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虚ろな忌み子の殺人衝動  作者: 猟犬
第2章 逃亡地にて
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追憶の記憶 狂気との出会い

この話は読まなくても本編は楽しめます。

しかし読めばより理解が深められると思います。

 そいつと出会ったのは魔族と人族の戦争の時だった。

 伊藤 信二、式織 楓、志戸部 菊、飢賀 玲。

 この4人で城に攻め込まれた時は死んだと思った。だが、伊藤 信二が魔族の少なさに不審に思い、事情を聞いて来た。

 だから私は話してやった。蔓延る疫病、内戦により激減した魔族。それを聞いた勇者の3人は悲しい顔をし、酷く驚いていた。

 だが飢賀 玲。こいつはどこかおかしかった。表面上驚いているが、心を読める私には関係が無い。こいつは全く驚いてない。しかも心の中で何かと会話している。私はこいつが情報操作をし、勇者を騙した人物として疑う。

 勇者と魔王の会合の結果、勇者のうち2人が人族領土に戻り、国王に問いただすようで、2人が場に残るそうだ。

 残る事になったのは志戸部 菊と飢賀 玲で、私はチャンスだと思った。そしていつ戦う事になってもいいように装備を整え、月明かりのある夜に部屋に呼び出し奴に詰め寄る。


「飢賀 玲、貴様は何者だ!勇者を裏から操って何を企んでいる!」


 そう問われた飢賀 玲は笑みを浮かべ


「俺は勇者など操ってないさ。ただ他の奴らより情報を持っているだけでな」

「ならば貴様の心の中で会話している奴は何者だ」

「それは俺にも知らない。疑わしいとは思っているがな」


(邪神か女神かで悩んでいるが、確定出来る情報が無い)


 心を読んだ結果、飢賀 玲は心の中声を邪神か女神のどちらかで悩んでいるようだ。神の声が聞こえている事に驚くが、より深く飢賀 玲の事を知ろうとして、心の奥まで覗く。

 そして見てしまう。彼の内側にある感情。




 死、殺す、憎い、痛い、殺す、視線、否定、痛い、殺す、憎い、憎い、死、暗い、生臭い、血、犬、押入れ、火傷、殺す、ティンダロス、殺す、痛い、空腹、死、痛い、憎い、殺す、死にたくない、痛い、視線、死にたくない、火傷、殺す、血、生臭い、憎い、暗い、犬、痛い、殺す、憎い、死、生きたい、狭い、打撲、火傷、痛い、死にたくない、空腹、視線、鋭角、殺す、憎い、血、憎い、痛い、打撲、死、空腹、暗い、視線、否定、ティンダロス、犬、死にたい、殺す、憎い、痛い、痛い、痛い、痛い。


 死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない……


 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す




 飢賀 玲の心はあまりにも不快で痛ましく、そして狂気に満ちていた。


「一つ聞くが貴様、過去に何があった」

「残念ながら俺には記憶が無い。思い出したいとは思っているんだがな」


 嘘は言ってない。だが腑に落ちない。


「貴様は歪だ、人をとても憎んでいる。なのに何故貴様は、勇者として人族を守っている」


 そう問うと飢賀 玲は


「もちろん、目的があってやっている。勇者を今も続けているのは魔王に用があったからだ」

「私に用だと?」

「ああ、結論から言うとある儀式をするためにお前の血が欲しい」


 そして私はすぐに逃げる。これは心を読まなくても分かった。私がチャンスだと思っていたのと同じように、飢賀 玲もチャンスだと考えていたのだ。

 だが、勇者相手に狭い部屋で逃げられるわけもなく、すぐに捕まる。


「なに別に殺して血を抜くわけじゃない。少し分けて貰えればいい」


 吸血種である私が血を抜かれるのは屈辱的で激しく抵抗する。


「離せ!変態!変態!この()()()()!」


 動かすことの出来ない腕の代わりに必死に口で歯向かう。そう叫んだ瞬間力が弱まり、抜け出せる。私はすぐに抜け出し、その目を覗いてしまう。

 その目は深淵のように暗く暗く、狂気の目で覗き返される。それは狂気の他に痛ましさを感じさせ、見る者が見れば恐怖意外にも同情が誘える目だ。

 しかし、私はその目が怖くて怖くて怖くて。ただひたすらに怯えるしかなかった。

 腰を抜かし、部屋の隅で縮こまり自分の股を濡らすしか無かった。


「訂正してもらおうか。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。はは、ハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」


 その狂気の笑いに私は何も出来ずにただただ、ひたすらに謝っていた。





 □





 あの夜から数日経った日。人族からの猛攻撃が始まった。まだ2人の勇者が居るにも関わらず。

 実質的な統治者であるロードに告げられ勇者の2人と魔族領土から逃げる事になった。だが私は飢賀 玲が怖くて志戸部 菊とばかり話した。

 だが飢賀 玲は先日の事を覚えていなかった。

 あの狂人は一体何だったのか。私は今でもわからない。

 ただ奴は気配りをしながら逃走ルートを形成している。こうして見ると普通の男だ。

 私たち3人は飢賀 玲の先導の元、人族領土に逃走するのだった。

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