若いころ
小説を書くのは難しいです。
うだるような暑さの中、仮設の売店で、セブンアップ1缶にバンバ、チートスを買った。非正規の売店員のそっけない態度が逆に俺を安心させた。
外は直射日光が燦々と照りつけている。そんな中、俺が乗るショット・カルという戦車が鎮座していた。辺り一面は緑のほとんどない乾燥した砂漠である。
「おい、遅いぞ、買物はさっさと済ませろ!」
戦車長のヨセフさんが憤然と、しかしけだるそうにボードを覗きながら注意してきた。「はいはい」と俺も気の抜けた返事をして自分の操縦席にスナック菓子を置き、自分で作った冷蔵庫にセブンアップを入れた。そうして油まみれのサスペンションを油まみれになりながら取り替えて行った。そのうちに砲手のダン、副操縦士のエミリーが話を始めた。
「ねえ、知ってる?ダン。敵の連中は私より幼い女の子でも戦車に乗り回しちゃうんですって。ほんと野蛮よね~。」
「何だ、エミリー、今さら知ったの?ま。学生上がりの子供は本当に世間知らずだな。」
「もう、何よ、ダンの意地悪~。」
「でも、エミリーが世間をもう少し知る前に戦争は終わるね。」
「そうだね。もうシャワーも碌に浴びられない生活なんてこりごりだわ。」
「エミリーのすっかり汚れた白クマの人形もクリーニングに出せるな。」
「ホントだよ~。すっかりヒグマみたいになっちゃったんだからー。」
まだあどけなさが残る2人の会話に、俺とヨセフ隊長も和んだが、こんなことをいつまでも続けさせるわけにはいかない。
「おい、2人とも。いつまでも無駄話するな!とっとと直すものは直せ。」
「はーい。」
やはり若い者がいると周りも元気になる。俺もまだ21なのであるが。ヨセフ隊長も
「最初は青臭い餓鬼どもと思っていたが、何だかんだで居ないとこまるよ。あの2人には。」
と言った。同感だ。そんなほのぼのとしたやり取りも、出撃命令でかき消された。