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八章
「…よい休暇を」
それは上辺だけの言葉で、背中にはまだ痛いほどの視線が突き刺さる。
「…………何だかなぁ……」
すごく理不尽だ。
上司命令で従うしかなかったし、こうでもしないと逃げ出すのだから仕方ない。
「時任ここに何の用あるの?」
「あー…まぁここで人と逢う約束してんだけど……あいつら、特に雛依乃の奴が時間にルーズだし…」
「"雛依乃"?」
人の名前だろうか。
「松迅 雛依乃<マツバヤ ヒイノ>と英那<ヒイナ>ーー君と同じくらいの歳の双子だよ。同じくOPに所属してる。姉の雛依乃の方が落ち着きなくて、いっつも待ち合わせに遅れるんだよ」
「へー」
「多分着くのは明日になりそうだな」
「……へ?」
「一晩、泊まるから」
「………………!!」
最早、嫌な予感しかしない。
千里は口元を引きつらせ、大きく拳を時任の背中へと振りかぶった。
「……っけんなばかー!!」