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到達者
それから男は、仕事帰りに本屋へ行って、
その本の続きを買って帰るのが日課となりました。
毎日が楽しくて仕方ありません。
『へへへ。
こんな凄いことがあるなんて。
世の中びっくりだね。
あともうちょっとで全巻読み終わるぞ。
全巻読んだ時、僕は真理に到達したことになるんだ。
へへへ』
毎日、家に帰るのが楽しみでしょうがありません。
〇…〇…〇
全巻読み終わると、世の中が違ったように見えました。
『真理を知るというのは、こんなにも違ったものなのだろうか。
人生の見方をこんなにも変えてしまうなんて。
なんだか背中を丸めて生きてきた自分が恥ずかしいや。
世界はこんなにも広かったのに。
もっと早く知りたかったな』
もう知らなかった頃には戻れません。
戻りたいとも思いません。
『とりあえず、明日からは背筋をピンと伸ばすことを意識しよう。
前を向いていなくっちゃ。
真理を知った者は、堂々としていなくっちゃぁね』