1.虚ろな青年
初投稿です。
完全に自己満足な作品な事を了承して読んで下さい。
(心地が良い)
形容するならそのような場所で目が覚めた。明かりが無いのか、何も見えない。ただ分かるのは、ここには様々な怒りや憎しみが渦巻いているということだけ。
なぜここにいるのか分からず、まだ覚醒しきってない脳を動かして自分の記憶を漁っていると、いきなり話しかけられた。
「おはよう。よく眠れたかい?」
見知らぬ人に話しかけられ、考えていたことを放棄して声の主の女性に答える。
「ここはどこだ」
「ここは私の空間。ある事情から君をここに呼んだ」
声の主は意気揚々と説明を始める。
「君は剣と魔法の世界に魔王を倒すべく、人族に勇者として召喚されるはずだった存在だ。」
「……にわかには信じられない。それにはずだったとはなんだ」
ここらで意識がはっきりとしだす。俺は高校の教室で授業を受けていたはずだ。
だが未だにだ頭には靄がかかっているようで思い出せることが少ない。敵意を剥き出しながらだが、大人しく話を聞くことにする。
「君は本来なら眠りについたまま女神の元に行き、特殊なスキルをもらい、レオリクトの世界にいくはずだった。けれどそこに私が介入して君だけを誘拐してきたわけだ。
ここまでで質問はあるかな?」
「レオリクトと言うのはこれから行く予定だった異世界の名称か?」
「YES。これからの話によっては行くことになる世界と訂正しておこう」
「2つ目。勇者は複数いるのか?」
「YES。教室にいた全員が勇者として召喚された」
おめでとう。クラスにいた異世界に行きたいと言ってた奴。いきなり誘拐された俺は全然めでたくないけどな。
「そろそろ話を戻すよ。遅くはなったが自己紹介をしよう。私はレオリクトの世界で邪神として崇められている存在のプルトリファという」
あいての自己紹介を聞き2つの事に驚いた。まず会話しているのが邪神ということ。
2つ目はこちらも名乗ろうとしたが、名前が思い出せないこと。
流石におかしいと思い、自分以外の名前を思い出す。
クラスメイトの名前…思い出せる。
先生の名前も同様に思い出せる。
自分の年…17歳
家族の名前…………
思い出せない。
家族がダメなら住んでいる場所を思い出そうとするが、思い出せない。同様に小学、中学の記憶が無い。
「どういう…ことだ…」
「記憶については後で話すよ」
どうやらこの邪神は心を読めるようで、考えている事が筒抜けだ。流石邪神、なんでも出来る。
しかし、家族の名前が思い出せない異質な状態でも、俺は問題ないと思っていた。
「…君以外と頭まわるね。まあ、続けるよ。レオリクトには人族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族、魔族の5つの種族が国を作り統治している。今、その中の人族が魔族を滅ぼすレベルの戦争を仕掛けている。人族の言い分はこうだ。
「魔族の王たる魔王は、邪神たるプルトリファの加護を貰い軍隊を率いて攻め込んで来ている。これは由々しき事態だ!だが我々では勝てないから勇者を召喚しよう」とのことだ。
女神はそれを間に受けて勇者に加護を与えようとしている訳だ。私は魔王に加護なんて与えてないし、魔族は進軍なんてしていない。むしろ内戦と疫病で衰退の一方だ。そこに人族は目をつけたんだろう。魔族の領土はレオリクトの中心にあるため、そこを取れば貿易で一気に栄える。つまり君たちは人族の発展の足掛かりというわけだ」
邪神は楽しそうに笑う。俺も他人事なら笑う。ピンチだから助けてくれと言われて戦争に参加するも、実は全然平気でした。となるわけだ。まさに道化、話を聞いたら全くやりたくないな。
「私もいい加減、冤罪を着せられるのも御免被る。だから私は君を使う。
君に力を与え、私を人間としてレオリクトに降臨する手伝いをしてもらう事にした。拒否権は無いぞ」
拒否権は無いと言われたものの、俺には先に聞かなくてはいけない事がある。
「…先に記憶について教えてくれ」
「いいだろう。君は人をとても憎んでいる、力を手に入れたらすぐに、その手で殺しつくすまでに。」
「だから消したと?」
「ああ。最低限のことだけ封印した。だから封印の解けるきっかけがあれば思い出せるよ」
最低でも人生の8割を忘れるほどの憎しみ。俺は元の世界で一体なにをしていたのか。そして、それには名前の思い出せない家族も関わっているのだろう。
記憶を消したこいつに思うところはあるが…………
知りたい
絶対に思いだせという強迫観念。好奇心からくる欲。
そして話を聞き、薄れてはいるが人が憎いと知覚してしまった。ならばここで死ぬ訳にはいかない。不思議と込み上げてくる嗤いを堪え答える。
「ああ…俺に出来ることなら精一杯手伝わせてもらおう」
「ふふ、それはありがたい。では君の名前を教えよう。君の名前は 飢賀 玲だ」
ストン
と音が鳴りそうなほど綺麗に自分の頭に入った。なぜ忘れていたのか分からなくなるほどに。
「その感覚は記憶を取り戻した時に起きる。記憶を取り戻したいならこの感覚を忘れないようにしなさい」
言われた通りこの感覚を身に染み込ませる。そうしていると視界が広がって行く。
これまで見えなかった邪神の姿が見えてくる。背丈は170cmほどあり、顔立ちも整っている。スタイルもよく女性から見ても惚れ惚れするほどで金色の長髪がそれをさらに引き立てている。
「目が見えるようになったのはいいが、なぜだ?」
「玲を私の眷属にしたからだ。それにより体がこの空間に慣れたのだろう。
玲には2つのスキルを与える。それをうまく使ってくれ。聡明なお前なら、このスキルを与えた意味を理解するだろう。
ステータスと唱えれば、与えたスキルを見る事が出来る。確認をしてくれ」
そう言われ、玲は素直に従う。
飢賀 玲
Lv1
HP1000/1000
MP520/520
筋力:STR 240
敏捷:DEX 300
体力:CON 290
精神:POW 0
スキル
異空庫、言語翻訳、禁忌の書、反魂の狂乱
称号
邪神プルトリファの加護
おそらく『禁忌の書』と『反魂の狂乱』が与えられたスキルだろう。
そう目星をつけ、確認をしていく。
・『禁忌の書』
全ての禁術の知識と才能を得ることが出来る。
禁術が何か分からないが、あまりいいものとは言えない響きだ。おそらくこの得られる知識の中に、邪神を降臨させる術があるのだろう。
・『反魂の狂乱』
自身の負の感情を元に偽りの体を構築する。
元に戻る際には偽りの体を分解し、変化する前の状態の体に戻る。
これについてはよく分からない。
負の感情と言うのはまだ分かる。恨みや妬み、そういったものだろう。
体を変化させる理由も分かる。簡単にステータスを上げるためだろう。
しかしこれを与えた意味が解らない。単純にステータスを上げるだけなら他にももっとあるだろうに。
「もうしばらくしたら玲は人族の城にある「召喚の間」にて召喚されるだろう」
自分の能力の確認をしていたところでそう言われた。
「俺が邪神の眷属だとバレることはないか?」
「それはないだろう。女神には気づかれるが、女神を含め、我々は眷属を通さない限り、そちらの世界に干渉出来ない。
そして女神に眷属は居なかった筈だ」
「つまりお前は俺を通して干渉できるが、女神は出来ないと」
「そういうことだ」
話していると自身の周りに魔法陣が現れた。もう呼ばれるということだろう。
「邪神。最後に聞くがなぜ俺を選んだ」
「お前が一番狂ってたからだ。あと邪神はやめてくれ、プルトリファと呼んでくれ」
「了解したプルトリファ」
こうして俺は記憶の大半を無くし、プルトリファの眷属として異世界レオリクトに召喚された。
気力が続く限り投稿しますが、無くなればそこで終わります。
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