20.禁術の使用
気づいた方もいるかと思いますが、これまでの話を書き変えました。
理由としては、伏線を入れる余裕の無かった話を消して、会話を変えました。
概要自体はほとんど変わらないので、このまま読んでもらって結構です。
シェルに連れられて来たのは、町の外にある森だった。
「ここでいいか?人目が無く、手頃な魔物も出る」
「ああ、助かる」
案内をしてもらったシェルに礼を言い、辺りを見回す。それなりに広く、ちょっとやそっとの事では気付かれる事は無いだろう。
シェルはどうせ見張りで居るし、戦争に参加するなら早めに見せといた方がいいか。
玲はそう考えながら小声で『反魂の狂乱』と唱える。
右手は肥大化して黒い甲殻に覆われ、身体は腐り、肋骨はその肉を裂く。巻き角も変わらず存在する。
獣の脚でその場で軽く跳ねる。
なんの問題も無い。
横目にシェルを確認する。特に狼狽える様子は無い。まるで変化して当たり前だと言うように。
やはりこいつは何かおかしい。俺の事を知っているのか?しかし聞いたところでこいつが素直に答えるとは思わん。
玲は警戒はしときながらも保留にする。
準備は整った。
今回試す、2つの禁術を確認する。
・『冥王の腐門』
屍食鬼やゴーストを始めとした、死霊系の魔物を大量に召喚する。
発動時間は消費魔力により、変動する。
・『ブラッディスワンプ』
血の沼を創り出し、使用者以外の沼に浸かった者のステータスを大幅に下げる。
発動時間は消費魔力により、変動する。
2つとも肉体的代償で、優秀な壁と妨害が出来る使い勝手の良い禁術だ。
禁術の中には詠唱の必要な物もあるようで『冥王の腐門』がそれにあたる。
今回は両方、消費魔力を100で使うことにする。
玲は詠唱の必要ない、『ブラッディスワンプ』から唱える。
すると、黒い影で出来た杭のような物が、玲の体を貫く。痛みは感じない。
おそらくこれが代償なのだろう。
杭は数秒もすると消え、代わりに目の前の地面が崩れる。
それは人の嘆きの声によく似た音で、長く聴くと正気を保てなくなる類のものだ。
しかし、その音はすぐに止まる。大地の変化が終ったのだ。
赤黒い色に染められたその沼は、先程まで生命が感じられた森の一角に、死の領域を生み出していた。
基準となるステータスが無い以上、性能の確認の使用がないな。シェルに頼む訳にもいかない。
次に玲は『冥王の腐門』を唱えようとする。
すると頭の中に文字の羅列が浮かび上がる。
これが詠唱文の筈だ。すぐさま口に出す。
「生を拒む者共。王命の元に壁となりしその肉を捧げ、敵の臓物を撒き散らせ!『冥王の腐門』!」
一瞬、左半身が吹き飛んだ。
は?流石に意味が分からない。
半身を代償にしないと発動出来ない禁術など、まともに使えない。
だが、その考えはすぐに改める事になる。
詠唱を終え、代償を払った後に現れたのは、黒塗りの門だった。
ゆっくりと開いたその門から溢れるように出てくる魔物、魔物、魔物、魔物。
その魔物たちは、門の目の前にあった『ブラッディスワンプ』の沼に落ちていき、シェルに向かって歩みを進めていた。
門が現れてから30秒ほどで、門は消えた。100の消費魔力ではこれが限度なのだろう。
しかし、その30秒で現れた死霊系の魔物の数は、100を優に超えていた。
「これは中々……」
実際、消費魔力100でこれだけの肉盾を出せるなら、半身は安い。
しかも消費魔力を多くすればするほど、さらに出る。これを敵の背後で発動させれば、とんでもない奇襲が出来る。
玲は考えを改めて、感嘆の声を上げる。
「真面目な考察をしてないで、さっさと助けろ!」
『ブラッディスワンプ』で弱体化していても、100を超える魔物の群れを一人で応戦するのは流石に魔王でも堪えるようで、シェルは助けを求め、叫ぶ。
しかし玲はその声を無視し、変身の解ける残り時間を確認するため、ステータスを開く。
飢gg@ガガガ rrレイ
Lv1
HP ──
MP320/520
筋力:STR 240(+999999)
敏捷:DEX 300(+999999)
体力:CON ──
◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️
2240/3600
スキル
異空庫、言語翻訳、禁忌の書、反魂の狂乱
魔法
冥王の腐門(禁術)、ブラッディスワンプ(禁術)
称号
邪神プルトリファの加護、冥王(小)
魔法を使用したから魔法の欄が増えているのは、別に問題ない。
しかし、称号が増えるのは予想外だった。
何故増えたのかを確認するため、『冥王(小)』を調べる。
・『冥王(小)』
冥王の力を使った者に与えられる称号。
死霊系の魔物に狙われなくなる。
なるほど。『冥王の腐門』を使ったため、現れたのだろう。シェルが真っ先に狙われた理由も判明した。
しかし称号にも効果があったのだな。
『邪神プルトリファの加護』も念のため確認する。
・『邪神プルトリファの加護』
邪神プルトリファから加護を頂いた証。
うわ、使えねぇ。
見られた時点で敵対されるのが確定な分、実質デメリットの称号だ。
玲がスキルに関して、考え事をしていると、周りの騒音が収まる。俺の敏捷値は大幅に強化されている。
逃げるなら今!
玲は全力疾走で逃げようとするが、相手はずっと準備していたのだろう。地面を踏みしめた瞬間に、魔法陣が起動した。
強烈な爆風が全身を襲い、体のバランスを崩す。
この腕では起き上がるのに時間が掛かる。痛覚は無いし、甘んじて受け入れよう。
「即逃げようとするとはいい度胸だな…」
そこには全身汚れたシェルが般若の表情で立っていた。
前書きでも書いたように、色々書き変えてます。
それにより、更新が遅れました。申し訳ありません。
良ければまた読み返して貰えると違いが色々出てます。




