第五十四話 敵
更新が遅れました。
『そうだ。この戦闘訓練で色々試したいことを試していこう』
カケルが今考えているのは、盾を自分を守らせる以外にも活用出来るか、出来ないか。
先ほど、盾で人間と武器を跳ね返したので、それをもっと効率良く使えないかと考えたのだ。
毎日漫画やラノベ。ゲームをしていた時の経験が活かせる瞬間ので、まずはそこから真似ることにする。
「う、うぅ……」
彼は大剣を支え棒のようにして使い、何とか立ち上がるが簡単には回復しない程のダメージ量。衝撃の瞬間、体中に防御魔法を付与しておいたので軽減は出来ていた。だが、彼が見込んだダメージと実際のダメージは圧倒的に差があり、甘かったのだ。その甘さは、最初の盾の時点で気がついておくべきのもの。もし、それが戦場だと突然現れた未知数の敵に殺されることになる。
そうならない為の訓練なのに、力に酔い浸り過ぎている。
「お前何者だ!? 誰もお前の事なんか一度も見てないぞ!?」
それを聞いたカケルは目を丸くし、『今このタイミングで思うことか?』と笑いかけたが、何とか耐える。
「そりゃそうでしょ。だって今日転入して来たんだから。俺の事なんかお前らも知らないし、クラスの皆も知らない。まあ、でも初日からこんな馬鹿で弱そうな奴らに格の差を見せ付ける良い機会だな」
この世界に良い感情を持っていないカケルにとっては、今まで馬鹿にしていた者たちを見返す良い機会になっていた。現代世界に戻ってきた理由も、エリンの命令、親と再会、馬鹿にしていた奴らをボコボコにする為に来ているものだ。王女の命令が無ければ現代世界で親と合流し、世界を救わずに異世界に帰るという選択しをこの世界を見放していただろう。
そう。カケルにとってこの世界を救うとかは命令だけでしかなく、本来の目的は馬鹿にしていた奴らを見返す事だけなので、今はその絶好のチャンスなのだ。
「それじゃあ、君には色々と犠牲になってもらうね」
そう。この瞬間、彼いや十四組はカケルの八つ当たりの対象になってしまったのだ。理不尽な怒りだと反発したとしても、その声は届くことは無い。今まで散々カケルの人生を滅茶苦茶にしたのはこの者達ではないが、先ほどの行為で『こいつ等はあいつ等と同類』になってしまったので、この世で一番憎い敵の仲間入り。なので、これは八つ当たりではなく過去に対する倍返しになる。
カケルは強化魔法を脚に付与し、ふらついている彼との距離を縮める。その様子に気がつき、全力で防御の態勢になるが目の前には誰も居ない空間がただただ広がっているだけ。そこに誰も居ない事を視界に捉えたと同時に、彼の左頭部に重い一撃が当たる。体に力が入っていない状態の態勢だったので、彼の体は競技場中央まで飛ばされた。
「ひ、一つ一つに動作が速すぎる! 俺達の強化魔法と同じはずなのに、脚の速度が全く比べ物にならない!?」
「お、おい……本当にあれは何者なんだ……この学園の生徒会長を遥かに超す力だぞ。あれ」
他では見たことの無い行動、速度、威力に両クラス驚きの表情を隠せておらず、これから戦う十四組は恐怖に駆られている者も少なからず居る。
両組とも一瞬の出来事で何が起きたのか分からなく、理解に苦しんでいた。簡単に説明をすれば、カケルは彼の間合いの一歩手前に紫色の盾(反射の盾)を踏んだときに斜め右に飛ぶような角度に配置。それと同時に空間の着地点に左頭部に打撃を与えられる角度に盾を配置。それを強化魔法で付与された脚で踏んだので、反射される威力は莫大に増幅。カケルは観察眼を使い、盾の着地角度をしっかり見ながら調整。そして、一瞬で左頭部に目掛けて強化魔法が付与された拳で重い一撃を与えた。
「う、うぅ……」
衝撃による唸り声を上げたが、その後意識を失い十四組一位の彼は十五組の転校生に敗北した。
「す、すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!! 十四組一位の奴に勝ったぞあいつ!」
「確か名前は相馬 カケルだっけな?」
「やばい奴が十五組に来てしまったな……でも、今度のクラス入れ替えの模擬試合で二組ぐらいまで行くんだろうな」
この前の模擬試合が二日前に開催されたばかりなので、試合まで時間は少ないがある。
今のカケルは全力の五%ぐらいしか出してない。なので、全力でやれば一気に生徒会の座に座ることも可能。
「今のが十四組一位の人だったのか。嘘でしょ? めっちゃ弱くて余裕だったんだけど」
実際に打撃を与えたのが今の一撃だったカケルは、まさかあれだけで終わるとは予想していなかった。帰還者で各世界の強敵を倒しているわけで
、ゼクスと同じ位の力量だと思っていたが、実際は魔法学園の誰よりも弱い。学年を関係なく一番強いカケルはそんなの敵と言うよりか、自分の戦略の実験相手にしかならなかった。
「で、早く次の相手出てきてよ。あれ? もしかしてビビッタ? 君達は弱者をいじめていたのに、いざその立場になるとそんな態度をとるのか」
十四組にはさっきまであった余裕の態度は全く見られない。
膝は恐怖で笑い、目尻には涙が浮かぶ。
戦いたくないのか、一番後ろに並ぼうとする。中には降参する者も。
だが、そんな卑怯者を許す事は無かった。
やっているのをただただ見て、止める行為、気持ちさえ感じられない奴らが許されるはずが無い。当然、その行為を行った本人も。
「ほら、早く。どうせなら全員で来いよ。ボコボコに叩きのめしてやる」
「お、お願いだから助けて……」
それでも許しを願ってくる者の言葉は、逆鱗に触れてしまった。
「今までの行為をしてよく許してと言えるな。多分こいつらも同じように許してと言っただろうよ。だが、お前達は止めなかっただろ? だから同じようにするんだよ。プライドも帰還者としての肩書きも滅茶苦茶にしてやるよ」
もう、こうなってしまっては誰もカケルの事を止める事は出来ない。敵に対する殺気の圧力が凄まじく、その場に居るのがやっとで立ち上がれる者は居ない。居るはずもない。
時間が経つにつれて、周りの具現化している魔力の色が一層濃くなっていく。魔力が濃くなっていくという事は、だんだんカケルの力が上昇している何よりの証拠。
仁王立ちをして相手を待っているカケルだが、挑戦者は誰一人現れる事無く『許してください』と繰り返すように言い続けている。
十四組の願いが神にでも通じたのか、競技場の通路の奥の方から声が聞こえた。
その声は学園皆が聞きなれている声。
そして、その声はカケルも聞いたことのある声。一番聞きたくなかった者達の声。
「何をしている、そこの者」
「如月様! た、助けてください!? そこの化け物が……」
競技場内に入ってきた途端、十四組全員に助けを願われた如月達はは、原因となった人物に視線を移す。
チッと舌打ちをする如月。
未だに目の前の人物が分からない田中、朝霧。
視線の先に立っている人物が誰なのか理解していて、感激している西野。
「……やっぱりこの学園に居たのか」
通路から現れた如月達はカケルを学年でいじめ、不登校に追いやった人物。そしてカケル自身が一番憎んでいる”敵”。
周囲に放たれている殺気の圧力はますます増していき、一歩でも動けば殺される程の領域。
その圧力には如月達も飲み込まれ、一歩も動けない状態。
「あれってあいつなのか!? それにしても変わりすぎだろ……」
「カケルさん!やっぱり生きていたのですね!」
カケルと言う単語で目の前に居る人物を理解出来た田中と朝霧。死んでいたはずなのに……と小さくぶつぶつ言いながら驚きの表情を隠せていない。
「あれがあいつなのか!? ありえないだろ!」
「そうよ! 嘘に決まっている! こんな殺気をぶつけられる根性なんて無かったのに!」
今まではこの世で一番恨んでいる如月達に歯向かう事は無かった。だが、彼らより力を持ったカケルは過去とは別の人間に生まれ変わっていた。
この世界は強い者が上に立ち、弱いものは強い者に歯向かうことすら許してもらえず、痛めつけられる。だが、その弱者が力を持ったらその関係は真反対になる。それは差別化をしている権利者も同じ。
「久しぶり、と言っておこうか。それでここに来たという事はそれなりの覚悟があってだよね?」
殺気の威圧から放たれる冷めた言葉。
この言葉で四人は戦闘態勢をとらざる終えなかった。
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