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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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ずっと一緒に

作者: 春
掲載日:2026/03/08

親友の由香と連絡が取れない。

こんなことは、今まで一度もなかった。

幼い頃からずっと一緒で、

くだらない話でも毎日のようにメッセージを送り合っていた。

忙しい日でも、

「おはよう」か「おやすみ」くらいは必ず来る。

それが昨日から、何もない。

既読もつかない。

少し迷ってから、私は一人の名前を思い浮かべた。



ー直人ー



由香の彼氏だ。

付き合って半年位になるだろうか。

由香の紹介で、私は直人と何回か会っている。

真面目で落ち着いた人で、由香のことを大事にしているように見えた。

私はスマホを手に取り、電話をかけた。

数回のコールのあと、直人が出る。

「もしもし?」

私は言った。

「ごめん、朝早くに」

「由香と連絡取れてる?」

一瞬だけ沈黙があった。

「え?」

直人が戸惑う。

「昨日、一緒にいたけど…」

私は息をのむ。

「え?」

「帰ったんじゃないの?」

電話の向こうで小さく息をのむ音がした。

「いや」

「駅まで送ったあと、普通に別れたけど」

そして直人は、少し不思議そうな声で言った。

「……まだ帰ってないの?」

胸の奥がざわつく。

私はゆっくり言った。

「直人」

「由香、昨日から連絡取れないの」



それから数日、私たちは由香を探した。

由香の研究室。

ジム。

駅前の本屋。

お気に入りの場所。

でも見つからない。

「あと思い浮かびそうなところは、、」

ポンポンと浮かぶ色々な場所。

どこも由香との思い出がいっぱい詰まっている。

そんな私を見て、直人は何度か言った。

「美咲ってさ」

「由香のこと、本当に好きだよな」

私は笑った。

「一番の、親友だからね」

直人は少しだけ苦い顔をした。



しばらくして、

由香の家族に許可をもらい、

由香の部屋を捜索した。

「何か手がかりがあるといいけど」

するとベッドの隙間から、小さな日記を見つけた。

ページをめくる。

『直人が最近怒りっぽい』

さらに読む。

『“お前は俺よりあいつが大事なんだろ”って言われた』

私は本を閉じた。

もし警察がこれを読んだら。

疑われるのは誰だろう。

恋人とケンカしていた直人か。

それとも。

背筋が少し冷えた。



その夜。

直人からメッセージが来た。

「話せないか」

場所は、直人の部屋だった。

ドアをノックすると、すぐに開いた。

奥へ通される。

一人暮らしとは聞いていたが、来たのは初めてだ。

整頓されていて、かなり綺麗な部屋。

ーーほのかに香るタバコの匂いだけ気になるが。

直人は振り返り、私を見た。

先日一緒に由香を探していた時とは打って変わって、

私に対して嫌悪を抱いている表情を浮かべた。

「調べた」

低い声だった。

「由香の事、何かわかった?」

「そうじゃない」

「由香の元カレ」

「大学のときのやつ」

「その次」

「その次も」

直人は吐き捨てた。

「全部お前が絡んでる」

私は少し考えた。

それから言った。

「それで?」

直人の声が荒くなる。

「お前、由香の彼氏ができるといつも邪魔してただろ」

私は静かに答えた。

「守ってただけ」

直人の顔が真っ赤になる。

「ふざけるな!」

その瞬間。

激昂した直人にグッと胸ぐらを掴まれた。

「由香は人を信じすぎる!」

直人の怒りで顔が歪む。

「だからお前みたいなのに――」

私はテーブルの灰皿を手に取った。

直人の目がそれを見る。

「……おい」

私は何も言わない。

直人が反応するより早く、

私は腕を振り下ろした。

鈍い音。

直人の体がよろめく。

「お前…!」

腕を掴まれる。

でも力は弱くなっていく。

もう一度振り上げる。

二度目の音。

苦しかった直人の手がようやく離れた。

ずるずると膝が床に落ちる。

それから。

動かなくなった。



私はしばらく立っていた。

時計の秒針の音だけが響く。

カチ。

カチ。

カチ。

さっきまで怒鳴り声が響いていた部屋が、

嘘みたいに静かだった。


そのとき。

テーブルの上でスマートフォンの液晶が光っていた。

直人のスマホだった。

画面には、送信されていないメッセージが開いていた。

宛先は、由香。

私はそれを開いた。

そこには途中まで打たれた文章が残っていた。

『由香』

『もしこのメッセージを送る前に俺に何かあったら』

『美咲を疑え』

私は少し笑った。

それから、動かない直人を見下ろした。

「遅いよ」

静かな部屋で、私は小さくつぶやいた。

「もう全部終わってる」

スマホを閉じる。

部屋はまた静かになった。

時計の秒針だけが進んでいる。

カチ。

カチ。

カチ。

由香は、まだ見つかっていない。

そして私は、

その場所を誰にも教えるつもりはない。

2026.3.7作成


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