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三章
上手く撒けたはいいが、実はすでに先着がいたのである。
「んーお嬢ちゃん、もしかしてあの三下から逃げてるわけ?」
「……。………………は?」
「違うの?」
「いや……その…違うくは、ないけど……」
そして千里の第二のコンプレックス。それは、どうしても女に見られやすいということだ。
だからこの時も、千里はにっこりと微笑み声色を低くした。
「誰がお嬢ちゃんだ潰すぞ」
まぁ云ってから遠慮なく蹴りをかまして、青年を木から突き落としたのは云うまでもないだろう。
「ふぎゃ!」
同情はしない。
「さて、と…。撒いたし次はどこ行くかな」
「ーー俺とOP本部に行こうか」
「っ!?」
一瞬だった。
隙なんか見せていなかったはずなのに、突き落としたはずなのに、気配を感知出来るはずなのに。それなのに、千里は青年に後ろを取られてしまった。
首に腕を回され、もう片方で右手を掴まれる。
不覚、だった。