第四十七話 急な出来事
あの事件から一週間が経過した。
今日はアイの退院日であり、再び学園に登校する日でもある。
カケルからしたら、こんなに長い一週間は今までにないであろう。
なんせ、授業中もまだか、まだかとワクワクして待ち切れなさそうな様子だったからだ。
事件の事は本当に親しみのある人物だけにしか伝えず、一切その他の人物には情報が漏れることは無い。
あの後の貴族はと言うと、外傷を負ったわけではないので、自分の足で歩き屋敷に戻った。怪我1つ無く帰ってきた主を見たメイドは普段通りに接する。
だが、実際は心に大きな傷を負っており、ずっと部屋に閉じこもりあの時の恐怖に怯えているという。
当然、自分の行動で招いた結果だから自業自得。
そして長い間学園を休んでいたアイが、登校してきた。
「皆、ズル休みだ~とか言わないかな。心配でしかないよ」
学園を長い間休んでいたんだ。自然とこういう思考になるのは自然な事だ。
中には心配しすぎて学園に行けない人が何人か居り、そのまま不登校になってしまった生徒居るそうだが、今回アイはそんな風にはならないだろう。
何故なら、学園の入り口の門に男一人。女一人が出迎えていたからだ。
「ミア先輩、アイさん来ましたよ!」
「本当ね。やっとだね」
カケルとミアだった。
カケルはよっぽどアイが来るのが嬉しかったからなのか、子供のように飛び跳ねたりして喜んでいる。
一方ミアは相変わらずのクールだ。
アイは二人の元へ行き、今思っている素直な感情を伝える。
「その、色々と迷惑をかけてしまい、本当にごめんなさい。特にカケル君は身の危険まで及んでしまった……本当にごめんなさい」
「いえいえ、自分は気にしてはないので大丈夫ですよ」
カケルと同じようにミアも励ますと思いきや、そうではなかった。
「アイ、私達はペアなの。だからあまり私達をこの前の件みたいに心配させないで」
その言葉を聞いたアイは反省している面持ちになり、頭を垂れる。
それを見てミアは言い過ぎたと、自分の中で反省したのか言葉を付け加えた。
「まあ、私達は何度も言うけどペアなんだから、辛い、きつい、助けて欲しい時は気軽に相談してきても良いからね」
これも、ミアなりの優しさだろう。
きつい言い方をしたが、それは本当にアイが心配で一人の親友として大切に思っているから出てくる言葉。それはアイも分かっているので、思いはしっかりと伝わった。
「じゃあ学園へ行きましょう!」
カケルはアイの教室の真ん前まで着いていき、最後に『頑張れ!』と応援で見送る。
ミアはアイの教室に行く途中に教室があるので、先にお別れとなった。
モーリス学園長が担任の教師に事情を説明してくれたので、生徒たちの受け入れも早かった。
元々アイは人気だったのも理由の一つなのかもしれない。
いつもの通り授業を受け、楽しそうに学園生活を送れるようになったのだ。
一方カケルの方はと言うと、モーリス学園長と学園室で会話中。
何故こうなったかと言うと、モーリス学園長はカケルを探している途中で偶然見つけ学園長室で話したいことがあると伝え、今に至る。
モーリス学園長はただただ、紅茶を飲むだけで話を切り出さない。
それでカケルは自分で話を聞きだすことにする。
「あのー話ってなんですか?」
すると、飲んでいた紅茶をテーブルに置き足を組む。
足を組んで少しでも色気か大人っぽさを出したかったのか、解らないが子供っぽさは変わらない。
「今からエリン王女の元へ行くぞ。彼女が言うに緊急事態らしい」
「緊急事態なら早く言ってください!!」
「馬車はもう門の前に停めておる。早く行くぞ」
「はい」
『えぇ~さっきまでは停まってなかったのに、いつ来たんだよ~』
モーリス学園長はカケルの担任に特別休暇と前々から伝えてたので怒られることは無い。
馬車に乗り込むとすぐに走り出し、あっという間に目的地に到着する。
いつ見ても大きな門で威圧感がある。
「では行くぞ」
「はい」
モーリス学園長が着いて行く理由は、カケルは学園の一生徒で、学園の責任者は学園長。
それに、今この時間帯は授業中で学園に居なければいけない時間帯。
ということは、今現在のカケルの責任者はモーリスとなっており、関係が無い話でも付いていかなければならない。
緊急事態の事だからか、宮殿専属の兵士がエリン王女の元まで最短ルートで案内する。
恐らくエリン王女が居るであろう部屋の前で止まると、兵士は一礼し去っていく。
あちら側が開けてくれるのを、待っていると、位など関係無しにモーリス学園長は扉を開け中に入る。
一瞬驚いたが、これはこれでチャンスだと思ったカケルも中に入る。
「急に御呼びしてしまい、申し訳ございません」
エリン王女はカケルに会って早々深々と頭を下げる。
「いえいえ、そんな事はないですよ」
普通は王女が定位置の椅子に座り、客が前に来るのを待つが、今回は違った。
エリン王女自らカケルの所まで足を運び、話をし始めたのだ。
「では、早速本題に入らせていただきます。私が以前この今居る世界が危険に晒されているのはご存知だと思います。そして今まではこちらに向かっていた危険が他の所へ向いてしまったのです。これは普通はありえない異常事態です」
「何となく理解は出来ましたが、その危険はどこに向かっているのですか? エリン王女の話からしてもうどこに向かっているかは解っているんですよね?」
エリン王女は一呼吸置き、言いにくそうな表情をしながら口を開く。
「地球です。カケルさんが元々暮らしていた地球です」
「は? 冗談ですよね?」
「…………」
カケルは何がどうなったか、その場、その瞬間では理解できなかった。いや、理解したくは無かった。
いくらあの世界には嫌な奴がいたとしても、支えてくれた家族が居るのだ。その人達が死ぬという事を考えただけで、皆寒気がするだろう。
そして、カケルは一つの決断をする。
「自分、地球に戻ります。だってその何かは解らない危機から救えるのは、この俺だけでしょ!」
「そう言うと信じてしました。では、今から言う人達は一緒に同行してもらう人たちです」
エリン王女は次の名前を挙げた。
モーリス・ヘケテカーミン。
ミーニァ・ウレフ。
フローラリア。
カグラ。
「え? ミーニァさん達も付いて行くんですか?」
「ええ。あの人たちはもうカケルさんの家族みたいなものでしょうし」
「はい。それは有難いです」
エリン王女はカケルと向き合っていた体の向きを、モーリス学園長に向ける。
「では、これからは貴方に任せますね」
「はい。任されました」
その後の話では、地球に行く者は宮殿に泊まることになり、出発は明日になった。
それぞれ持っていくものや、片付けなどとしなければいけない事に追われることになる。
カケル家で皆が集まったタイミングで地球に行く件を話すと、驚いてはいたが納得してくれた。
皆が一緒に行く安心感もあるだろう。それに一番の決め手は、フローララリアが大喜びしワクワクしていたからだ。
纏めた荷物は家の中に一箇所に置いておけば、宮殿の関係者が回収に来るそうだ。
カケルは最初フローラリアが駄々こねて荷造りが苦戦するかと思っていたが、予想外の自分自ら行動してくれたので、早く終えた。
カケル家一同は宮殿に行き、客人用の部屋に泊まる。
モーリス学園長はカケル達より早く荷造りが終わったのか、既に宮殿内に居た。
この世界では最後になるだろう豪華な夕食も食べ、カケル以外の者はすぐに深い眠りに入る。
一方カケルはこの世界で関わってきた数少ない人達のことを一人一人思いだしていた。
その中の三人のことを思い出すと、自然と涙を流していた。
「あぁ……お別れの挨拶もしてないのに……」
そして、出発当日を迎えた。
更新が遅れました、すみません。
展開は急転したので、次話を楽しみにして頂ければ……
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