く染まった夕暮れの涼しさに鳥が気持ち良さそうに鳴いている。

 そんな中、2人は背中合わせの状態で川に浸かっていた。


「ぜっっったいに振り向くなよ!絶対だからな!」

「振り向かねーよ。それより執事服はどうやって洗うんだ?適当に水で洗えばいいのか?」

「大まかに体液を流せば良い。細かい手入れは私がやる」


 こんな状況になったのは原因がある。

 あまりの異臭と不快感から互いに先に川に入ると言って聞かなかったのだ。最終的に組み付きの喧嘩になり、2人同時に川に落ちた時、どうでもよくなってこうなった。


 にしても視線を感じる。

 振り向くなとか言いながら、向こうは見てきてるのが丸わかりだ。

 そんな時向こう側から話しかけていた。


「なあ、これからどうするんだ?」

「これからか……候補としてはドワーフの町か、首都だな」

「首都は人属のか?」

「ああ、勇者の血と情報が欲しい。特に血は絶対必要だからな。それに面白い事も起きているらしい」


 玲の顔は大きく歪み、狂気的な笑みを浮かべる。それを見たシェルは、なんとなく察して詳しくは聞かない。


「ドワーフの町はどうしてだ?」

「俺の使っているハルバードについて調べたくてな。確かドワーフは鍛治に精通していて武器なんかに詳しいだろ?」

「あの重い変なハルバードか」

「俺にとっては軽い変なハルバードだ」

「なら私は首都に行きたいな。一度勇者の顔を拝んでおきたい」

「成る程な、1人は襲うつもりだからその時に恨みを晴らしたらどうだ?」

「そうだな、是非そうさせてもらおう」


 これからの方針も決まり、お互い無言で服と体を洗う。ジャブジャブと音が響き、日が沈みゆく。もうすぐ夜だ。


「よし、私は終わったぞ」

「俺もこれで終わりだな。後は頼んだ」


 玲は執事服をシェルに投げ渡す。


「任された。私は先に上がるから少し後に出て来てくれ」

「了解だ」


 折角だからこの待っている時間にハルバードを洗う。淡い光を放つ美しいハルバードだが、それもGの羽根や甲殻が張り付き目も当てられない状況だ。


 一通り洗ったら川から上がる。

 上がるとシェルは火を焚いており、服を乾かしていた。


「俺の服は?」

「あるが着なくていいぞ」

「は?何でだ?」

「なんでも言うことを聞く」


 成る程、もう使うのか。てっきり取っておくかと思っていたから予想外だった。


「それで?俺は何をすればいい」

「そのまま寝ろ」


 流石に意味が分からない。


「いいから寝るんだ。大丈夫、空の星を数えている間に終わる」

「待て!お前寝ている俺に何をする気だ!」

「いいから早く!」


 シェルに押し倒され、馬乗りにされる。その目は熱に浮かされ正気の目をしていない。

 おれ、しってる、これ、へんたいの、め


「私はあのNikujagaを食べてから身体の火照りが止まらないんだ。お前にはそれを鎮める義務がある」

「本当に意味が分からんぞ!────今すぐその詠唱を辞めろぉ!!」


 いきなり詠唱を始めたシェルはそれでも玲にマウントを取り続け、時間を稼ぐ。


「このっ!この手をどけろ!──がはっ!」


 シェルの魔法を食らって玲は気絶する。

 長い夜はまだまだ始まったばかりだ。































 そこからは何をされたかは知らない。

 ただ翌朝。

 隣に半裸のシェルが横になっている事と、寝ていたのにやけに怠い身体だけが印象に強く残った。

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