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七章
千里は再び舌打ちしてから、
「やだなぁ、冗談だってば。ジョークジョーク、本気にしないでよー」
「……今確実に本気だったろ」
時任はげんなりとため息をついた。この調子でOP本部まで行くのかと思うと、精神的に疲れる。先が思いやられた。
それに何なんだろうか。
この千里という少年には違和感がありすぎる。
まず一人で旅をしていることからしておかしい。盗賊や、さっきみたいに貴族の手下に襲われることだって少なくはないはずだ。
見たところ、それなりの技量は持っているようだが精神的にも辛いはず。いつ敵が来るか分からない状態なんて自分ならもう投げ出したくなる。そのリスクを背負ってまで旅を続ける目的は何なのだろうか。
「時任?」
「あ…っ、いや、何?」
「何って……もう街着いてるんだけど。門番困ってるから早く」
「え、嘘だろぉ!?」
しかも門番は千里を担いでいる時任をあからさまに疑いの目で見ている。視線が痛い。
道中考え事するのは止めようとぼやきながら、時任は門番の差し出す書類を書き込んだ。