表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚ろな忌み子の殺人衝動  作者: 猟犬
第2章 逃亡地にて
24/46

24.夜明の会合

 戦争当日、玲は戦いの喧騒により目覚める。既に日は高く、いかに長い間寝ていたのかが分かる。


「……急いで準備するか」


 既に諦めている玲はそう呟いた。





 □





 時は遡り、早朝。

 玲は魔の朝食を回避する為に、早起きをする。これまでの事から、(シェル)が来る前に起きて逃げ出すのが1番確実だったからだ。

 部屋から出て廊下を歩き、厨房に行こうとする。しかし、此処で問題が起こる。


「む?いた。部屋にいないから探したぞ。こんな早朝に何か用事でも?」


 ロードだ。まさか彼に話し掛けられるととは思わず、驚く。


「少し気分が高揚してまして、風に当たろうかと」

「嘘は言わなくても良い。貴様の正体などとっくの前から気が付いておる」

「…………何の用だ」


 ロードは少し悲しそうに言葉を並べていく。


「クーリエから話は聞いた。娘を頼む」


 一瞬このおっさんが何を言っているか分からなかった。

 は?娘?誰が?誰の?


「驚くのは無理が無い。シェシルが生まれる前に私は家を出たのだからな。娘自身も知らない。

 だからこそ娘が魔王に選ばれた時私は全力で反対した。父親としては失格だが、それでも娘を魔王という激務に置きたくなかったのだ」


 その結果が国の内乱で魔族の滅亡か。俺は親の記憶が無いから、何一つ理解出来ないが滑稽だな。


「一つ聞くが、何故家を出た?」

「私はもともと学者でな…ある遺跡に封印された邪神が目覚める寸前だと分かったのだ。それを止める為に家を出た。だが、結果は悲惨だった。何も出来なかったよ」


 邪神か……おそらくプルトリファの事だろう。

 一応本人に確認を取る。


 〈プルトリファ。この話は本当か〉


 すると彼女は焦った様子で


 〈まずい!それは私じゃない!私が封印した本物の邪神プルトリファだ!〉


 おっと厄介になってきた。一度話を整理しよう。

 女神ファル・イクセは、伝承と違い、本物の邪神に負けてなどおらず、封印する事に成功。

 しかし、なんらかの影響で邪神プルトリファになってしまい、妹のリオル・イクセに殺されてしまう。

 そして今封印した筈の本物の邪神が目覚めようとしていると。

 邪神を自称している者が2人もいるのだ。こんがらがってもおかしくない。

 玲は取り敢えず目の前にいるローブに答える


「少なくとも一人で生活が出来るようになるまでは、面倒を見ましょう」

「ああ、本当に助かる」


 安心したようにロードはそう言い残し、その場を去る。

 廊下にいると鉢合わせの可能性が高いのですぐに移動する。


 カツ…カツ…カツ…


 足音が聴こえて来る。音が軽い事から、少女のものと分かる。立ち話が過ぎたか。退路を確認する。

 ロードの向かった方向に進めば、あらぬ誤解を受ける可能性がある却下だ。

 近くの部屋は……鍵が掛かっている。

 ならば窓!


 ガタ!ガタ!


 ガタ!ガタ!


 ガタガタガタ…………パリーン!





 まさかこの窓もはめ殺しだとは、窓を割る為に音を出してしまった。位置がバレてしまう。

 聴こえる足音もテンポが速くなり、走っている事が分かる。

 やばい(シェル)がくる。


 ガシ


 肩を掴まれる。諦めてたまるか!

 玲はすぐに振り払おうとし、その人物の顔を見る。


「なんだ、クーリエか。離してくれ。急いでるんだ」

「盗みは見逃しますけど、器物破損は見過ごせませんね」


 とても残念そうにクーリエは言う。

 そして(シェル)が追いついてしまった。


「お嬢様。玲様はお嬢様の手料理をたらふく食べたいそうです」


 玲は諦めた。





 □





 時は戻り、玲は前日に用意した黒塗りの仮面を付けて、魔族の街を隠れながら進む。

 シェルとの合流場所はいつも狩をしていた森だ。そこならば人も来ず、逃げるのも容易いからだ。

 玲は人を殺す為兵士を探す。

 そして見つけたのは勇者達。全員で陣を組んでおり、魔族と交戦中だ。

 魔族は押され、1人、また1人ずつ死んでゆく。周りを見るも、他の兵の姿は無い。気絶していた所為で時間も少ない。玲は自身の欲望を満たす為、勇者達に近づく。

 街中で戦っている為、障害物は多い。

 屋根を登り、体を変化させる。





「グォォォォォアァァァァァァァァァァ」





 そしてその腐った声帯で遠吠えを上げた。

 汚らしく、化け物のように

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ