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また新キャラっすか。多いっすね(ユージンの物まね)

(わかりやすいあらすじ)人格の乖離をうやむやのうちに克服できているような気がするジェストは、ジュリアから「財宝のランタンを盗んだプレイヤーを探して欲しい。遊撃軍団を作ったからやって」と言われ出発した。しかしリアルで帝ヨーシに託された意味不明な情報と、新たに加わった六人の仲間、いろいろやったはいいがやってよかったのか不安なエイタローとの関係におよそ順風満帆とは言えない。果たして夕闇男爵とは、世界の謎とは、新藤はいったいどこに行ってしまったのか!?

「ジュリアに聞いてみたんだけど、君らがいいって言うなら構わないって。どうせブラックスミス、あんまり戦力としては期待されないからね」


 といって盛大に煙を吐くサクラさん。その男らしい座り方、あんまり隠すつもりもなさそうだ。


「砦が山の中にあるっていうから期待してたんだけどさあ。いいとこ鉄くらいしか採れないんだよね。地下はまた別なんだろうけど、入れないっぽいし。それなら砦の向こうにいった方がいい素材見つかりそうじゃん?」


 じゃん? と言われても。というかすでに出発当日の朝であり、僕らイイリコ小隊は全員揃って唖然としている。サクラさん側の構成がXXX小隊以上に酷い。ブラックスミス×2、ファーマシスト、シーフ、フェアリーメイジ、申し訳程度にサムライ。なんか余り物を寄せ集めたようなメンバーである。パーティの平均レベルは17。


 本気でこのメンツでやるつもりか。


「君たちにも損はさせないよ」


 僕らの心配を悟っているのか、サクラさんは眼鏡を押し上げてにやついている。


「一応自分の命は自分で守れる性分のヤツらだし、このメンデルくん、採取と調合に命かけてるからガンガン作るよ。足引っ張る気はないから、アタシらも装備強化面で協力は惜しまない。タダでいくらでもやるからいつでも言って」


 ギラリと眼鏡を光らせるファーマシストのメンデル。ブラックスミスとファーマシストは本質的に経済に関わる職業だ。だからそれらが無償でスキルを提供してくれるというのはかなりおいしい。


 だけど、今回の趣旨は薬草や鉱石の開拓じゃないんだぞ。


 という僕の心の声を何故か読み取ったのか、サクラさんは更に続けた。


「だいじょーぶ。気がついたら声はかけるけど、基本的に君らについていくから。休憩の時とかにそこら辺掘ったりむしったり、まあ採取のタイミングって思ったよりも多いんだよね。アタシらもちょっと無理していい素材手に入れたいんだ。頼むよ」


「……ええと、どうしましょう」


 頬を掻きながら、イイリコさんもどう答えればいいか思案している様子である。


「まあ……遊撃軍団に加入、ってことかな」


 マジか。


 まあ、死線をくぐりに行くわけでなし。対処できないほどの強敵が出たら僕らも当然オダブツだし、生産職に嫌われるとあんまりいいことないし、


「それじゃ、ええと……いちおう僕、遊撃軍団の軍団長なんで」


 昨日の夜ジュリアさんに返事をし、任命されたばかりの肩書きを名乗る。サクラさんに軍団メニューを開いてもらった。


「今、皆さんジュリア軍団なんで……はい、本軍、その下の遊撃軍団の所に加入ボタンがあるんで……」

「まだ六人?」

「イイリコ小隊だけです。できたばかりなんです」


 これから増える予定もあまりないけれど。


 サクラさん達からの加入申請に応えていく。


「行動時のステータスボーナスのためなんで、戻ったら本軍に戻ってください。その方が襲撃の時とかにボーナスがもらえるんで」

「覚えてたらやるよ」


 ううむ、僕が軍団長だということがデメリットになりうるって事はもっと説明しておいた方がいいかもしれない。


 出発した僕らは一路砦を目指した。オルトノグェイク砦は東域に含まれているから、そこから行動範囲を広げていこうという算段だ。男爵がランタンを使おうと砦に来るかも知れないし。






 CH攻略において注目すべき点が一つ、明らかになった。


 僕らはすでに東南域を支配している、という点。


 そして東南域支配に必要な拠点は三つ。サンダマスヴェリア城、マーシャヴェルナ港、そしてアーシュア村。


 意外と少ない。こんだけで経済がまわるのか心配になるレベルだけど、そこはゲームだしまあ、いいか。単純に地域数で倍してもジンジャーゼルの拠点は20程度で、だから一応の予想とはいえ、ゲームの進行度が大体わかる。


 一年で七分の一。七年という期間を考えれば順調ではある。あるけど、帝が言ってたことが気になる。


 1.僕らはこのままだと三年目にゲームオーバー

 2.最終日は来ないと思ってプレイをする


 不可解な二つの情報は、僕を少し焦らせるには十分だ。帝は「このままの進捗だと遅い」と言っているのだ。特に三年目には、今予想できる三年後の戦力よりも大幅に強化されていなければいけないことになる。


「できれば、一週間程度で探索が終わればいいんだけど」


 砦についた夜、食事の席で僕は言った。さりげなく、さりげなく。


「探索でしょう。そんな急がなくてもいいじゃない」


 姫代子の言葉はもっともだ。南東域と比べて推測すると、東域は縦に二日、横に三日程度の広さがある。山などの天然障害物を考慮するともっと長くなるかも知れないから、一週間で全域を探索するのは難しい。今までの経緯からすると、解放しないと拠点に寄ることもできなそうだし。


 それに今回の探索は人捜しだ。うろうろ移動するキャラクターを、例え2パーティといえど探すのは困難なはずだ。宝を奪って逃げたのなら、向こうから接触してくるのは考えづらい。それどころかこっちが見つかると知らないうちに逃げられる可能性もある。そうなったら発見は絶望的だ。


 本来なら男爵を探している間にも、人数不足をおしてでも拠点攻略に乗り出すべきなんじゃないかと思う。だけどそれを主張すると帝のことも話さないといけないし、何故僕が帝からそう言われているかも芋づるになってしまう。


「難しい顔してるよ」


 エイタローに言われて、僕は眉間を揉んだ。


「まあ、なんとなく思っただけですけど。これから敵も強くなるだろうし、僕らのレベルアップ速度も遅くなります。少なくとも転職できる拠点は数日で見つけたいですね」


 二次職への移行目安レベルは30。ただし制限があるわけではなくて、クエストをクリアすれば低レベルでも転職は可能になる。そのクエストの適正レベルが30というだけだ。


 CHで注目に値するべき点がガランスギュエック戦にあった。いや、これまでの全ての戦闘がそうだった。


 レベルはあくまで目安でしかない。HPなんかのステータスは重要だし、MPなんかは魔法やスキルの使用回数に直結するけれど、少なくともWWや今までのVRMMOに比べれば、その比重は格段に下がる。


 リアル判定と、アバターがイコール僕らの体、というのがミソだ。


 顕著に表れているのが命中や回避で、僕らは確率に頼らず敵の物理攻撃を避けることができる。実際、ガランスギュエック戦ではかなりの間、ダメージを食らわずに戦えた。


 おおざっぱに言えばアドリブがきくのだ。


 アバターのレスポンスはWWと比べるまでもないし、操作自体も自分の体を動かすのと大差ない。わかっていても発動したら運パラメータに頼るしかなかったこれまでと、どうにか体をねじることでかわすことができることの差は大きい。


 バランス自体が見直されているこのゲームにおいて、転職の目安がWW通りでなかったとしてもそう不思議じゃない。たとえ運営が据え置きにしていたとしても、僕らのプレイヤースキルによっては、今のレベルでも攻略可能かもしれないのだ。実際、夕闇男爵のレベルはわからないけれど、すでに二次職になっているようだし。


「夕闇男爵達がジュリア軍団を抜けたのは、少なくともマーシャヴェルナ後。その時点で一度全員を確認しているし、ガランスギュエックの時にはもういなかった」


 ノリアキングがダークミスト・ランタンを盗まれたのは第四次防衛戦から四日後。砦攻略に参加していたなら、転職施設を探し、クエストをクリアし、しかもそこから城まで歩く時間があるとは思えない。


 それに問題はまだある。


「ジュリアさんはもう検討していましたが――少なくともノリアキングの派閥に、男爵の息がかかったプレイヤーがいます」


 そうでないと、あんな速さで「ランタン」を盗むことができない。その情報を流したプレイヤーが必ずいる。


「そして、ランタンをドロップしたことを知っているプレイヤーはあまり多くありません」


 手に入れたジュリアさんとその小隊員、預かったノリアキングとその小隊員。ジュリアさんが手に入れた際に近くにいたプレイヤー。ジュリアさんとノリアキングで公表のタイミングを計っていたらしいけど、それが功を奏したというかそんな感じだ。


「おかしくないっすか、それ」

「うん、おかしい」

「なにが、え、なにが?」


 ガートランドはもうちょっと頭を使ってくれ。


「男爵は、ドロップ公表後に盗んだ方がよかった。公表後なら内通者がいるなんて考えに及ばないほどのプレイヤーが知るし、逆に今情報が漏れたんなら、それこそ『知ってるヤツの中にホシがいる』だろ?」

「ああ……なるほど、男爵って結構バカなんだな」


 違う、それは違う。


 WWでの男爵の実績から考えて、こんなヘマをやらかすようなヤツじゃない。


「挑発してるんだ」


 砦は人が少ないだけあって静かだ。


「たぶん、自信があるのか、もっと別の考えかはわからないけど……でも、これは間違いない。わざと隙を見せたに違いない。男爵は人をからかうのが趣味だから」

「でもそれは逆に、見つからない絶対の自信があるってことかも」


 エイタローの言葉ももっともだった。


「とにかく、男爵のことは……僕らの中でのウェイトは、拠点発見を上回らないようにしてください。ジュリアさん達が男爵を求める理由はわかりませんが、男爵を見つけてさらに説得なんて難度が高すぎる上にレベル云々で解決するものでもない。それより、新たな拠点の発見。これが僕には大事だと思うんです」

「それが遊撃軍団の方針でいいの?」


 これまで黙ってた姫代子がやっと口を開いた。


「……軍団の、方針」

「あんた、一応軍団長なんだからさ」


 姫代子の目が、


 なにか、僕を責めているような気がして。


「そうだよ」


 だから逆に、僕はそれをにらみ返すつもりで答えた。


「遊撃軍団も攻略を最優先にするのは変わらない。ランタンがどれだけ重要なアイテムかはわからないし、男爵も味方に引き込めば力強いと思う。だけど全員が転職できる環境の発見以上に価値があるかと考えると、そうじゃない」


 心を見透かすような姫代子の視線。


「……まあ、逆らうつもりはないけどさ。あんまり本隊の移行を無視すると、危うい立場が更に悪くなるから注意しなさいよ」

「姫代子ちゃん、ジェストくんもわかってるから、ね」


 イイリコさんの助け船にはありがたく乗っておこう。


「とりあえずまず……そっちの、サクラさん」


 手に入れた物資の品定めをやってる六人に、僕は声をかける。


「その、一応同じ軍団なんですし、ちょっと参加してほしいかなって思うんですけど」

「んー?」


 サクラさんは髪をまとめ上げてバンダナを巻いている。スタイルはイイリコさんみたいなのにガテンぽさが増しているように見えるのはどういうわけだろう。


「あたしら、そっちの方はぜんぜんだよ」


 しかしそうもいかない。


 なにせサクラさん以外のプレイヤーの特徴すら知らん。数日前に合流してからとにかく、この連中は石だ草だとあちらこちらを歩き回ってとても自己紹介なんかする時間はなかった。名前は一応、軍団登録する時に控えたけど、もはや誰が誰だかも忘れている。メンデルだけはよく眼鏡を光らせてるから覚えてる。


「個人主義だからねえ。MMOで生産職やりたがるのって」


 それを尋ねたらこれが答えだよ。初日の昼の事。


 その職人達は顔も上げずに、銅や薬草なんかを穴の空くほど見つめている。ちょっと怖い。


「こいつら、生産職でもちょっと特殊だけど」


 初日の続きという風に、サクラさんは言った。


「このゲーム、ソロはなんもいいことないでしょ。しかも城から離れるほど敵が強くなっていくってのはMMO的じゃないし、パーティ組むのがこれでもかって推奨されてて、だいたいはオトメノ、あ、会ったことある? 彼みたいにどこかに所属するのが一般的なんだよね。500人しかいないしプレイヤースキルでどうにかなることが多いから、戦闘力がちょっと落ちてもハブられにくい環境なわけよ。実際、知ってる連中は大体小隊所属だし」


 だけど、もともと戦闘職は戦闘職でパーティを組んでいた経験から、生産職に積極的に声をかけることは希だ。だから基本的にブラックスミスやファーマシストが自分から動く必要があるのだけど……


「それをせずにいたのがここの連中。余り物で小隊組んだってこと」


 はぐれモノという意味では、僕の仲間だと言える。ちょっと趣向は違うけど。


「ただまあ、小隊に所属するとそっちの事情が優先されるからね。野良で一筋だった分、スキルと度胸はあると思うよ」


 確かにモンスターに殴られそうになっても果敢に立ち向かってくれる点は嬉しい。「邪魔するな!」とか「素材よこせ!」とかCHでは聞き慣れないセリフが多いのは気になるけれど。


 サンダマスヴェリアでもソロで森の中に入っていくという剛の者だったらしいから、デスにも慣れている。外でのキャンプも問題ない。見知らぬ土地への遠出をむしろ喜んでいるから、戦闘力を除けば開拓には向いているメンツだ。


 しかしアバターまでオタクっぽく作る必要は無いんじゃないの。


「一応、その、自己紹介とか」

「嫌いなんだよねそういうの。でもそれぐらいやんないといかんね。軍団所属だし。マエさん、起立」


 サムライが立ち上がった。そういや戦闘職なのに以上に最終に熱意を燃やす彼はなんだ。ついつい勘違いしそうになるけど、サクラさんのパーティの半分は戦闘職だ。


 がちゃ、と鎧を鳴らして、マエさんが立ち上がる。


「サ、サムライの前田利家です。よろしく」

「……ん? マエダトシヤ?」

「トシヤ」


 中途半端な。


 そのまま座ってしまった。食卓に流れる微妙な空気をなんとかしてほしい。


「ボイスチャット苦手なんさ、彼。メッセージだとよく話してくれるよ」


 胸が痛いのはなんでだろう。自分を見ているみたいだ。そこ、エイタロー、笑うな。

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