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キャッスルガード・ヒーローズ  作者: 栗原寛樹
第二部 クエスト「洞穴の魔物を退治せよ」
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復帰後第一回作戦会議「一週間の予定」

「ええと……『洞窟の魔物を退治せよ』だけど、今の私たちは推奨レベルに届いていません。正確にはユーくんとガートランドくんを除いたメンバーね」


 村の外れで、僕らイイリコ小隊はいったん集合する。ノリアキングから得た情報を共有するために。


 予定されている解放戦はここから北の砦。守るモンスターはマーシャヴェルナよりも強い。山の深いところにあるから戦い方も前と同じではいけないし、判明しているだけでやっかいなモンスター、キラーマンがいる。


 WWでの設定はなんだったか。確か人類を裏切って魔物に荷担したアサシンギルドの下っ端という立ち位置だったはずだ。要するに殺し屋で、いくつかの上位モンスターがいる。共通する戦術が無音。


 無音とは耳が聞こえなくなるステータス異常だ。具体的にはSEや音声チャットなど、聴覚に関係するものが全てオフになる。自分が発する音も聞こえなくなるけど、声自体は発せられるからジェスチャーマクロは制限されない。


 音が聞こえない、というのは一人称視点のこのゲームではかなり辛い。最前線の盾役は後ろがどうなっているのかがわからなくなるし、後衛も背後からモンスターが迫ってきたもわからない。僕らが意識している以上に、音声での情報は多い。


 だから殺し屋系統のモンスターと戦う際は無音対策が必要になる。最低でも前衛は必須。有利に戦闘を進めたいなら全員が装備していてまず間違いない。このライトメイジなどの使うステータス回復魔法は一つ一つ修得する必要がある。キャラクター成長の悩ましいところで、有限のスキルポイントを割り当てるには、ステータス異常は膨大だ。MPも食うし、可能であればアイテムで守ることに越したことはない。


 問題はアイテムでも100%防げるものはかなりのレアになることだ。


「早急の案件として、北の砦攻略に参加します。それを耐え抜くくらいのレベルまであげること。キラーマンがいるなら推奨レベルは最低19。そんなに高くないわ」


 イイリコさんのデータは間違っていない。だけど僕らは、まだCHの戦闘を熟知しているとは言えない。万全を期すなら22くらいはほしい。キラーマンより強いモンスターがどれだけいるかもよくわかってないんだ。


『俺たちはもうちょっと探りを入れてみる。往復で一週間くらいかかるから、行って、戻ってきたら決行だ』


 ノリアキングはもうすぐ出立するだろう。


「今の私たちならフォレストベアが効率がいいと思う。ポイズンビー対策は、ジェストくん」


 頷く。今まで補助に徹してきたけど、これからは遠距離火力が必要になってくる。初期職の今は、攻撃魔法が修得できるのは僕だけだ。


 だから暗黒の知識をレベル3に上げて、ブラインド、スポイルに続く三つ目の魔法を修得した。消費MPもそれなりに多いのでMP管理の重要性が増す。


「あと出発前にちょっと時間を取るから、みんなスキル構成を見直して。攻略組の意見では、砦を攻略するあたりから一段階難度があがります」

「それって、ランクが2になるってこと?」

「そう思って」


 ガートランドの言葉はWWにおけるクエスト難度のことだ。WWではクエスト難度によってランク1から10まであり、それぞれ大まかに推奨レベルが設定されている。一言で言うと、推奨レベルが10上がる毎にランクが一つあがる。細かいことを説明するときりが無く、またCHにはクエストランクという概念がないので一応話を戻す。


 18あたりからレベルの上がりが遅くなることと、功績値が利用できることも説明したイイリコさんは、姫代子に話を振った。


「使うべきだと思う?」

「あたし達はレベルが低いから、使った方がいいと思う。だけど今使うのは勿体ないから、クエストをクリアしてからでもいいんじゃないかしら。クエストに必要な時間は?」

「ダンジョンのマップももらってるから、朝に出ればお昼に間に合うわ。モンスターも全部わかってる……あんまり、私好みじゃないけどね」


 イイリコさんが渋い顔をするのはわかっていたけど、情報をもらおうと提案したのは僕だ。正直なところ焦りがある。


 まだゲーム全体の規模がわかってないけど、開始三ヶ月目で落とした拠点は二つ。帝の『このままだと全滅』という言葉。


 攻略組はほとんどクリアしたこのクエストを楽しんでいる時間は無い。


 僕だってできれば攻略情報は見ないにこしたことはない。というよりもWWだと情報を提供する側だったから探索する楽しみは誰よりも知っているつもりだ。だから、そういったことを楽しむならまずは攻略組でもトップに出るのが最善だと思う。


「一週間でレベルを上げられるだけ上げたいから、推奨12のクエストに時間をかけるわけにもいかない。私たちが12まで上げたら、さっさと攻略しちゃいましょう。きっと装備も新調するんでしょ?」

「クエスト前に?」


 エイタローが首を傾げたが、姫代子の言葉は「クエスト攻略後に新調する」という意味だ。どうして彼女がそう思ったか、それは本人から説明してもらえばいいと思う。たぶん正解している。


「クエスト後に。全職で無音耐性が得られる装備って確かなかったはずだから、クエスト中か報酬か、とにかくゲットできるアイテムって素材でしょ、きっと」


 というわけだ。サムライのエイタローはナイトとともに装備可能アイテムには恵まれているから意識しなかったかもしれないが、ステータス異常を防ぐためのアクセサリーは装備可能職が制限されていることが多い。それにもかかわらず「攻略組はほとんどクリアしている」からには、このクエストで得られる無音対策は全職種共通のものである、ということになる。それはすなわち、装備素材だ。


 素材は組み合わせてブラックスミスに渡せば、それに応じて装備を作ってくれる。もちろん代価はかかるけど、NPCの武器防具屋では不可能なブラックスミスの特権だ。


 だから僕らはクエストをクリアし無音耐性の素材を入手し、それを組み込んだ装備に新調する、という手順を踏むことになる。これらはノリアキングから聞いた話だが、まだイイリコさんは説明してない。だから姫代子の推測。でもあってる。


「姫代子ちゃんの言ったとおり。私たちのフレンドにブラックスミスのひとがいるけど、六人分はちょっと多いからね。この村にいる人たちはもう他の人の依頼を受けているから、いったんお城に戻ることになります。完成待ちもあわせて一日潰れちゃうから、素材はできれば明日中に手に入れたいの」

「今日はもう夕方っすから今日は適正レベルには間に合わないっすね」

「夜の戦闘はできれば避けたいし、今からと明日の朝を熊狩りに。午後で攻略、できればそのままお城に戻って依頼。三日目の夜にはこっちに戻ってきて、四日間をレベル上げにあてようと思います。それでたぶん、ぎりぎり砦攻めには間に合うから」

「本当にぎりぎりだな。夜間戦闘、一応視野に入れた方がいいんじゃないか」


 ガートランドの意見ももっともだ。だけど、


「するにしても初期装備じゃ心配だから、どうしても間に合いそうにないときだけにした方がよさそう」


 夜間戦闘はいろいろデメリットがある。この辺は実際に戦闘になるようなことがあったら改めて確認する必要がある。


「なにか質問はあるかしら。ないならスキル構成と回復薬を準備しましょう。ユーくんとガートランドくん、二人はレベルが高いからアイテムをお願いできる?」

「うす」

「休憩も入れて三十分後に出発。装備分のお金も集めなきゃいけないからハッスルしましょ」






 この小隊におけるネクロマンサーの役割は複雑だ。ネクロマンサーの特性としてモンスターを使役することができるのは十分以上にわかっているけど、前提条件として目当てのモンスターを倒す必要がある。そのため戦闘開始直後は『躁屍』は役に立たない。


 イイリコ小隊の特徴は属性遠隔攻撃の手段があまりないことだ。上位職のWWではガートランドやイイリコさんが魔法を修得していたけど、基本的には僕を盾にして物理で殴るのが戦法だ。姫代子やエイタローのプレイスタイルに引っ張られた形である。


 その盾がいなくなったわけで、小隊としてのプレイスタイルも変わらざるを得ない、のはみんなわかっている。現にWWで中衛だったガートランドが最前線に立っている。


 問題点として、ランサーは盾役に向かない。フォレストベアあたりはガートランドのレベルが高いからなんとかなるとして、遠くないうちに追いつかなくなる。エイタローの盾宣言は嬉しかったけど、サムライが盾をするときに求められるのはナイトより良質の防具だ。今の時点ではガートランドへの攻撃を分散するサブが精一杯である。


 となると、現状のイイリコ小隊はかなりもろい。真正面からモンスターと戦うには全体的に紙防御だ。となると大事なのは、いかにダメージを受けない戦略を取るか、にある。


 ブラインドはそれを解消する優秀な魔法だけど、いかんせんモンスター側の対策が未熟な今のうちという感がぬぐえない。ウルフキングにやられたように、相手への攻撃のおまけで回復されてしまうような、もともとステータス異常としては貧弱な部類だ。さっき話題に上がったように「一段階難度が上がる」と、無効化してくるモンスターも目立ってくる。


 となると、他のステータス異常魔法をとるか攻撃魔法をとるか、だ。


 それを選択するための一つの指標として、CHから取り入れられたリアル判定がある。ノリアキングが注意したように、ポイズンビーがなかなかやっかいな敵になっている。もともと小さな虫で回避が高かったが、リアル判定になって攻撃をあてるのが異常に難しくなった。個々に狙うより、ベアを殴っているときにラッキーで巻き込まれるのを期待した方がよっぽど効率がいい。ただし名前の通り毒攻撃をしてくるので、放っておいていいモンスターでもない。


 この「小さい敵への対策」を考えると、攻撃魔法が必要なのだ。


 攻撃魔法はターゲッティングした相手を自動追尾するから、狙うのが非常に楽だ。魔回(魔法回避)のステータスによって避けられることはあるけど、野生動物で魔回が高いのはあまりいない。となると小さな敵に対しては、魔法が有力な攻撃手段になる。


 だから僕は、攻撃魔法を取得する。これは小さな敵だけでなく、相手が近づいてくる前にダメージを与えられるという点でも現イイリコ小隊には必要だ。


「よし」


 僕はアシッドアローを取得している。念のためジェスチャーマクロを確認して一息つく。一応、レベル上げの準備はできた。

 ちょっと離れたところで、イイリコさんと姫代子があれこれ言いながらスキルを取得している。WWでは、姫代子は僕の盾を念頭にスキルを取っていたから、そのあたりの変更をイイリコさんに相談しているのだと思う。


 そしてエイタローは……あれ。

 

 僕の方に歩いてきて、


「あの……ちょっと相談していいかな」

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