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第四十五話 雷竜

 アイは昨日ミアと話した内容そして自分の置かれている立場をカケルに話した。

 多少は距離を離される事を覚悟していたが、それは逆で距離詰められる。

 最悪死んでしまうと告げると、一度は悲しい顔を見せ。その次は任せて下さい! と胸を張り守る事を決意した。

 

 それからというもの、アイには積極的に接していき。

 闘技場でも訓練も身の安全を守るようにずっと一緒に居た。

 その光景を異常と見た周りはカケルを『ストーカー』とあだ名を付け、自然と名は学園内全体に拡散していった。

 あだ名を付けられている本人は過去に既に経験しているので、別に痛くも痒くもない。

 というか、アイの身を守ることに集中しているのであだ名を付けられていることすら気がついてない。


 そして何も起きず一日が終わった。


 二日目。

 学園では変化は起きなかったが、家ではカグラとフローラリアの関係が少し良くなった事が変化だった。


 三日目。

 ミアはまた学園に来なくなった。

 またこの前のように自分の正体がバレたくないからとカケルは思っていた。

 だが、そんな期待は容易く打ち砕かれる。


 四日目。

 カケルの家に一通の手紙が届く。

 送り主は書いていない。

 考えられるのは1つだけ。宅配する専門職業の人ではなく、故意に入れられたもの。

 手紙を開け、内容を読んだカケルの顔は青白く豹変し、手は震えている。

 それを見た、ミーニァとカグラも手紙の内容を見る。


 「えっ……」


 「そんなアイさんが……」



 

 アイ・フレンは処刑することに決まった。

 呪われた種族がこの世に居てはいけない。存在してはいけない。

 もし、そなたが助けたいと言うのであれば、明日の正午に王国外の丘に一軒だけ建っている家で待っている。




 ミーニァはアイとの面識はあるので、どんな人物か分かる。もちろん、呪われた種族のハーフについても。

 カグラは誰かは分かってはない。だが今カケルどんな気持ちでこの人の事を思っているかは理解している。


 「アイさんを守れなかった」


 カケルはただただ、悔しくて、悔しくて泣いていた。

 顔はくしゃくしゃになり、鼻水も垂らしている。

 大切な人を守れるぐらいの力を手に入れたと思っていたのに、守れなくて悔しかったのだ。

 悔しさが絶頂に達したとき、カケルの心の中にはあるもう一つの感情が芽生えていた。


 「アイさんを助ける。そして犯人を殺す。たとえ相手が王国の関係者だとしても殺す」


 殺意だった。

 今まではミアの件。セレスの件で怒りは見せたが、殺意が沸いたのはこれが初めてだった。

 それほど"処刑"の二文字はカケルの心の中に響いたのだ。

 そして、逆鱗に触れたことで今までに誰も体験したことの無い殺気を身に纏い、手紙を握りつぶす。


 近くに居たミーニァも闘技場での怒りとは全く桁違いなものだと理解すると、体全体の震えを押し殺すかのように止めるので精一杯。

 カグラは、今まで経験したことない殺気に『ヒッ』と小さく短い悲鳴を上げる。その濃密さにはまるで近くにいるだけで殺されるかと思っていた。

 フローラリアはと言うと、まだ何のことか理解していない様子。今の状況を理解してしまったら、家の中は大変なことになっていただろう。



 その日の夜。

 カケルは目を瞑り、周りの人間から見たら寝ていると思われるが、実はマーズと会話をしている。

 マーズはカケルの視野、聴覚、感情とリンしている。なので今どんな事が起きているのかも知っている。


 『何か、大変な事に巻き込まれているわね』


 マーズはニコニコと笑顔を浮かべながら、カケルの事を見ている。

 

 『一体どうすれば良いんだ……今の俺でも救えるのか』


 何度も何度も悩み、髪をくしゃくしゃにしている。 

 よっぽど自分にイラついているのか。


 『そうだね、私の全てを授けたらきっと君も、彼女も無傷で済むだろうね』


 その言葉を聴くと、すぐに顔を上げ、表情を明るくする。

 だが、その言葉にはまだ続きがあった。


 『だけど、今の君じゃ代償が必要になる』


 『その代償ってなんだよ!』


 『君の寿命の一部さ』 

 

 その言葉を聞いた者は普通は代償など払うはずが無い。

 他人も為に寿命。人生の一部を捧げるなど絶対にしない。

 だけど、カケルの考え方は違った。


 他人の人生が全て無くなるのと、自分の人生の一部を捧げるを比べたら他人の人生の方が大切。


 そして、カケルの考えが決まる。


 『代償を払うよ。救えるのなら』


 『解った。なら私も明日に備えて眠るとしよう』


 その後カケルはマーズとの会話が終わり、本格的に睡眠に入った。




 翌日。

 カケルは登校する時間帯から王国外の丘へ向かっていた。

 もちろん、学園は休んでいる。

 しっかり睡眠も朝食も取れたので、体調は万全。

 昨日より体から発する殺気が増しているからか、まるでそこは王が歩いているように、自然と道が開けていく。別に偉いわけではない。ただ、近くに居たら殺されると人間の本能が言っているからであろう。

 今日は運が良く、学園生徒とは誰一人ともすれ違わなかった。いや、誰一人姿を見なかった。

 少し妙だと感じたが、考えるべきではないとカケルは判断する。


 そして、王国を抜け丘に目をやる。

 そこには幽かに建物らしき物が建っていた。


 「あそこに居るのか」


 建物に近づく程殺気はどんどん濃密になっていく。

 もうその姿は人間ではなく、『化け物』となっていた。


 カケルは遂に目的地にたどり着いた。

 建物は廃墟ではなく、しっかりと手入れがされていて、まだ誰かが住んでいた様子。

 カケルは『着いたぞ』とは言わず、『おい』と脅すように建物に話しかける。

 すると、木で出来た扉がきぃぃと木と木が擦り合わせた音を出しながら開いた。

 そこから出てきた人物を見て、カケルの目つきが険しくなった。


 「着てくれたか、ソウマ カケル君。いやぁ~君を待ちそびれて殺してしまいそうだったよ」


 この前学園に来た貴族が最初に姿を現し、その後アイが兵士に髪を掴み引きずられながら姿を現す。鼻からは血を流し、肌には打撲痕だあった。腕には鎖が繋がれ、その姿は本当に処刑人に見えた。アイだけどと思っていたが、まだ誰かが出てくる。

 大人の男性。それに大人の女性。しかも女性の方はエルフだ。


 「この人達は彼女の両親だよ~。全くこんな近くに住んでいたなんてね」


 「私達はどうなってもいい。だから、アイを離せ!」


 「そうよ! 離しなさい!」


 「裏切り者は黙っていろ!!」


 一度はアイの両親に視線を向けるも、すぐにカケルの方を向く。


 「さぁ! カケル君。君はこの三人の裏切り者を助けたいかな?」


 「その為に来たんだろ」


 貴族とその場に居た兵士は高笑いし、カケルの発言を馬鹿にする。


 「それでは、君にはこいつと戦ってもらおうか! 出てきなさい! ドラゴン!」


 両腕を天に掲げ、叫ぶと、天候が急変し空は真っ黒くなり厚い雲に覆われる。

 その空から雷が放たれ、カケルの十メートル先に落ちる。

 落ちた場所にはさっきまで何も無かったが、今は大きな大きなドラゴンがそのには居た。


 「雷竜か……」


 カケルはその姿をしたドラゴンの名を知っていた。

 この世界には五天竜と呼ばれるドラゴンが存在しており、雷竜はその中一体。

 全身に雷の鎧のように纏い、鎧といっているように防御にも使い、攻撃にも使う。

 その姿からまたの名を雷神とも呼ばれている。


 「さぁ! ドラゴン! そこに居る人間を肉片も残さず抹殺しなさい!」


 「グガオォォォォォォォォ!!!!!」


 人間の姿をした化け物、対、神とも呼ばれる雷竜の戦いが今始まる。

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