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孤独を超えて  作者: 虚灯
序章
1/3

プロローグ

真っ白な空間に、声だけが響く。


――貴方は、一人なのですか?


――貴方を想う人は、いないのですか?


二つの問。それに応えた二つの魂があった。一つは蒼、一つは紅。

つかの間の沈黙。その後、淡く光が広がる。


――おいで・・・。


その優しい呼び声に誘われるように、魂は引き寄せられ・・・そして、この世から消えた。



「ん・・・」


真っ白な空間。さっきと同じ場所だろう。しかし、先程までとは違い、そこには二人の少女がいた。

眠りから目を覚まし、辺りを見回す。


「ここは・・・?」

「・・・ここは、世界の狭間」


不意に響く、少女たちのものではない声。

二人が驚いて振り返ると、そこには、また一人の少女がいた。

長く白い髪に、純白の目。まだ幼い少女だが、不思議な威厳と、存在感があった。


「・・・あなたが、さっきの声を?」

「どうして僕たちを呼んだ?」


ほぼ同時に問う二人の少女。白の少女は、それに答える。


「私が、貴方達を呼びました。・・・とても哀しそうで、傷ついた魂だったから。

 ねえ、この世界は嫌いですか?」


再びの問に、迷いなく頷く二人。白の少女は、一瞬悲しげに顔を歪めたが、懐から光の珠をを取り出した。


「貴方達を、別の世界に送ります。これを・・・」


光はフワフワと漂い、少女たちの胸に吸い込まれていった。

その時二人は、胸にあたたかい何かが満ちるのを感じた。

頬がスースーするのを感じて手をやると、なんと濡れている。


それを見て、また白の少女は悲しげに顔を歪めたが、すぐにかすかなほほえみを浮かべる。


「“願いを現実に変える力”。これを使って、生きてください。

 今の自分が苦痛だというのなら、姿を変えられます。どうしますか?」


白の少女が尋ねると、また一寸の迷いもなく二人は頷いた。

一人は父とのつながりを嫌って。一人は蔑まれた容姿を嫌って。

淡く光が満ち、次の瞬間二人は別人へと変貌した。


「・・・私に出来ることはこれで最後です。どうか、幸せに・・・」


白の少女の祈りにも近い願いを最後に、二人は姿を消した。

・・・次の瞬間、崩れ落ちる白の少女。


「私の光で涙するほど、あんなに愛を受け慣れていない、

 ・・・あんなに不幸で傷ついた子達を生み出してしまうなんて・・・」


白い空間に、白の少女の嗚咽が響いた。

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