15.逃走劇
飢賀 玲は町の外で腕を組み、考え事をしていた。
「にーちゃんここで何してるの?」
目の前の子供をどうするか。
服装は変えた、武器も隠している。
よって俺が勇者、もとい危ない人間には見えないだろう。
「お兄さんはね、人を待っているんだ」
「ふーん、にーちゃんは冒険者なのか?」
期待のこもった目で見てくる。
心底鬱陶しい。しかし、子供相手に、本気になる訳にもいかず
「残念ながら、ただの旅人だ。ほれ、町の外は危ないからとっとと戻れ」
なるべく優しい口調で話す。
「なーんだ、じゃあいいや。あと、町には戻らねぇ。俺は冒険者になるんだ!」
そう言い、子供は町から遠ざかる。
自分の元から離れれば、自殺しようが、人を殺そうが、どうでもいいため、玲は追わない。
そんなことよりも、勇者パーティから抜けた今、シーフの職に就いている理由は無い。
ならば武器は、短剣よりも威力のある武器が好ましい。候補としては、大剣や斧、変身した時のことを考えるとこの辺だろう。
〈あの立派な右腕で戦わないのか?〉
プルトリファが聞いてくる。
〈どちらかと言えば右腕は盾だ。戦えはするが、扱い辛いだろう〉
そう、あの右腕はとても動かし辛いのだ。
普段の腕より、何十倍にも肥大化するため、重くもなるし、動かすための予備動作も必要になる。
それなら右腕は、ぶつける、置く、この2つの動作で完結させて、盾にするのが有効的だ。
子供とのやりとりが終わり、プルトリファの質問にも答えた所で、買い出しに行ってた2人が戻ってくる。
「随分と遅かったな。秘密の会談は、楽しかったか?」
皮肉を交えて言う。
こいつらが2人っきりになれるのは、この買い出しが初めてだ。
俺の事や、これからの事を話して無いはずがない。
「ええ、そうですね。貴方の話の裏を取るために、情報収集をして────
「そ、そんな訳ないだろ!秘密の会談なんて一切してない!」
ローブが優雅に返そうとした矢先、シェルがそれをぶち壊す。
シェルの性格が分かった気がする。こいつは、物事をしっかり考えれるが、予想外の展開が起きると、一気に崩壊するタイプだ。
ローブは頭を抑えて、深いため息を出している。
あんたは苦労しそうだな。
「わざわざ自白ありがとさん」
情報を提供してもらったんだ。礼は言わないとな。
玲は皮肉のこもった、感謝の気持ちを伝える。
意味を理解出来たのか、シェルは真っ赤になり、ワナワナと身を震わせている。
不味い。怒りが噴火する前に逃げなければ。
「準備出来たんなら、さっさと行くぞ」
そう言い、今度は玲が駆け足気味に、先頭を駆ける。
ローブは距離を取りつつ、付いて来る。
「待て!こんの!」
そう聞こえたため、後ろを振り向く。
なんと走って来た。
駆け足ではなく、全力疾走だ。
ローブが距離を取っていた理由が分かった。
巻き添えを喰らいたくなかったんだ。
仕方がない、向こうが潰れるまで走るとしよう。
Lv1とは言え、こっちは熟練の冒険者並みの、ステータスだ。追いつかれな──
ヒュン、と音を立てながら顔の横を何かが通り過ぎる。すぐに振り返ると、そこには、魔法陣片手に走るシェルがいた。
つまりさっきの何かは、魔法と言う事だ。
「おいおい、これは流石に笑えないぞ」
これは『反魂の狂乱』の使用も視野に入れよう。
そして、これからシェルを煽るのは控えよう。
2人と1人は、見事な逃亡劇を続ける。
町はどんどん遠ざかり、街道の先で子供の悲鳴が聞こえる。
そこには先程の子供が、魔物の群れに襲われていた。
いつもまにか逃亡劇は、魔物の群れに突っ込むチキンレースに変わっていた。
異常に気がついたシェルが足を止め、魔物と対峙する。
「おい、まさか助けるとか言わないよな?」
玲はそう言う。
この言葉には様々な意味がある。
この子供は自己責任だ、助けるメリットが無い。それに魔族のお前が人族を助けるのか?
そう、問うているのだ。
しかし、シェルは
「残念だが、私の目的のために助ける」
そう言い、放たれた魔法により、魔物は死に絶える。
だが、すでに子供は重症を負っていた。
まだ息はあるが、喚き声が煩わしい。
「ロウ。お前は回復魔法は使えるか?」
「あいにくそんな便利なものは使えないな。もう助からない、トドメを刺すぞ」
玲はシェルが頷いたのを確認してトドメを刺す。
しかし、これといった感情は無い。
この事により、シェルの怒りも消えたのだろう。何か考え事をしているが、鬼ごっこは終わる。
「魔族領土まであとどのぐらいだ?」
玲が聞く。
「このペースならあと10日ぐらいだ」
「急ぐぞ」
小さく「ああ」と返事が返ってくる。
大した会話もなく3人は魔族領土へと向かって行った。
時間がっ!無いっ!猟犬です。
このような駄作に付き合って頂き、ありがとうございます。
明日は上げることが出来るか分かりません。
忙しいのです。
たとえ明日、更新が無くとも、覗いてくれると、とても嬉しいです。




