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虚ろな忌み子の殺人衝動  作者: 猟犬
第2章 逃亡地にて
19/46

19.吸血少女

「この傷についてはよく知らん」


 考えた結果、玲は知らないの一言で済ませた。

 予想はついているが、記憶が無いので、この説明で問題ないだろう。


「あ、そうか。そう言えば貴様は記憶が無かったな」


 向こうも納得してくれたようなので、この話は終わりだ。


「それで?ここに来るという事は、何か用があったんじゃないのか?」


 シェルは ハッ と顔を向け


「そうだ、私は人族との戦争に参加する事にした。貴様を匿えるのは、攻め込まれるまでだ。いいな」

「は?何言ってんだ。その戦争、俺も参加するから帰らねーぞ」


 当たり前だ。戦争なんて殺人の特売日だろ。引き際は大事だが、そんなお得なイベントを見逃すわけない。

 それに今ここに居るのも禁術の取得の他に、戦争までの調整期間の意味合もある。

 玲の考えを読んだのか、「は?何言ってんだこいつ」と顔にでかでかと、出ている。


「まあ、それならいい」


 そう言い、シェルは帰ろうとするものの、玲に引き止められる。


「明日、時間はあるか?少し試したい事がある」

「もちろんあるぞ。出来る事が無くて、この城の者全員が手持ち無沙汰だ。」


 これは酷い。戦争の下準備すら出来ない環境とは、盾にすらならない。

 戦争の参加期間は、手に入れた禁術の性能に左右されるものとして、考えておこう。


「ならば明日、人目のない広い場所に案内してくれ。魔物も出て来ると嬉しい」


 シェルはしばらく考えたのち、2つ返事で了承し、部屋を出て行った。

 玲はシェルが出て行ったのを確認し、『禁忌の書』と唱える。

 急速に遠のく意識に身を任せ、ベッドに倒れこむ。





 □





 翌朝、目が覚める。

 体を襲う重量感、何かが自分の上に乗っている。そして左肩に突如、痛みが走るものの不快感は無い。

 寧ろ快感に近い。しかし、このまま好き勝手にやられるのは気に食わないので、体を起こす。


 否、体を起こせない。

 完全にマウントポジションを取られ、身動きが取れない。


 意識が完全に覚醒し、自分の上に乗っている人物に、怒りを隠さず声をかける。


「シェル。一体何をやっているんだ?」

「見て分からんか。血を吸っている」


 悪怯れる様子も無く、そう告げる彼女は気が済んだのか、顔を上げる。


「72点だ。臭みが無く、あっさりとした味わいだが、栄養価が薄い。もっとしっかり食べろ」


 採点された上に、ダメ出しをされた。


「もっと良い血にするため、朝食は私が用意した。さあ食え」


 そう言い、シェルは赤黒い液体に染まったブヨブヨした物体を、パイ投げの要領で玲の口にぶち込む。

 玲の顔面が悲惨な結果へと変わる。玲は未だに理解が追いつかず、混乱している。

 ただわかるのは、この冒涜的な味のするこの物体はクソ不味いことだけだ。

 何処か()()()()()()()()その生臭さを感じながら、あまりの不味さに玲はまた意識を手放した。





 □





「何故血を吸っていた」


 玲は目が覚め、すぐそばに居たシェルに詰め寄る。


「魔族の血は不味すぎて飲めん。反面、人族は肉も柔らかく、口当たりが良い。ご馳走が目の前にあるのだ。私は我慢が出来ん」


 無い胸を張って言われたその言葉に玲は考えることを諦めた。この様子だと毎日飲みに来るのだろう。

 そして城にいる間はずっとアレを食わされるのだろう。流石に身が持たん。


 しかしこいつの行動は目に余る。特に、一方的な信頼が寄せられているのが、とても気持ちが悪い。

 何故こいつは俺に対して、どうしてここまで無防備になれる?

 協力関係ではあるが、決して味方というわけでも無いのに。まあいい。今日試す2つの禁術の方が重要だ。


「取り敢えず、遅れたが昨日話した場所に案内してくれ」

「ああ、ついてきてくれ」


 こうして2人は町の外に出て行った





 □





 シェルは思案していた。

 私が確認するべき事は3つ


 1つ

 玲の血の味。

 これは少し強引だが、こちら側は確認した。

 夢の通りだった。

 普通に美味かったから、また飲ませてもらおう。

 2つ

腐鬼(ふき)』と呼ばれる魔物の存在。

 これはおそらく、確認のしようが無いため、放置でいい。

 3つ

 狐の獣人族の少女の存在。

 少なくとも夢の中の玲は、この少女を助けていた。

 単純に子供が好きだと思ったが、人族領土で顔色を一切変えずに処理していた。

 この少女を助けていたのには何か理由があるのだろうか?


 既に夢とはかなり違っている道を辿っている。しかし、この夢の確証が取れない限りは迂闊に動けない。

 何故なら、夢の一部に強姦されている私の姿あるからだ。

 昔は強姦させる事に恐怖しか感じなかったが、玲を見て考えが変わった。

 彼の歪んだ心であの結末を辿るのなら、私の強姦など、安いものだ。


 そしてこの夢が本当に起きた事ならば、私は……

猟犬です。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

やはり時間が無いので、更新が不定期になります。

なるべく夕方ごろに上げたいですが、深夜に投稿なんて事も頻繁に起こる事でしょう。

そんなので良ければまたお付き合いください

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