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第十七話 帰り道

最近話の流れが遅いような。

 私は今罪悪感に浸っていた。

 だって私は関係のない人物を傷つけ、守れなかった。

 あの時。もしあの時に戻れるのなら、直ぐにでも戻りに行きたい。彼が傷つく前に。

 

 治療室のベッドに仰向けで寝ながら、そんなことを考えていた。


 どうやって謝ろうかな。

 普通に謝ってもダメだし。

 だって彼の心にも傷が付いたかもしれないのに、私はどうしたら良いのかな……。


 考えてることが自然と口に出てしまったらしく、側に居たアイに全て聞こえていたらしい。


 「別に気にすることではないと思うよ。カケル君もきっと許してくれるよ」


 アイは私に向かって優しく微笑みながら、そう言った。


 「そういうものなのかな。だって私のせいで……」


 「だから!カケル君はそんなの気にしてないよ!ちゃんとミアさんが謝れば気持ちは伝わるし、許してくれるよ」


 アイはミアの言葉を遮りながら、否定した。


 「取り敢えず、来るまで待とうよ」


 「そ、そうね」


 話を切り上げた数秒後に廊下から、ドタドタと誰かが走ってる音が聞こえた。

 次第に音は大きく、近く聞こえるようになった。その音は扉近くで止んだ。


 『ガチャリ』と音をたてながら治療室の扉が開いた。

 二人は音がした扉の方を見た。


 そこから現れたのは、ミアのペアの相馬カケルだった。

 カケルは相当な距離を走ってきたのか、息が荒くなっていた。

 そして扉の前で呼吸を整えると、二人にが居る所へ歩み寄った。


 「ミア先輩!怪我大丈夫でしたか?あ!アイさんも来てたんですね」

 

 カケルはミア、アイの巡で顔を見た。

 そして、ミアは教師達が回復魔法をかけてくれたから、明日になれば歩けると聞いてホットし、肩の力が少し抜けた。


 「カケル。そ、その……巻き込んでしまってごめんなさい」


 私はアイに言われた通りに、素直に謝った。

 もうこれで私はペア解散ね。


 「へ?なんで謝るんですか?」


 彼から帰ってきた言葉に、私は下を向いていた顔を驚いて上げた。

 なんで怒らないの?私はあなたを傷つけたのに。

 

 「なんでって私のせいであなたを傷つけたから」


 「あ、ああー。僕のことなら大丈夫ですよ。もう怪我も治ってますし、気にしてませんよ」


 傷がもう治った?私と同じぐらい怪我をしていたのに、何でもう治ってるの?

 私は彼が気にしてないと言った部分より、怪我がもう治った部分に疑問を持った。

 教師に聞いたところでは、学園長の所に運ばれたと聞いたが確かにありえる話だ。


 「カケル君はミアさんと同じぐらい怪我をしていたのに、何でもう治ってるんですが?」


 ミアが疑問に思ってることをアイが質問してくれた。

 今の立場じゃ聞きにくいので、少し助かった。


 「それを今から説明します」


 カケルはにこやかな表情から、真剣な表情に変わり、学園長に言われていたように、今まであったこと〔力について〕を話した。

 強力な力が眠っていたこと。

 力が意識のない時に覚醒したこと。

 そして力の正体が、今は声だと分かったこと。

 

 「…………とまあこんな感じです。そ、その信じて貰えますか?」


 二人はカケルの言ってる事を信じる他なかった。

 二人は目の前でその力が覚醒する瞬間を目撃していたからだ。


 「まあ。目の前で見たから信じるしかないけどね。でも、あんなに強力とは思わなかったけどね」


 「確かに、カケルの話を聞くと怪我が治るのも納得するね」


 覚醒した力に、恐らく回復能力は付いている。

 だけどそこが問題ではない。

 まだ、使い方が分かってない力が有るかもしれない。今でも強力なのに、もっと強力になったりした場合、噂を聞きつけた他の国やこの国の貴族が駆けつけて来るに違いない。

 今は公で力を使うことは避けた方が良い。とミアは考えていた。

 

 「カケル。今は公でその力を使うのはやめておいた方が良い」


 「何でですか?折角力が手に入ったのに」


 「じゃあ想像してみて。あなたの力を聞きつけた貴族が、学園に押し掛けてくる様子を」


 「……確かに学園には迷惑をかけたくないです」


 「でしょ?既に目立っているのに、さらに目立つのはあんまり良いとは言えないから、今は控えてくれる?」


 「はい。そうします」


 カケルは落ち込んだ様子だった。

 二人の会話を聞いていたアイはクスクスと笑っていた。

 疑問に思ったミアは首を傾げた。


 「いやー。もうさっきまでの落ち込みはどこに行ったのやら」


 「い、いや……。その……つい」


 ミアはしゅんとすると、アイは片手を慌てた様子で違う違うと言った。


 「別に怒ったわけではないよ?ただからかっただけだよ?だからそんな顔しないで」


 「そ、そう?なら良かったけど。カケル。何度も言うけど本当にごめんなさい」


 「も、もう良いですよ。これで何度目なんですか!そろそろ元に戻って下さい」


 ミアは会話の最中に、何度も何度も謝っていたのだ。

 それも、カケルが引いてるぐらいに謝っていたのだ。

 そろそろ、嫌になったカケルは強めに言っていた。


 その後はミアもいつもの調子になり、話が弾んだ。

 闘技大会の話をした後は、プライベートの話で盛り上がった。

 そうして楽しい時間も過ぎていき、気がついた時には黄昏時だった。空は薄いオレンジ色に染まり、一日の一部の時間しか見れない絶景だった。


 「もうこんな時間か。ミア先輩。僕たちはもう帰りますね」


 「そうね。話し相手になってくれて二人ともありがとう」


 「いえいえ。私たちペアなんだから当然だよ!」


 「そうですよ。当然ですよ!」


 とアイ、カケルが反応した。

 そうして二人は治療室を後にした。

 一人治療室に残されたミアは、許してくれたことが嬉しく布団の中にうずくまった。


 ほ、本当に許してくれた。

 アイが言っていたように許してくれた。

 これで今までみたいに接することが出来る!

 良かった。本当に良かった。うん良かった。


 

 日が出てないからか、外は少し肌寒かった。

 僕一人で帰っていたら、恐らく寒い寒いと言いながら小走りで帰ってただろう。

 だが今は隣にアイさんが居る。

 今まで誰かと一緒に帰ることが無かった僕からしたら、嬉しくて嬉しくて興奮していた。

 その興奮のせいなのか体温が上がってる感覚があった。

 これが人の温かみなのかな?


 無駄話を帰りながら話していた。

 こんなに帰り道が楽しいと感じたことはなかった。

 確かに、一人で帰るのも良いものだった。周りの景色がゆっくり見れたりして、それはそれで楽しい。

 でも、やっぱり一緒に帰る方が一人の時より何倍も楽しいのだ。


 楽しい時間はあっという間に過ぎていき、もうお別れの時間になった。

 

 「私こっちの道だから。ここでお別れだね。じゃあまた明日。お休みなさい~」


 アイさんは十字通りを左に曲がり、僕は反対の道右に曲がり、歩きながら手を振った。

 僕もそれに反応すると、初めてのバイバイだったので少し緊張しながら手を振り返した。

 アイさんが手を振らなくなるまで、僕は振っていた。

 

 嬉しくなったからなのか、ルンルンとスキップをしながら帰っていた。

 周りが彼を見たら「良いことがあったのかな?」や「嬉しそうね」と呟くだろう。

 これもまたいつの間にか家の前に着いていた。


 「ただいま~」


 カケルは家の扉を開いて家に入った。


 

誤字、脱字がありましたら報告お願いします。

もう少しで第一章が終わる予定です。

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