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虚ろな忌み子の殺人衝動  作者: 猟犬
第2章 逃亡地にて
18/46

18.不慮の事故

 夢を見た。


 幼き頃からよく見る夢だ。


 その夢はある男と出会い、別れる悲しい話の断片。


 私はその夢が何か分からず、その男を探すことにした。

 所詮私は傀儡、何処に居ようが周りには関係無い。


 しかし、その男に会って夢の意味を知る。


 この夢が本当ならば、私はこの男と私を何としても救わなければならない。それ以外の結末は認めない。


 明日は城に着く。

 今日はもう考えるのを止めよう。


 少女は意識を手放した。







 □







 翌日、玲たち3人は、城下町に着くが、町に活気は無く、人もまばらだ。

 今にも病気と内戦にやり、滅ぶ寸前の町を視線を感じながら進む。


「ここまで酷い状況だとはな」


 玲が呟く。


「ああ、ここまで来ると戦って滅ぶか、諦めて滅ぶかの二択しか無い」


 シェルは重々しく告げる。

 彼女の判断だと魔族が生き残る道は無いらしい。彼女は「守りたかった」そう告げていた。どうりで過去形な訳だ。


 3人は城門まで行き、門番すらいない城に入る。

 歓迎はされない。向けられる視線は、不快なものを見る視線だ。こう言った目は慣れている、気止める必要は無い。


 ん?慣れている?


 俺の記憶の中には、周りに合わせて作り笑いをしている記憶しかない。

 つまりこの感覚は、封印された記憶に関する事だ。


 〈プルトリファ。封印したのは記憶だけか?〉


 プルトリファに聞くが、答えは帰ってこない。

 この質問には答えれないか、プルトリファ自身に何かあったか。

 しかし玲にはどうしようも無いため、考えることを止める。


「魔王様、そちらの方は」


 身なりの整った男が話しかけて来る。目で厄ネタを持ち込むなと言っている。シェルが心を読めるのを知らないのか?


「こいつは、人族領土に送っていたスパイだ」


 シェルが指を指して言う。


「紹介に預かりました。ロウと申します」


 玲は偽名を使い、一礼する。

 横のシェルが小刻みに震えているのが見える。俺が敬語を使うのは、そんなに可笑しいか。


「そうでしたか、ならば早速手に入れた情報の報告を」


 魔王をその場に置いて、情報の確認が先か。

 こいつら自分達の事しか考えてない浅ましい者だな。正義感溢れる人種と同じくらい嫌いだ。


「全員集まった時に話しましょう。二度手間は勘弁です」


 目の前の男は顔をしかめたが、直ぐに人を呼ぶようだ。

 程なくして会議室に通される。席が埋まるのを確認して、先程の男が話し出す。


「ロウ君、情報の開示を」

「承知しました。では、まず人族の状況から────





 □





 結果として、会議室は大混乱に陥った。


「勇者の召喚だと!」

「防衛戦をするにしても兵が足りん!」

「兵糧も無い!兵が居たとしても動かせん!」

「後ろは獣人族の領土だ。立ち入った時点で敵対される!逃げることすら出来ない!」


 まさかここまで詰んでるとは。よくここまで腐らせたな、感心するよ。


「ロウと言ったな。この話は本当か?」


 この会議室で最も偉そうな大男に話しかけられる。


「ええ、本当です。人族は今、勇者召喚によりお祭り騒ぎですよ」


 次に会議室を襲ったのは沈黙だった。

 誰もが嘘だと思いたかっただろうに、現実を突きつけられたからだ。

 長い沈黙を破ったのはシェルだった。


「報告ご苦労。下がれ」


 玲は一礼し、部屋を出て行く。部屋を出て、直ぐのところにクーリエが立って居た。


「部屋に案内致します。付いてきてください」


 どうやら案内してくれるらしいので、付いて行くことにする。





 □





「さて、私は戦うが、貴様らはどうする?」


 シェルはその場に居る全員に問い掛ける。しかしその問いに答える者は居ない。未だに信じられないのだ。


「我は戦うぞ。たとえ負け戦だろうと魔族の誇りまで失う訳にはいかない」


 大男、ロードがそう言う。

 この男は反対派のリーダーで、実質的な統治者だ。この男の言葉には嘘偽りは無く、本心で言っていた。

 周囲の者は未だ考えがまとまっていないようで、選択が出来ていない。


「幸い勇者のレベルは1だ。まだ時間はある。よく考えてくれ」


 シェルはそう言い括り、会議室を後にする。

 そうして玲に話があるため、案内した客室へと足を向けた。





 □





 シェルは客室の前まで行き、ノックもせず扉を開けた。どうやら着替えの最中だったようで、直ぐに扉を閉める。

 下着により恥部は隠されていたが、男の裸体を見たのは初めてで、顔が熱い。

 しかしシェルも年頃の娘。はしたないと思いながらも、今見たものを思い出す。


 体つきは意外と良く、触り心地が良さそうだった。

 血色も中々の代物で、魔族の中でも吸血種であるシェルからしたらご馳走だ。今度、血を吸わせてもらおう。

 そして身体中にあった殴打と火傷の跡……


 殴打と火傷の跡?


 確認を取るため、シェルは直ぐに扉を開ける。

 一瞬で着替えが終わるわけもなく、難無く見れたその体には、確かに殴打と火傷の跡がびっしりと付いていた。


「なんだその傷は!」





 □





 玲は部屋に着くと、真っ先に着替えた。

 旅の道中、隙を見せないようにしていた為、着替えを一切していなかったからだ。



 バン!



 と、大きな音が鳴り、そちらを向くとシェルがこちらを見ていた。



 バン!!



 直ぐに扉が閉められる。

 先程よりも大きな音が鳴るが、仕方のないことだろう。

 玲は直ぐに替えの服を取り──



 バン!!!!



 これまでで、1番大きな音だ。

 扉を開けたり閉めたり忙しない奴だな。

 流石に鬱陶しい。


「なんだその傷は!」


 今度は叫ばれた。

 さて、どう説明したことか。

着替えシーンです。男のなぁ!

猟犬です。今回もお付き合い頂いきありがとうございます。

次回は説明して、魔力切れします。

よければまた覗いて下さい。

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