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虚ろな忌み子の殺人衝動  作者: 猟犬
第2章 逃亡地にて
13/46

13.魔族との取引

 これまでの、こいつらの情報を、まとめよう。

 ・2人は魔族。

 ・少女の方は『異空庫』もち。

 ・執事は冷静に物事を判断するが、少女は少しの事で、感情をあらわにする。

 ・そして、魔王を呼び捨てに出来るほどの、地位を持っているか、親しいか。


「それで?2人の正体は?」


 少女は苛立ちを、隠そうともせず、後ろの執事と相談している。

 最終的に、執事の


「貴方様の裁量を信じております」


 の一言で、少女の考えは纏まったようだ。


「貴様、魔族領土に行くと言ったな」

「ああ」

「私たちも一度、戻る事にした。この場では、何処に目があるか分からん。魔族領土に着いたら、そこで改めて話そう」


 確かに俺は、魔族領土に行くと言った。

 敵地でも無いと言った。

 行かない選択肢も無いため、その意見には賛成だ。

 しかし、こいつは自分の陣地に来いと、そう主張している。

 俺には分の悪い取引だ。多少、たかっても問題ないだろう。


「いいぞ。ただし魔族領土に着くまでの、旅の費用と食料は、そっち持ちだ」

「その程度なら問題ない」


 しれっと返したその返答に玲は条件をもっと上げても問題なかったと少し後悔する。

 しかし、旅の費用が浮いたのは大きい。

 野外訓練での、食料がまだあるとはいえ、万全とは言い難い。


「取引成立だ。俺の名前はロウだ。よろしく頼む」


 もちろん偽名だ。プルトリファが何か言っているが、無視する。


「ああ、私の名は、シェシルだ。周りからはシェルと呼ばれている。後ろのこいつは、ローブと言う」


 執事はまたも、綺麗な一礼をする。


「さて、事が決まったのなら、さっさと行こう。まだ、この周辺には勇者がいるしな」

「なんだと!それを先に言わないか。すぐに行くぞ!」


 そう言って、駆け足気味に先頭を行く、少女の後を、玲は追いかけて行った。
















 日が高く昇った、正午過ぎ



 カチリ



 と、何かがハマる感覚がした。


 〈プルトリファ、この感覚は?〉

 〈スキルの再使用が出来るようになった感覚だ。記憶の事とは、一切関係ないぞ〉


 プルトリファはさっきのミスか、機嫌が悪そうに言う。

 12時間か、1時間持続するスキルにしては破格だな。3日は覚悟してたんだが。

 しかし、人を殺したから記憶に関しては、少しは期待したんだがな。

 プルトリファと会話しながら歩いていると、横のシェルが、怪訝そうな目で見てくる。


「シェルは俺に何か用か?」

「……いや」


 シェルの方を向き問うが、目を逸らされた。

 まあ、会話が無くてもデメリットは無いが。


「ああ、そうだルートの確認をしておきたい」

「へ?ああ、食料の補充のため、一度近くの町に行く。その後、一直線に魔族領土に向かう」


 町に入るのは避けておきたいな。

 自分の正体がバレると困る。


「俺は、諸事情で町に入らない。なるべく早く頼む」

「む、顔が見られると不味いのか?」

「ああ、不味い。とんでもなく不味い。無論、そっちにも影響はある」


 こんな言い方しなくとも、情報の欲しいこいつらは、俺を守るだろうが、念には念をだ。


「なら手早く済ませよう。ローブもそれでいいな」

「勿論で御座います」


 そう言い玲たち3人は街道を進んで行った。

はい、少し少ないですね。猟犬です。

次は、勇者サイドの視点を少しやります。

よければまた、お付き合い下さい。

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