22.魔物狩り
翌朝、目が覚めると部屋の机に、朝食が届いていた。蓋を開けると、巨大なフナムシのようなものが皿の上に居た。しかもまだ動いているおまけ付きだ。
俺はこれが朝食だとは認めない。至急、厨房を探そう。料理は出来ないが、これを食べるよりマシだ。
そう考えていると扉が開き
「お、起きたか」
不味い、諸悪の根源が来た。逃走経路の確保が最優先だ。
出入り口は塞がれているため、窓から逃げる。ここは3階だが、フナムシより飛び降りる方がマシだ。
ガッ
ガッ!ガッ!
ガッ!ガッ!ガンッ!!
何と窓は、はめ殺しだった。開けれない。
玲はすぐに『異空庫』から、昨日のハルバードを取り出そうとする。窓を割るためだ。
だが狭い部屋で急に逃げ出そうとする男を逃がすわけもなく、すぐに捕まる。
「レディの料理を食べないとは、男としてみっともないな」
あれは料理じゃない。言い切れる、あれはフナムシを焼いただけだ。
次の瞬間、自分の顔面と皿の圧力でフナムシが
ブチュ
と、嫌な音を立てて潰れる。
前日のように皿ごと叩き付けられたのだろう。
玲は本当にこんなので血が変わるのかと、疑問を抱きつつ気絶する。
□
目が覚めると、部屋にはシェルが当然のように居座っている。
わざわざ呼びに行かなくてもいいが……
おい魔王、仕事はどうした。
「今日はどうするのだ?」
シェルが聞いてくる。
「今日は魔物狩りだ。レベルを上げる」
「ふむ、昨日と同じ場所か?」
玲は準備をしながら、無言で頷く。
率先して魔物を狩るのは初めてなので、装備は入念に行う。
とは言ってもそこまで物が必要というわけでもない、どうせ『反魂の狂乱』で意味が無くなる。精々、投げナイフや短剣を数本持って行く程度だ。
本日も朝食のせいで出発が遅れたため、急いで移動する。その途中で街中を通るが、昨日と様子が違う。活気がある。
人は限りなく少ないが、お祭り騒ぎのようだ。
「シェルこれはどうした」
「ああ、この騒ぎか。ロード…魔王反対派のリーダーが勇者のことを話したんだ。
そしたらこの有様だ。戦う前に、騒ぎたいんだと。勇者が来るのは、まだ先だと言うのにな」
まあ魔王を最も力のある者にするほどの戦闘民族だしな納得する。これだけ士気が高いなら逃走にも役にたつだろう。
玲たち2人はその騒ぎの中を突っ切って街の外に出る。
□
昨日と同じ場所に着き、『反魂の狂乱』を使う。変化が終わり、魔物を探す。シェルはついてこないようだ。
そして見つけた片っ端から異形の手で潰して行く。
牛のような魔物
人型の魔物
トカゲのような魔物
何十体も倒したあたりでステータスを開く
飢gg@ガガガ rrレイ
Lv1
HP ──
MP520/520
筋力:STR 240(+999999)
敏捷:DEX 300(+999999)
体力:CON ──
◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️
648/3600
スキル
異空庫、言語翻訳、禁忌の書、反魂の狂乱
魔法
冥王の腐門(禁術)、ブラッディスワンプ(禁術)
称号
邪神プルトリファの加護、冥王(小)
増えてない。全く増えてない。
理由が分からない。
〈レベルが一切上がらないのだが?〉
困った時のプルトリファに聞く。
〈その体は作り物だぞ〉
そう言うことか。この体は作り物が故に、経験値が入らないのか。
時間が無駄になった。
十分の残り時間を特に何もしないで過ごし、元に戻ってから魔物を探す。
見つけたのは先程も見つけた牛のような魔物。手持ちの武器で明らかに強いだろうハルバードを取り出し、叩き潰す。
グシャリ
と音を立てて、魔物は潰れ、頭に軽快な音が響く。
そこまで力を入れてはいないのに、ここまで潰れると、このハルバードの効果だろう。
しかし、このハルバードも色々おかしい、俺が持っている感覚だと、とても軽い、しかし相手を見ると圧倒的な重さで潰れた感じだ。
あとでシェルに放り投げて検証しよう。玲はレベルの確認のため、ステータスを開く。
飢賀 玲
Lv4
HP1000/1060
MP520/520
筋力:STR 262
敏捷:DEX 310
体力:CON 306
精神:POW 0
スキル
異空庫、言語翻訳、禁忌の書、反魂の狂乱
魔法
冥王の腐門(禁術)、ブラッディスワンプ(禁術)
称号
邪神プルトリファの加護、冥王(小)
上がっている。しかもそれなりに効率もいい。さっきの時間が、なおのこと惜しい。
しかし、MPが1つも上がっていないのは困る。POWが0なのと何か関係があるのだろうか?
禁術を使う以上、MPは大量に欲しいが……
それでもこのまま狩を続ければ増えるだろう。
玲はそう楽観視して、狩を続けた。
□
日が暮れるまで、狩を続けた結果
飢賀 玲
Lv17
HP1000/1200
MP520/520
筋力:STR 304
敏捷:DEX 370
体力:CON 343
精神:POW 0
スキル
異空庫、言語翻訳、禁忌の書、反魂の狂乱
魔法
冥王の腐門(禁術)、ブラッディスワンプ(禁術)
称号
邪神プルトリファの加護、冥王(小)
MPとPOWは1つも増えなかった。
MPが増えない以上、禁術を無闇に試しても効率が悪い、もとより性能のいい『冥王の腐門』などを積極的に使うのがいいだろう。
玲はシェルの元に戻る。
「大分遅かったな」
「シェル。ほれ」
掛けられた言葉を無視して、シェルに向かってハルバードを放り投げる。
「は?ぐっ!」
上手くキャッチしたシェルはハルバードの重さに前屈みになる。
「なんだこれは?」
「検証」
玲は一言で済ませ、ハルバードを片手でとる。
シェルからしたら、とんでもなく重い物を片手で持ち上げている玲を不審に思い、ジッと見て来る。
「さて、戻るか」
「待て!今の行為を説明しろ!!」
「……」
無視して進む。
「待て!」
2人は鬼ごっこをしながら城まで戻った。




