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虚ろな忌み子の殺人衝動  作者: 猟犬
第2章 逃亡地にて
22/46

22.魔物狩り

 翌朝、目が覚めると部屋の机に、朝食が届いていた。蓋を開けると、巨大なフナムシのようなものが皿の上に居た。しかもまだ動いているおまけ付きだ。

 俺はこれが朝食だとは認めない。至急、厨房を探そう。料理は出来ないが、これを食べるよりマシだ。

 そう考えていると扉が開き


「お、起きたか」


 不味い、諸悪の根源が来た。逃走経路の確保が最優先だ。

 出入り口は塞がれているため、窓から逃げる。ここは3階だが、フナムシより飛び降りる方がマシだ。


 ガッ


 ガッ!ガッ!


 ガッ!ガッ!ガンッ!!


 何と窓は、はめ殺しだった。開けれない。

 玲はすぐに『異空庫』から、昨日のハルバードを取り出そうとする。窓を割るためだ。

 だが狭い部屋で急に逃げ出そうとする男を逃がすわけもなく、すぐに捕まる。


「レディの料理を食べないとは、男としてみっともないな」


 あれは料理じゃない。言い切れる、あれはフナムシを焼いただけだ。

 次の瞬間、自分の顔面と皿の圧力でフナムシが


 ブチュ


 と、嫌な音を立てて潰れる。

 前日のように皿ごと叩き付けられたのだろう。

 玲は本当にこんなので血が変わるのかと、疑問を抱きつつ気絶する。





 □





 目が覚めると、部屋にはシェルが当然のように居座っている。

 わざわざ呼びに行かなくてもいいが……

 おい魔王、仕事はどうした。


「今日はどうするのだ?」


 シェルが聞いてくる。


「今日は魔物狩りだ。レベルを上げる」

「ふむ、昨日と同じ場所か?」


 玲は準備をしながら、無言で頷く。

 率先して魔物を狩るのは初めてなので、装備は入念に行う。

 とは言ってもそこまで物が必要というわけでもない、どうせ『反魂の狂乱』で意味が無くなる。精々、投げナイフや短剣を数本持って行く程度だ。


 本日も朝食のせいで出発が遅れたため、急いで移動する。その途中で街中を通るが、昨日と様子が違う。活気がある。

 人は限りなく少ないが、お祭り騒ぎのようだ。


「シェルこれはどうした」

「ああ、この騒ぎか。ロード…魔王反対派のリーダーが勇者のことを話したんだ。

 そしたらこの有様だ。戦う前に、騒ぎたいんだと。勇者が来るのは、まだ先だと言うのにな」


 まあ魔王を最も力のある者にするほどの戦闘民族だしな納得する。これだけ士気が高いなら逃走にも役にたつだろう。

 玲たち2人はその騒ぎの中を突っ切って街の外に出る。





 □





 昨日と同じ場所に着き、『反魂の狂乱』を使う。変化が終わり、魔物を探す。シェルはついてこないようだ。

 そして見つけた片っ端から異形の手で潰して行く。


 牛のような魔物


 人型の魔物


 トカゲのような魔物


 何十体も倒したあたりでステータスを開く



 飢gg@ガガガ rrレイ


 Lv1


 HP ──

 MP520/520


 筋力:STR 240(+999999)

 敏捷:DEX 300(+999999)

 体力:CON ──

 ◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️


 648/3600


 スキル

 異空庫、言語翻訳、禁忌の書、反魂の狂乱


 魔法

 冥王の腐門(禁術)、ブラッディスワンプ(禁術)


 称号

 邪神プルトリファの加護、冥王(小)



 増えてない。全く増えてない。

 理由が分からない。


 〈レベルが一切上がらないのだが?〉


 困った時のプルトリファに聞く。


 〈その体は作り物だぞ〉


 そう言うことか。この体は作り物が故に、経験値が入らないのか。

 時間が無駄になった。

 十分の残り時間を特に何もしないで過ごし、元に戻ってから魔物を探す。

 見つけたのは先程も見つけた牛のような魔物。手持ちの武器で明らかに強いだろうハルバードを取り出し、叩き潰す。


 グシャリ


 と音を立てて、魔物は潰れ、頭に軽快な音が響く。

 そこまで力を入れてはいないのに、ここまで潰れると、このハルバードの効果だろう。

 しかし、このハルバードも色々おかしい、俺が持っている感覚だと、とても軽い、しかし相手を見ると圧倒的な重さで潰れた感じだ。

 あとでシェルに放り投げて検証しよう。玲はレベルの確認のため、ステータスを開く。



 飢賀 玲


 Lv4


 HP1000/1060

 MP520/520


 筋力:STR 262

 敏捷:DEX 310

 体力:CON 306

 精神:POW 0


 スキル

 異空庫、言語翻訳、禁忌の書、反魂の狂乱


 魔法

 冥王の腐門(禁術)、ブラッディスワンプ(禁術)


 称号

 邪神プルトリファの加護、冥王(小)



 上がっている。しかもそれなりに効率もいい。さっきの時間が、なおのこと惜しい。

 しかし、MPが1つも上がっていないのは困る。POWが0なのと何か関係があるのだろうか?

 禁術を使う以上、MPは大量に欲しいが……


 それでもこのまま狩を続ければ増えるだろう。

 玲はそう楽観視して、狩を続けた。





 □





 日が暮れるまで、狩を続けた結果



 飢賀 玲


 Lv17


 HP1000/1200

 MP520/520


 筋力:STR 304

 敏捷:DEX 370

 体力:CON 343

 精神:POW 0


 スキル

 異空庫、言語翻訳、禁忌の書、反魂の狂乱


 魔法

 冥王の腐門(禁術)、ブラッディスワンプ(禁術)


 称号

 邪神プルトリファの加護、冥王(小)



 MPとPOWは1つも増えなかった。

 MPが増えない以上、禁術を無闇に試しても効率が悪い、もとより性能のいい『冥王の腐門』などを積極的に使うのがいいだろう。

 玲はシェルの元に戻る。


「大分遅かったな」

「シェル。ほれ」


 掛けられた言葉を無視して、シェルに向かってハルバードを放り投げる。


「は?ぐっ!」


 上手くキャッチしたシェルはハルバードの重さに前屈みになる。


「なんだこれは?」

「検証」


 玲は一言で済ませ、ハルバードを片手でとる。

 シェルからしたら、とんでもなく重い物を片手で持ち上げている玲を不審に思い、ジッと見て来る。


「さて、戻るか」

「待て!今の行為を説明しろ!!」

「……」


 無視して進む。


「待て!」


 2人は鬼ごっこをしながら城まで戻った。

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