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第六十一話 王権

久々の更新です! 

 翌朝。

 カケル一家にとっては何も変わらない日常の一部を過ごしているが、葵にとっては全てが新鮮なものに感じていた。

 まずは、起床時間。寮は基本休日以外は起床時間が決まっており、自由な時間に寝たり、起きたりと出来なかったのだ。それが今は、読書で夜更かしをしたり。朝食が出来上がった声で遅めに起きる事が出来る。朝食もそうだ。決まった献立が出てくる寮に比べて、カケル家では母の味のご飯が食べれる。それに、残り物のリメイクなどと言った美味しい『変り種』が食べれるので、毎回楽しみにしていた。


 「これなんですか!? こんなのは学食になかったですよ!」


 「あーそれは肉じゃがをリメイクしたミニカレーですね。朝からだと、その量が丁度良いんですよ」


 今日の献立は『味噌汁、ミニカレー、サラダ、コロッケ』朝から脂っこいコロッケは合わないだろうと思うが、これが案外合うのだ。カレーと一緒に頬張り、味噌汁で流す。これが永遠と続けれるほど美味いのだ。


 「やっぱり朝からコロッケは苦手……」


 カレーとサラダしか食べていないモーリスは、コロッケを端で突きながら睨んでいた。あちらの世界でもそうだったが、あまり脂っこい物は好んで食べる人ではない。ましてや朝から脂っこい物なんて論外中の論外。


 「モーリスさん、コロッケさんをいじめないで下さい。それと残すのはいけませんからね!」


 母と朝食を作ったミーニァから叱られ、渋々食べ始める。だが、一口一口がちょっびっとなので、これではいつ食べ終わるのかも分からない。カケル家では、朝から脂っこい物が出てくる日はこんな感じなので葵以外は慣れっこ。


 「ほら、カケルさん。早く食べないと遅刻しますよ!」


 時計を確認すれば、針は登校完了十分前を指していた。家から近いとはいえ、油断をし過ぎていた。走れば五分程度で着くが、それはカケルだけの話。葵は食事を取った後、顔や髪など色々整えないといけないので、時間が掛かる。それに葵はパジャマ姿。このままだと遅刻確定。


 「ヤバイ!! ごちそう様でした!」


 「葵! 早く! このままだと遅刻だよ!」


 「分かっているよ! 今限界の速度で身支度しているの!!」


 こう言いながら急いるが、今一から準備をしているのだから間に合うはずもない。すると、コロッケと対決をしていたモーリスが右手の人差し指をたてると紫白く光り出す。


 「お主は制服を着て、鞄に教科書を詰めておけ。身なりは整えてやる」


 無詠唱魔法であっという間に葵の顔と髪が整っていく。普段から自分に使用しているの魔法だろう。前の世界でも、この世界でも自分から進んで優しくする事を見かけなかったので、カケルは少し驚く。


 「有難うございます! よし! 行こう!」


 「お礼はこのコロッケでな」


 「「行ってきます」」


 扉が閉じる瞬間、ミーニァが叱っている声を聞いて苦笑いするしかなかった二人であった。




 学園に到着すると、ちょっとした騒ぎになっていた。それもそうだ、昨日あんな盛大にやらかしたのだから、無理はない。教師が規格外の魔法を放ったことを他の教師に伝え、それが徐々に色んなクラスにまで広まってしまった。そのせいで、昨日教えた3人が囲まれ、そこだけがごったがえしている。


 「あれって昨日のせいですかね?」


 「た、多分そうだと思う……これはやりすぎてしまったかな」


 人間団子の中には三組の生徒がチラチラと見えるので、上位クラスの生徒でも興味がある事なのだ。


 「どうします? あのままだと事態は悪化しそうですけど……」


 三人は全方位から圧迫されて、苦しい表情で今にも押し潰されそうになっている。


 「まあ、昨日教えた責任があるから、ちょっと助けてくる」


 カケルはその場で最大限力を発揮できる魔法を創造始めた。イメージするのは電話と命令と線。

 電話は誰かに何かを伝えるイメージで。命令は精神から絶対的に服従させるイメージ。線は目には見えない魔法の線で頭脳に繋げるイメージ。それをカケルの頭脳で構築していき、創造は成功した。


 ユーピテル[王権]

 他人に何かを伝えたり、命令したり出来る。その使用方法は使用者次第。

 王としての権利を他人に執行出来る能力もあり。


 カケルは新しく生まれた魔法を早速使用した。


 『邪魔だ。そこから退け』


 執行対象にされた者は三人から徐々に離れていく。魔法をかけられた生徒は皆勝手に動く体に混乱していた。

 そして、カケルの口調についてだが、これは意識しているものではない。完全にユーピテル[王権]によるもので、この口調が治ることはない。


 「ごめん、僕のせいでこんな事になってしまって」


 三人はカケルの謝罪より、今の人が退いた現象が気になって仕方ない様子。


 「あの魔法については教室で話してあげるから、今はここを離れよう」


 「すみません、助けて頂いて」


 「そうですね」


 「私がまだ未熟者だから……」


 三人とも色々な感情を抱いているが、後で葵がカバーしたことで落ち着いた。

 やっとカケル達は教室に戻れるかと思ったが、ここは実力社会。カケルの態度に当然納得のいく者は居ない。という事は自然とトラブルになる。


 「おい! てめぇ! 俺達はこの子達に用があんだよ! 底辺の雑魚はうせろ!」


 道を塞いだのは人間団子の中で一番組が上の三組の生徒達。一番下のクラスの生徒に舐められた態度をとられたからか、激怒している。


 「同じクラスの友人が遅刻してはいけないので、一緒に向かっているだけなんですが? 僕は間違ったことをしていますか?」


 「ああ、間違っているさ。全て間違っているさ! もういい……手加減するつもりだったが、本気で奪う!」


 「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 三組の生徒は怒り任せに各自得意魔法を放とうとしたが、いつの間にか体は地面に張り付いていた。


 「魔法無効、黙れ、地べたに這い蹲れ」


 今度は言葉にしながらユーピテルを使用した。ユーピテルは言葉に現した方が効果は増していくが、カケルの場合増し過ぎてしまう。そのせいで這い蹲っている場所だけ床に亀裂が幾つも入っている。この時、這い蹲るイメージを上から押し付けるようにした為、普通ではない亀裂が出来ているのだ。


 「三人は君達の物でもないし、君達が絶対ではない。今は手加減したけど、次友人に手を出したら……」


 「殺すよ」


 他の生徒は三組の現状を見ただけで恐ろしく感じていた。それだというのに、最後の言葉に込められた濃密な殺気で膝が笑い、歯をカチカチと鳴らし、人間の本能が危険と警告していた。だが、恐怖のせいで足が動かず逃げることが出来ない。

 

 「さ、教室に向かうよ! 遅刻してしまうからね!」


 カケルは何事もなかったかのように、笑顔で教室に向かった。

執筆の勘も戻ってきたので、二作同時進行していきます。

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