表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚ろな忌み子の殺人衝動  作者: 猟犬
第3章 多重猟奇殺人
29/46

28.宿屋の一幕

 ギルドを後にした2人は宿に行く。殺人事件の犯行は夜に起きると言う。そのため、ここで取る宿は奴等の囮にする。

 2人は宿屋に入り、玲が宿の女店主に手短に要件を伝えていく。


「一部屋借りたい。寝る事が出来る環境があればいいから食事を含めたサービスは全ていらない。代わりに多めに出すから人払いを頼む」


「「「「「は!?」」」」」


 シェル含めた宿屋のロビーにいた玲以外の人物から声が上がる。それはしきりにこちらを見てヒソヒソと噂しているようだった。


「お、お二人様で一部屋ですね……で、では!ごゆっくりどうぞ!」


 宿の女店主は顔を赤らめ、気まずそうにそう言う。


「お、おおおおおお前は何を言っているんだ!?何を言っているんだ!私達はそういう関係じゃないだろ!?」


 シェルその褐色の肌を赤く染めて、大声で叫びならが玲に詰め寄る。が、玲は意味がわからないといった顔で無視して店主に案内を頼む。


「店主。取り敢えず部屋に案内して欲しいのだが」

「は、はい!そうですね!それは問題無いですけど。彼女さんは大丈夫ですか?」

「ええ、妹は大丈夫ですよ」

「へ?妹?…………こ、これは失礼しました!すぐに部屋に案内します!」


 玲の妹発言により、宿屋の騒ぎはある程度落ち着きを見せる。それでもまだ噂されているが比較的マシだろう。


 店主に案内をしてもらい、2人は部屋に入る。

 シェルは「妹……妹になるぐらいなら彼女の方が……」と呟きながら、打ちひしがれている。


「落ち込んでいるところ悪いが、何故俺の心を読まなかった?読めばお前まで騒ぐ事は無かっただろうに」


 シェルは顔を俯いたまま、声だけで返事する。


「……私の心を読む事が出来るのはスキルによるものだ。『ムンリード』月の満ち欠けで読める回数が変わる。今日は弓張り月、4回だけ読める」

「それを全て使ったと」

「門番と玲、そしてギルドの2人に使った」

「俺に使った分以外は妥当だな。ちなみに1番多く心を読めるのはいつで何回だ?」

「満月で7回。新月で0回だ」


 シェルは最高回数の他にも最低回数も教えてくれる。確かにありがたいが、そこまでは聞き出せないと思っていた。未だにシェルの謎の信頼感は分からない。ただただ気持ちが悪いだけだ。


「まあいい、今後の予定を話す。取り敢えずシェル。お前は天井に貼り付けるか?」

「は?」


 そこには素っ頓狂な声が良く響いた。





 □





「ドロシー姉さん。あの仮面の男の人本当にそうなの?」

「うん、よく見てみればリリもわかるよ」


 深夜、蝶の髪飾りを付けた双子はある宿に向かって歩いていた。


「とは言っても男の人は殺すのは初めてで少し心配だな」

「何行ってるの!ドロシー姉さんが言い出した事じゃん!」

「う、うん。そうだね。ごめんねリリ」


 2人は寝静まった宿屋に上がり込み、標的の部屋に向かう。場所は昼間、あとをつけた際に判明している。


「それじゃあ行くよ、ドロシー姉さん」

「うん、リリ」


 2人は音を立てないように、それでいて大胆に扉を開ける。しかしそこには……


「誰も居ないじゃん、ドロシー姉さん本当にこの部屋?」

「間違ってないと思うけど……そう言われると心配になってきちゃったよ……」


 ドロシーはリリに指摘され、うなだれて落ち込む。



 バンっ!



 双子でそんなやりとりをしている間に、後ろから扉の閉まる音が鳴る。


「「誰!」」


 ドロシーとリリはすぐに振り向き、相手の姿を確認する。

 そこに居たのは褐色肌で銀髪の少女だった。

 だが、少女の姿を確認してすぐ、窓から何かが這い上がってくる。


「会いたかったぜ!噂の殺人鬼さんよぉ!」


 そして現れたのは、ドロシーの言っていた例の仮面の男だった。


「ブーメラン」「刺さってますよ」


 双子はそんな皮肉を言いつつも挟み撃ちされたことに、内心焦っていた。


「さあ、楽しい会話をしようか!」


 男は歪んだ笑顔で楽しそうにそう言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ