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魔王少女。  作者: 甘霞
10/13

全裸待機。


俺は今、高度1000m(多分そのぐらい)の上空から、パラシュートも着けずに自由落下中。


風圧で目が開かないけど、何とか辺りを見回す。


が、辺りには何もない。


居ない。


俺を跳ばしたであろう魔王な妹が居ない。


どうやら間違いか何かで俺だけこんな上空に跳ばされたらしい。


地面がどんどん近づいてくる。


あ、真下のあれ、ショッピングモールだな。


誤差1kmぐらいならまぁしょうがないか。


しょうがないよね?


変に冷静な自分がいる。


多分妹(魔王)を信じてるのだろう。


………くるよね?助けてくれるよね?


段々と不安になってきた俺は、走馬灯のように魔王な妹との出会いを思い出していた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



あの日、春休み最終日の3月31日。


俺は珍しく外出していた。


滅多に外出しない俺だが、この日はどうしても行かないといけないビックイベントがあったのだ。


『絶対最強シスターズ!』のアニメで、アリスたんの中の人をやっていた花沢さんが、近く(隣の県)でCD発売イベントにやってくると言うのだ。


今までは、交通費や高すぎるボッチ力で諦めていたが、隣の県なら何とか行ける。


アリスたんの生声の為に、この高すぎるボッチ力も抑えてみせる。


メチャクチャ気合いを入れて出発して、行きの電車で脳内予行演習したり、動画を見て気分を高めたりした。


しかし人生初のビックイベントは一瞬で終わった。


緊張し過ぎて何があったか殆ど覚えていないが、結論だけ言うと、アリスたんは居なかったのだ。


まぁそりゃそうだ。もうすぐ30の女性がずっとアリスたんの声で喋ってる訳が無い。現実は厳しい。


意気消沈しながら帰りの電車に乗り、スマホで『絶妹』のアニメを見て癒される。


あー、2次元行きたい。

アリスたんに会いたい。

会って踏まれたい。蹴られたい。



そんな願いが通じたのか、駅から家への帰り道にソレは俺の目の前に降ってきた。




不自然な速度で落下するソレは、見るからに異様で、気持ち悪くてゾッとする。


着地?衝突?した瞬間、それはスライムの様に地面に広がり、またすぐに変形していく。


変形が落ち着くのをマジマジと見ていた俺は、ソレと目があったのに気が付いた。


明らかな非日常に飲み込まれ、身動き出来ないでいる俺に、ソレは狙いを定めたようだった。


(オワタ。)


そう思っていると、急に辺りが暗くなり、風が吹き始めた。


上を見上げると、雲が空を覆い隠しており、どこにも晴れ間は見当たらない。それどころか、雲が不自然に渦巻いているように見える。


(アレがやってるのか?)


再び目の前のソレに視線を戻した俺は、両手を挙げたソレが何か呻いているのを聞いた。


(呪文、か?宇宙人が魔法使うとハイファンタジーかSFか分かんなくなるぞ?間を取ってローファンタジー?いや、間ってどこだ?いや、これはリアルだし、ファンタジーはないか。フィクションでも無いからSFでもない?あれ?何でこんな事考えてんだ?)


そんな感想を思い浮かべている間に、ソレの呪文は終わったようだ。こちらを見つめていたソレが、ニヤリ、と笑った気がした。


(今度こそオワタな。)


いつの間にか、手を挙げているソレの真上に、黒いモヤモヤが集まっていた。


元気玉の黒いやつみたいな感じだ。あれを食らったら、ただの人間の俺がどうなるのか、想像もつかない。


俺は目を瞑り、跪き、頭を抱えてアリスたんに祈った。


(最期に思い浮かべるなら、やっぱ可愛い女の子がいいな。アリスたんがいい。アリスたん最高。アリスたん最強。アリスたん助けて!)


絶望的な状況であるにも関わらず、いや、絶望的すぎて俺は俺の神に祈った。


次の瞬間、身も凍るような絶叫が聞こえてきた。聴いたことも無いような、いや、使徒がこんな声だったかな。


まぁそんな、悲鳴かノイズか分からない絶叫を聴きながらも、俺は俺の神に祈る。


俺の体は、自身の終わりを感じ、強張り、身動き出来ない。


それでもひたすら祈る。


(アリスたん最高!まじ踏んで欲しい。)


それが短い人生の最期(だと思った時)に思い浮かべた事だ。







それから結構長い時間待ったが、いつまでも痛みは来なかった。


(俺ってまだ生きてる?もう死んだ?どうなった?)


強張った体に更に力を入れて、ゆっくり目を開けると、非日常な光景は綺麗さっぱり消え去っていた。


アレは居なくなっていて、天気も快晴に戻っている。


全身から力が抜けた。


足の裏に地面の感触を感じる。生きてる。


腰が抜けるように座り込むと、今度は別の非日常が目に入ってきた。


ついさっきまでアレが居たそこには、別の非日常、『全裸の美少女』が倒れていた。


金髪だ。


目のやり場に困ると思いつつ、色々目視確認。


なるほどなるほど、こうなっているのか。ふむふむ。


あれ?この人見た事ある気が…………ま、まさか!このフォルムは!アリスたん!?


いや、3次だぞ落ち着け!アリスたんな訳が!いやいや、しかしどう見ても!いやいやいや、もちつけ!…………………


脳内会議の議題が、『こんな全裸さん(美少女)に、どうやって話しかけるか?』まで進んだ所で、その肝心な美少女が居なくなっている事に気が付いた。


議会は即解散となり、急に冷静になった俺は、ツライ現実の厳しさを目の当たりにして、普段の妄想が爆発したんだと自分に言い聞かせ、家路に着いた。


妄想で終わらせるにはちょっとリアルだったけど、それを確かめる機会はすでに失われた。


どっちにしろ、俺にあの美少女とお話するスキルはない。


全裸だったし。



全裸。




…………早く帰って、やらないといけない事が出来たな!



玄関を開けて、ただいまも言わずに2階の自分の部屋に向かった。


やる事は決まっている。


ネタは鮮度が命だ。


意気揚々と自室のドア開けると、そこには美少女が土下座で全裸待機していた。




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