表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚ろな忌み子の殺人衝動  作者: 猟犬
第2章 逃亡地にて
12/46

12.合法殺人

「助太刀、ありがとうございました」

「ああ、助かった。私からも礼を言おう」


 そう言い、見事な礼をする初老の執事と軽く礼をする褐色肌の少女。


 血を拭き取りながら考える。


 どうしてこうなった……





 ◇◇◇






 時は遡り、


「ん?元に戻ったか」


 周りの空間が崩れるように、自分の姿が変わる。

 まるで薄氷のように崩れた空間に驚きを感じつつ、左腕があるのを確認する。

 森を出るのも、もう少しだ。日が昇るまでに森を出ないと捜索が本格的に開始させるかもしれない。

 移動スピードが落ちたが、それでも森を出るために進んで行く。

 もう一度『反魂の狂乱』と唱えるも、変身しない。

 クールタイムがあるのだろう。ステータスを開いても分からないため、人のいないうちに小まめに唱えて、確認することにする。









 日が昇る前にあっさりと抜け出した玲は、近くの街道を南に向かって進む。睡眠は取らない、その暇が無いからだ。

 玲は眠気を抑えつつ、距離を稼ごうと足を早める。

 街道には誰もおらず、気楽に進めている。誰とも会わなくて済むのは、幸先がいい。

 そう思った矢先、目の前に盗賊らしき大人数に、囲まれる2人組みがいた。

 2()()()()()無視したいが、プルトリファは正体がバレてから大胆になって来ている。利用しよう。


 〈助ける気はあるか?〉

 〈正直、無視したいな。しかし、命令ならばやろう〉

 〈なら頼む〉


 よし来た!


 〈人殺しの命令入りましたぁ!!!!〉


 心の中で歓喜して、突撃して行く。


 〈あ゛!〉


 いくら盗賊とはいえ、人間は人間。

 皆殺しだ!


 人数は12人


 1人目、誰も気がついていないため、後ろから首を跳ね、頭から血を浴びる。


 2人目、近くにいた奴が気づく。脇腹をかっ裂き、手を突っ込んで、内臓を引きずり出す。


 そこらで襲われている2人組みと、残りの盗賊10人が気がつく。





 血塗れで、片手に内臓を持っているその男に。





 2人組みは困惑しており、盗賊は猟奇的な目で見てくる。


 そうだ、俺を見ろ。


 俺に向かって来い!


 盗賊のうち、4人が向かって来る。


 3人目の攻撃を地面にへばりつくように避ける。

 その後、下部にタックルをかまし、転倒させる。

 4人目が、後ろから斬りかかる。転がって回避して、見下げて来る4人目の喉を、立ち上がる勢いで突く。

 立ち上がってきた、3人目も横薙ぎにしてトドメを刺す。


 乱戦に突入するのを躊躇っていた、5、6人目は、短時間に2人も殺されたことに戸惑っている。


「なんだこいつは!!」

「笑っているぞ!!」


 やはり俺は、笑っているらしい。

 腰に差している、2本の投擲ナイフを投げる。

 5人目には当たるが、6人目は外す。

 最後、タイマンとなった6人目を、危なげなく殺す。


 人殺しをしても記憶は戻る事は無かった。

 しかし……ああ、楽しかった。


 あの怯えた目


 殺意の押し付け合い


 刺す時のぐにゃりとした感覚


 どれも初めての事だ。


 まだ、足りない。


 2人組みを見るとそちらも片付いたようだ。

 とても残念に思う。

 残っていたら、まだ殺りあえたのに。





 こうして冒頭に戻る。


「しかし、腕が立つな。冒険者か?もしそうなら護衛を頼みたいのだが」


 銀髪を腰まで伸ばした褐色肌の少女は、その青い瞳で問いかけて来る。


「いえいえ、ただの旅人です。それにお二方も、腕が立つようで」


 少女の身なりと後ろに控えている執事により、身分の高いものと悟り、敬語で無難に返す。


「ふふ、そうだな。助けて貰った礼がしたい。何か入り用の物はあるか?」


 腕が立つと評されたことにより、気分を良くしたのか、少女は嬉しそうだ。


「2人は商人で?にしては荷物が少ないようですが」

「ああ、そうだ。荷物に関しては、私は『異空庫』持ちだ」


 なるほど。

『異空庫』は、異世界から召喚された者には必ずつくが、それ以外で持っているのは、とても珍しいらしい。

 まさか、こんなところで会うとは思わなかったな。


 しかし、礼か…

 それなら


「今は特に入り用の物は無いので、代わりに地図を持っているなら、見して貰えますか?」


 少女は少し迷う素振りを見せるが


「いいだろう。ほれ、これがこの周辺の地図だ」


 投げ渡されたそれを受け取り、地図を確認する。

 そして理解する。

 地図を出すのを悩んだのは、これが原因か。

 その地図には、2人が来た道が書き記されていた。

この2人は魔族領土から来た商人だ。


 玲は自分の現在地を確認し、地図を返す。


「お二方は魔族の方ですか?」

「ああ、そうだ。『ブリード』の街に少し野暮用でな」


『ブリード』確か俺たち勇者の滞在している、人族領土の首都だ。だが、今は勇者召喚により、魔族は討ち亡ぼすべき存在だと認識されているはず。


「そちらに行くのはあまりオススメしませんよ。なんせ勇者を召喚して、魔族に攻め入る気満々ですからね」

「え、」


 やはり、この情報は魔族に伝わってなかったか。

 勇者の情報の有効性が見えてきた。

 目の前の少女は狼狽し、


「なぜ戦争になっている!」

「なんでも魔族が邪神の加護を貰い、攻め込んで来るんだと」

「な、そんな物は貰ってない!」


 少女は叫ぶ。


「こちらに八つ当たりされても困ります。俺の見解からすると、そのまま大人しく帰るのがオススメですよ」


 玲は親切にそう伝えると


「貴様はなんだ。人族のくせに魔族に敵意は無いのか」


 怪しまれた。

 それはそうだ。人族と魔族の戦争があるのに、目の前の人物は、敵意も無く帰れと言う。

 疑って当然だ。


「俺は今から魔族領土に行きますからね」

「は?貴様は今から敵地に行くのか?」


 今度は呆れられた。


「いやいや、敵地になるのはこれからの交渉次第ですよ」

「交渉?」

「ええ、少し魔王様に」

「…」


 最早、声すら出ないらしい。

 少女は黙りこくる。


「……魔王と交渉する内容を教えろ」


 ふむ、怪しい。

 鎌をかけるか。


「魔王様を呼び捨てにするとは、魔族にはそう言う文化でもあるんですかね」


 玲はいい笑顔でそう煽る。


 すると、見る見る少女の顔は赤くなる。

 当たりだ。


「お前の本当の身分を言わないと、この情報は出せないな」


 立場が逆転した。

 敬語も止め、そう言い放つ。


 朱に染まった少女に対し、執事はこめかみを抑えて、俯いついた。

やっと出せた!やっと出せたよ!猟犬です。

今回もこのような駄作に付き合って貰いありがとうございます。

本日2話目です。

明日もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ