「妹」
今日は4月1日。高校2年の新学期が始まる日だ。
俺の名前は、佐々木 充。
いつもはギリギリまで二度寝して、朝食なんか食べられない。
だけど今日は「妹」の真央が起こしてくれた。
食パンを齧りながら、テレビで朝の情報バラエティを見てる。
いや、実際には見てない。
「妹」が気になりすぎて、それどころじゃない。
テレビを見てるフリでもしていないと、変な緊張でパンが喉を通っていかないのだ。
牛乳で何とか流し込んで、一息つくと、テーブルの向かいに座る「妹」と、目が合った。
「お兄ちゃん、せっかく早く起きたんだから、もっとゆっくり食べたら?」
そんな風に気遣ってくれる「妹」に、何だか嬉しくなるが、素直に喜べない。
余裕なく、「うん」とだけ返して、牛乳の残りを一気に飲み干す。
そんな態度を取った俺を気にする事なく、微笑みながらティッシュを渡す「妹」。
「ほら、白いおヒゲが生えてるよ?」
またも余裕なく、何とか「うん」と絞り出してティッシュを受け取り、白いヒゲ(牛乳)を拭いた。
それを見て「妹」は、また微笑むと、ゴミ箱まで用意してくれた。
至れり尽くせりである。
というか馴染み過ぎである。
喉の奥まで出かかった「ありがとう」を、緊張が押し留める。
無言でティッシュを捨てると、逃げる様に席を立ち、食器を流し場に持っていった。
何で俺が朝から、自宅で、「妹」相手に、こんなに緊張しているかと言うと。
一緒に朝食を食べている両親が、何も言わない、というか、気が付かないからだ。
いつもより一人分多く、いつもは誰も座らない4人目の席に、普通に朝食を置いて食べさせている。
明らかに我が家には不釣り合いな、金髪の美少女を、我が家の一員として受け入れているのだ。
「充、今日は真央の初登校なんだから。一緒に行ってあげなさいよ。」
親父の弁当を作りながら、母さんが当たり前の様に「妹」の名前を言う。
「あ……はい。」
そう言うのが精一杯だった。
「変な虫が付かない様に、ちゃーんと見張ってるんだぞ?分かってるな?」
珍しく俺に話しかける親父。
「え?………あ、はい。」
いつも難しい顔してるクセに、何だか嬉しそうな顔しやがって。娘がいたらこんなに違うもんだったのか?
自分一人だけ浮いた様な、別の世界に迷い込んだ様な気がして。
それを紛らわす為に、普段はしない食器洗いをしながら何故こんな事になっているのか考える。
何が悪かった?どうすれば良かった?俺に何か出来たのか?家族を巻き込んだのか?
グルグルと頭の中で自問自答していると、あっという間に洗い物は終わってしまった。
するとタイミングを見計らった様に、「妹」が声を掛けてきた。
「お兄ちゃん、おまたせ!行こっか!」
キラキラした笑顔が眩しい。
こんな妹が欲しかった。確かに欲しかった。どこからどう見ても、理想の妹に違いない。
でも。
でも神様、違う。
違うんです!
中身が魔王な妹は、絶対に違うと思うんです!




